「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第12回のテーマは「夫婦はどこまで心を縛れるのか」です。

  • 浮気よりも嘘のほうが罪

さて、前回の「事実婚で浮気は心配じゃないの? 」からの続きです。

我が家はバツイチ同士。パートナーはどうだかわかりませんが、私は最初の結婚について「挫折」を感じています。結婚は一生添い遂げるものだと思っていたので「できなかった」という気持ちがあります。

再婚については、「もう1回チャレンジ」というよりは「一生一緒にいるのは目的ではなく、日々の積み重ねの末にそうなったらラッキー」くらいに考えを改めてやっています。

再婚するにあたり、私にとって結婚が「永遠のロマンス」だというのはないな~というか、無理かな~というのを、離婚経験から実感しています。かといって、刹那的に「利害関係が一致しているから同居している」というような関係でもありません。

お互いに信頼関係を築き、尊重し、経験を共有し、リスペクトして仲良くしていきたいという気持ちがあります。元々「相棒」っぽい相手なので、この感覚についてはパートナーとも共有しています。「仲良しで信頼しあっている」という状態を優先した場合、ロマンスは我が家で下位にまわります。

さらに我々は「嘘をつくのが苦手」なのです。苦手というかめんどくさい、というタイプなので、その結果「もしも他の相手に恋愛的な気持ちがわくような状態になった場合は相手に情報開示する」ということになりました(そういう夫婦は少数派だと思うのですが……)。

こんな風に秘密を作らず何でも話すには、同じ価値観でないとできません。そこで、結婚に何を求めるかをタイプに分けてみました(主観です)。

・ロマンスを求めるタイプ
・独占を求めるタイプ
・共同生活者としての実利優先タイプ
この3つがあると私は思います。

まず「ロマンスを求めるタイプ」とは、一般的に配偶者に対して「永遠の恋人」であることを求めるタイプでしょうか。私の初婚は完全にロマンスでした。しかし恋愛的なロマンスではなく、私の場合は「メリットや実利で相手を選ばない」というよくわからないロマンスでした。冷静に考えて、アホだと今は思います……。

当時は、結婚において「経済的なメリットなどを相手に求める」ことに対してとてもネガティブな気持ちを持っていたのです。「結婚はもっと純粋な気持ちだけでする、尊いものである」と思っていたんですよ……。結果、実利がなさ過ぎて辛くなってギブアップしました。共同生活をするという事実にまったく目を向けてなかった。30歳まで一体私は何を考えて生きてきたんでしょうね!?

2つ目の「独占を求めるタイプ」は、法律婚に「独占する法的な効力」を求めている人だと思います。こういうタイプは相手の行動を束縛したり、相手の能力や持ち物を自分のモノと思ったり、相手と自分の境界線がないタイプ。行きすぎると支配的にDVに走る、束縛しまくるなど危険な香りがしてきますが、お互いが同じタイプならいいのかもしれません。

3つ目の「共同生活者としての実利優先タイプ」は、ルームメイトに近い感じでしょうか。1人でいるよりも一緒にいたほうが何かと便利、という感じです。ここには「子どもが欲しいので結婚した」みたいな人も入ると思います。

とはいえ、明確にこれらのタイプに分かれているわけじゃなくて、みんな何割か混じりあっているとは思います。それでも「結婚に何を求めるか」はこの3つのどれかではないでしょうか。

で、「恋愛」という過程を経て、どういうわけか別々のタイプ同士で結婚したりすると、齟齬が起こると同時に嘘と隠し事が起こります。嘘と隠し事が必ずしも悪いとは思いません。世の中には「知らないようにやってくれればOK」という人も多くいますし、相手を思いやって合わせた結果「嘘」になってしまう場合もあると思います。

ちなみに、「浮気をパートナーに情報共有するとか絶対嘘だし無理。相手がそうするって言って、そんなの信じてるの? (笑)」みたいなことを言う人もいるんですが、そういうときこそ「タイプが違うと情報に齟齬が出る」というのを実感します。こういう齟齬を「いやいやそんなことないって」と対話で埋めようと思っても無理なので、「あなたはそうなんだね」と納得するしかありません。

と、ここまで書いておいて何なのですが、今のところ我が家ではその「情報開示」をする機会はありません……。

子どもがまだ小さく、夫婦ともに仕事しながら共同で家事育児している時期で、そもそもそういう時間なんかどこにもない。なので、こういう「もしもこうなったら言ってね」の会話は夫婦のおもしろトークに留まっています。

ちなみにうちのパートナーは「別の人と同居して重婚状態にしたいと言われたらさすがにちょっとイヤだけど、彼氏くらいならOK! 」と言っていました。予想よりだいぶOKのレベルが高くてビックリです……。

著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。