「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第163回のテーマは「人の労力を当然だと思わないほうがいい」です。

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息子が小学生になって、現在は夏休み中です。コロナ禍が収まる気配がないので、家族で自宅で過ごす時間が多いです。

週末、パートナーはだいたい昼食時にお酒を飲みます。飲まないときもあるのですが、飲んでも飲まなくても、必ず昼寝をします。私はお酒を飲まないのもあり、具合が悪いとかではない限り昼寝はあまりしません。そして最近、子どもがいるときにパートナーが昼寝をしていてもそこまで腹が立たなくなっていることに気が付きました。

第160回「主義の違いを尊重しあうことも大事」では、現在進行系で「朝子どもが起きたら、一緒に起きるかどうか」で揉めていますが……。それでも、息子が家の中で一人で過ごせるようになってきた今は、パートナーの昼寝に関してはだいぶ気にならなくなってきました。

子どもが乳幼児の頃は、パートナーがお酒を飲んで昼寝をするのがものすごく納得いきませんでした。子どもと一緒に寝るならまだしも、うちの息子はなかなか昼寝をしないタイプ。酔っ払ったパートナーが子どもの寝かしつけをするはずもなく、気が付いたらすでに寝ている。そして私はリビングに子どもと2人きりで残されている……。何に腹が立つかといえば、「1人で昼寝=子どもの世話丸投げ」なんですよね。

しかし、最初にこれについて不満を訴えたとき、「なんなの? 俺は酒飲んで昼寝する権利もないの? 」と言われました。

「……まあ、ないんじゃないですかね? 」と思いました。少なくとも、「当然の権利」ではないと思いました。そして、目が離せない乳幼児が家にいる限り、保護者が2人いたとして、そのうちの片方がもう片方に許諾も相談もなしに責任を放棄することを、当然の権利として主張できるような関係は、我が家にはない。という話をしました。

「さるころは酒も飲まないし、昼寝もしないじゃん」と言われたのですが、そこが不公平なんじゃなくて、「寝る」というのは「家にいない」のとほぼ同じなんですよね。

我が家には、出産後に決めた「ワンオペ2000円」というルールがあります。「家計はワリカン」にも関わらず、乳幼児がいても平然と家を空けようとするパートナーに、「私にばかり負担がかかるのはおかしい」と訴えました。その結果、「家を空ける日は1日2000円をもらう」ことになったのです。

金額にはいろいろな事情がありますが、ざっくり言うと食費です。我が家はパートナーが炊事担当で、食費も担当しています。そして公共料金の支払いは私。パートナーがいなくて私が食事を用意するのは、手間だけじゃなくて金銭的にもマイナスなので、どう考えてもおかしい。という話をして、「ワンオペ2000円」というルールになりました。

それ以来、家を空けるときにはお互いに子育ての負担が偏らないように調整をして、確認をして……と気を使い合ってきました。今も休日に2~3時間でも仕事や用事で出かけるときは、必ず「家を空けて大丈夫か」と確認し合います。なのになんで、寝るのはカウントしないんでしょうね? 寝たらいないのと同じなのに。

もちろん、体調不良で寝るのは全然別です。体調不良はいつどちらがなってもおかしくないので問題にはなりません。私がお酒を飲まなくても、昼寝をしなくても、いきなり幼児と2人っきりにしないでくれと話し合い、「昼寝をするなら許諾を得る」「感謝の言葉を必ず言う」という約束をしました。

これが、「妻も夫も休日にお酒を飲んで昼寝したい」ご家庭だと、もっと不公平感が強いですよね。ママ友に「昼寝1回1000円」のご家庭がありました。休日に、乳幼児がいるにもかかわらず飲酒して昼寝する場合、どちらもその権利がほしいなら相手が譲ってくれた行為に対しては、1000円くらい払ってもいいんじゃないかなと思います。もちろん「土曜日は父・日曜日は母」とか交代制でもいいですよね。

どういう場合にせよ、「母親が必ず自己を犠牲にして子どもの面倒を見る」というのが前提になっているのは不健康だと思います。もちろん、「夫(妻)が酒を飲んで寝ても構わない」という人もいると思います。しかし我が家に関しては、たびたび不公平感が出ないように話し合いをしているのにも関わらず、落とし穴みたいに「子どもの世話よりも、自分がやりたいこと優先」という態度が出てくるのが納得できず……その度に話し合いを設けることになります。

でも、我が家でもだんだんと昼寝が問題にならなくなってきたように、子育ては期間限定なんですよね。大変なのは、(子ども一人当たり)ほんの5年くらいで過ぎてしまう。でもそれを「たかだか5年じゃん」と片方に労力を押し付けた場合、禍根は5年じゃ拭えないほど残るのではないでしょうか。

私は「子どもが小さいうち」の数年は、夫婦で一緒に目の離せない大変さを分け合ったほうが、その先何十年と続く夫婦の生活に、盤石の信頼を築いてくれるんじゃないかと思うのです。

密に子育てをする時間よりも、夫婦はもっと長い時間を過ごす相手です。たかが昼寝、と侮らず、もちろん昼寝だけじゃなく、常にお互いの労力に対してきちんと確認し合っていきたいです。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。