FPが家計のさまざまなお悩みに答えていく本連載。今回は、AFPの池田ひろみさんが「貯蓄を使って住宅ローンを完済したけど、老後資金は大丈夫?」というかなさん(49歳)のお悩みにアドバイスします。

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◆相談者さんのプロフィール

相談者

かなさん(仮名・パート/49歳)

家族構成

夫(会社員/55歳) 年収約700万円
子ども2人(私立大学2年生、高校3年生)

◆お悩み

住宅ローンを繰り上げ返済し完済しましたが、教育費と生活費が増えてしまい貯蓄が増えていません。繰り上げ返済に貯蓄を使ってしまったので、老後資金が足りるかとても心配です。

◆相談者さんの家計収支

月収は46万円、月間の支出は管理費・修繕積立金2.4万円、食費(外食費込)14万円、日用品費1万円、水道光熱費2.6万円、車関連費3万円、通信費2万円、教育費12万円、保険料3万円、小遣い(4人分)6万円となっています。貯蓄額は360万円です。

(1)教育費内訳

第一子:学費用貯金8万円
第二子:学校諸費用1万円、塾代3万円

(2)ボーナス内訳

塾季節講習代約20万円、自動車税約4万円 、自動車保険年払い約6万円、旅行費用約30万円、被服費約20万円、貯金約30万円

(3)退職金

60歳時点で退職金が約1200万円受け取れる予定。

◆FPからのアドバイス

住宅ローンを早めに完済されたのは素晴らしいですね。ただ、住宅費の負担がなくなりゆとりができた分、全体的に支出が膨らんでいるようです。教育費も終わりが見えてきているので、今後はご夫婦の豊かな老後に向け計画的に準備していきましょう。

アドバイス1:教育費を確保しておく

老後資金の準備の前に、目の前の教育費が確保できているか確認しておきます。第一子の大学費用は残り2年間で約214万円必要ですが、毎月の教育費用貯蓄でほぼ賄えますね。

第二子が私立文系へ進学の場合は大学費用として約400万円が必要となります。学資保険の満期240万円を初年度・次年度の学費にあて、残り2年間は月8万円の教育費用貯蓄を第一子卒業後も継続して活用しましょう。

しかし、進学先を理系や医薬系に変更したり、下宿が必要になったりすると出費も増えます。その場合はお子さまと話し合い、奨学金制度を利用するなどして老後資金の準備に影響しないように注意が必要です。

アドバイス2:老後の生活をイメージしてみる

老後資金は「支出ー収入=不足額」です。老後の生活費は退職前の70%になると言われますが、収入も減りますので不足額を計算し備えておくことが大切です。

60歳で定年退職後、「再雇用制度」 を利用して65歳まで働いた場合の手取り年収は約320万円 の見込みですね。現在より約250万円減少しますが、同時期にお子さま達が社会人になられるので、ご夫婦が生活していくには問題ない収入額かと思います。

年金試算 によると65歳以降の年金額は約242万円。70歳以降は約281万円になります。一般的に老後は、健康維持・増進のための保健医療費や時間にゆとりができるため交際費・旅行費用が嵩みがち です。老後はどんな生活を送りたいか、何にお金をかけたいかで必要な不足額は大きく変わってきます。ぜひ一度ご夫婦で話し合ってみてくださいね。

アドバイス3:生活費のダウンサイジングを

食費や外食費・日用品費といった生活費が大きくなってしまっています。

特に食費・外食費が収入の30%は平均からすると少し多いですね。20%(9.2万円)~25%(11.5万円)程度を目指しましょう。

外食の頻度が多いことが一因なので、月に2回など回数を決めて計画的に行くようにされてはいかがでしょうか。その日は家族で予定を合わせ、どこのお店に行くかも相談して決めることにより、家族全員の満足度の高い外食費になります。日用品費も在庫が残り一つになったら買うなど工夫して、在庫を持ちすぎないように気を付けてみてください。

65歳で年金暮らしになったからといって、すぐに生活水準を落としたり支出を減らしたりすることは難しいです。今のうちから生活費を小さくすることを意識していきましょう。

  • 世帯主の年齢別消費支出とエンゲル係数※総務省『家計調査2021月間の収入と支出(総世帯)』より抜粋

◆ご相談後の感想

住宅ローンの繰り上げ返済に貯蓄を使いすぎてしまい老後資金が不安でしたが、準備しておくべき不足額の考え方が分かって良かったです。夫婦で老後の生活について話し合い、一度計算してみたいと思います。ありがとうごいました。