「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第162回のテーマは「子どもにとっての『帰るべき家』とは」です。

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持ち家か賃貸かというのは、わりと家庭によって分かれるところですよね。

我が家は完全に賃貸派です。ふたりとも自営業なので長期的なローンを組みにくいというのもありますが、本当にほしければ色々と方法はあります。でも、再婚するときに「基本的に家は買わない」という話をしました。

一番の理由は、各々の離婚体験です。とくに、パートナーは初婚でマンションを購入していたため、離婚時に色々と大変でした。パートナーは元々家を買うことに懐疑的な考えを持っていたのですが、元妻が持ち家派だったので購入したそうです。そして、離婚……。条件面で色々あり、細かい話は避けますが「共同で家を買う」ということはもうしたくないと思うには十分だったようです。

私は初婚で失敗するまで、「結婚したら家を買う」ものだとなんとなく思っていました。親が持ち家派だったので、「そういうもの」だと思っていたからです。でも、やはり私も離婚して「先のことなどわからない」という気持ちになりました。そして、結婚についても「親がそうしていたから、そうするものだと思っていた」ことがたくさんあることに気が付きました。

なので離婚後、「本当に私がしたい生活」を考え直しました。その時に「本当に自分は家がほしいのか」ということを考えたら「別にあまり興味がない」ということに気が付きました。「どこに住みたい」とかそういうイメージはしっかりあるのですが、買うとなると色々また条件が変わってきます。自分の条件に合わせると賃貸のほうが向いていたんですよね。

「こんな家がほしい」というビジョンもないのに、なぜ買おうとしていたのか……? 買う理由が「親の方針」「常識的なイメージ」など、自分の外側にあることに気が付いたときに、家を買おうというモチベーションはなくなってしまいました。

我々の結婚生活の根本には、「共有財産を持たない」というものがあります。これはお互いの離婚体験から、「共有財産があることで、絆が深まるどころか我慢をしてしまい信頼関係を損ねる」という懸念があったからです。

「一緒にローンを組んでしまったから」という理由で離れられないという、“枷”をお互いに感じてしまうのは、我々にとってはデメリットでした。なので、この先も一緒に家を買うことはないと思います。賃貸暮らしは、基本的には自分たちのライフスタイルに合わせて住み替えられる気軽さが魅力です。子どもの成長に合わせて家のサイズや住む場所を変えられるほうが、我々に合っていると思っています。

しかし一つ気になるのは、「子どもにとっての家」というところです。私もパートナーも、どちらも実家があり、子どものころから育った家に両親がまだ住んでいます。家を買わないということは、そのような実家が息子にはないということなんですよね。

私自身はあまり実家や親に対しては執着心がなく、姉弟の中でも実家に帰らないほうです。それでも実家という存在が、心強い場所であったのはたしかです。これに関しては自分は恵まれていたなと思っています。実家は電車で1時間の距離なので、たまに帰っても日帰りだし、自分になにかあっても基本的には「実家に帰りたい」とは思っていません。しかしそれでも、「ホーム」という意識はあります。

大人になっても、物理的に帰る場所がないのって心細いかな? と、ちょっと心配したりしてしまうのですが……。私の友人にも、親が賃貸派でずっと住み替えをしているので、「親の家」はあっても「自分が生まれ育った家」ではない人はたくさんいます。すでに親が亡くなり実家を処分した人もいます。私の親は一戸建ての実家にこだわっているので私はその影響を受けてしまっていましたが、本当は「実家のあるなし」は、一つの条件でしかないのだと思います。

そして周りには、古くなった家をどう処理していいかわからないという問題を抱える人もいます。実家(親の持ち家)があることはメリットもあればデメリットもあるんですよね……。

我が家としては、息子が今住んでいる地域の学校に通っている間は引っ越す予定はないのですが、息子が地元以外の学校に通い始めたり、独り立ちしたら別の街で暮らすのも選択肢に入ります。そして息子が独り立ちしたら、夫婦2人暮らしの家に引っ越しするのだと思います。

息子が大人になったとき、物理的なホームがなくても、心理的なホームになってあげられる親になりたいと思っています。親の希望としては、後ろを振り返らずどんどん自分の居場所を開拓できるようになってくれたらいいなと思っているし、私自身は息子が帰ってくることだけを楽しみにする老後もイヤなので、常に親も子も変化して、その時々で最も快適なところで暮らしていきたいなあと思ってます。

それに持ち家があるからといって、そこが終の棲家になるとは限らないんですよね。私の祖母も介護ホームで亡くなりました。そして30~40年後、世の中も自分もどうなっているのかわからない。でもそれを不安に考えるよりは、常に「その時々の最適」を考えて前向きに生きたいです。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。