FPが家計のさまざまなお悩みに答えていく本連載。今回は女性のお金の専門家・ファイナンシャルプランナーの山根純子さんが、子どもの教育費に悩むあさみさんに対しアドバイスします。

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◆相談者さんのプロフィール

相談者

相談者 あさみさん(仮名)
女性/自営業/50歳

家族構成

夫(自営業/52歳)、長男(大学1年/20歳)、次男(中学3年/15歳)

◆お悩み

昨年、予定外の自宅の修繕や長男の予備校費用で貯金が大きく減った上に、この春からは他県の私大(理系)に通う長男への仕送りが始まり毎月の家計が赤字です。

できたら借入をしないで子ども2人を大学まで通わせたいと思っていますが、次男の大学費用を貯める余裕がありません。夫婦それぞれ自営業で年金が少ないので、小規模企業共済や生命保険など老後の資金も準備していますが、掛金の支払いも負担です。

◆あさみさんの家計収支

収入

支出

現在の貯蓄額


収入は、夫手取り34.3万円、妻手取り19.3万円、児童手当1万円の計54.6万円(手取りは昨年の利益から社会保険料と税金を引いた額の月平均)。

支出は、食費7万円、住宅関係費(保険・税金分)1.5万円、水道光熱費2万円、通信費5,000円、保険11万円、医療費5,000円、車関係費(税金分含む)1.5万円、娯楽費1.5万円、教育費2.5万円、小遣い4万円、雑費(日用品費)3.5万円、仕送り8万円、小規模企業共済掛金14万円。

貯蓄は、普通預金592万円となっています。

(1)保険等内訳

(2)教育費について

長男の大学費用は、4年間の学費が648万円(うち98万円払い済み)、受験費用が20万円、下宿初期費用として30万円が支払い済み。

◆FPからのアドバイス

キャッシュフロー表を作成して将来の家計の動きを見ると、今後予定外の出費が無いとしても、長男が大学を卒業する時点で普通預金は底をついてしまいます。

貯蓄は必要になる時期に必要な金額が使えるように計画することが大切です。3年後に必要となる次男の大学資金を確保しつつ、老後のお金も準備しましょう。

次男の進路は未定とのことですが、統計データによると大学4年間の学費の平均は、私大文系は407万円、私大理系は553万円です。また受験費用や入学しなかった学校への納付金として平均40万円程度かかることから、学資保険で用意できる150万円を引いて300~450万円を用意する必要があります。

アドバイス1: 教育費確保のために、生命保険を現金化

今後の相続対策として生命保険の非課税枠の利用を考えていないのなら、あさみさんにはそれほど多くの死亡保障は要りません。

加入中の生命保険はすべて貯蓄型の保険なので、解約をすれば解約返戻金を受け取れます。例えば、保険料が一括払い済みになっている2つの妻の終身保険は、現時点で払い込んだ保険料より多い金額の解約返戻金を受け取ることができます。1つ解約なら約330万円、2つ解約なら約670万円が戻ってきます。今後の次男の進路次第でどちらか1つを解約するか、両方解約するかを検討して下さい。

アドバイス2: 家計改善のために、生命保険を払い済みに

毎月の家計を見てみると、月々の生命保険の保険料が家計を圧迫しています。契約を変更して「払済保険」にすると、保障は小さくなりますが、毎月の保険料を支払わなくても契約を続けることができます。特約を付けている保険は、払い済みにすると特約が消滅してしまうので、入院特約が付いている保険以外で検討するのがいいでしょう。例えば、月32,094円の保険料を支払っている夫の終身保険を払い済みにすると、毎月の赤字分を解消できる上、3,000円を貯金に回せます。

アドバイス3: 老後資金として、小規模企業共済はこのままで

小規模企業共済は、自営業の方などのための退職金の意味合いをもつ制度です。小規模企業共済の掛金を減らして預貯金に回すことも、教育費の確保としては有効な手段ではありますが、共済の掛金は所得税や住民税の所得控除となり節税効果がある上に、「高校の授業料無償化」と言われる高等学校就学支援金の所得基準にも影響してきます。また、途中で掛金を減らすと、減額した部分の掛金が運用されなくなるというデメリットもあります。老後のためには、このまま続けていくのがよいでしょう

◆相談者さんからのご感想

夫婦それぞれ自営業で、売り上げを上げるために毎日が忙しく行き当たりばったりの家計管理でした。生命保険もよく理解しないで付き合いで入った部分も大きかったのですが、今回の相談で加入している保険の把握ができました。次男の大学資金も何とかなりそうでホッとしました。