FPが家計のさまざまなお悩みに答えていく本連載。今回は女性のお金の専門家・ファイナンシャルプランナーの山根純子さんが、定年を3年後に控え、「老後は、元気なうちは旅行を楽しみ、介護が必要になったら老人ホームに入りたい」と考えているまゆみさんの悩みに対しアドバイスします。

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◆相談者さんのプロフィール

相談者

相談者 まゆみさん(仮名)
女性/会社員/57歳

家族構成

夫(会社員/57歳)、子ども2人(会社員/29歳・契約社員/26歳)

◆お悩み

定年まで3年を切りました。今まで夫婦で仕事も貯金も頑張ってきました。夫は、できれば定年後は働かず趣味などに時間を使いたいと思っているようです。私は、仕事は好きなのですが、最近家事との両立に疲れを感じるようになりました。

いずれ介護が必要になっても、子どもの負担にはなりたくありません。近隣に夫婦で入居できる老人ホームがあり、気になっています。退職後は、これまで行けなかった海外旅行を夫婦で楽しむのが長年の夢でしたが、難しいでしょうか。

◆まゆみさんの家計収支

収入

月の収入: 60万円
・給与(夫・手取り): 40万円
・給与(妻・手取り): 20万円
※ボーナス(夫・手取り): 年間300万円

支出

月の支出: 60万円

現在の貯蓄額

貯蓄: 4,387万円
(定期預金: 2,267万円 投資: 2,120万円)


月収は夫手取りが40万円、妻手取りが20万円の計60万円。夫のボーナスは手取りで年間300万円、妻はボーナスなし。

月の支出は、食費・日用品が15万円、住宅費が3.2万円、水道光熱費が2.3万円、通信費が1万円、医療費が2万円、保険料が9千円、車関係費が1.6万円、外食・娯楽費が1.5万円、ペット費が8千円、夫小遣いが7.2万円、妻小遣いが2万円、雑費が2.5万円、貯金・投資が20万円となっています。

貯蓄状況は、定期預金が2,267万円、投資が2,120万円です。

(1)今後の収入について

夫は、60歳定年で退職金手取りが2,700万円の予定。定年後も嘱託で働けるが、賃金は半分になる。妻も60歳定年で退職金はない。再雇用で65歳まで働けるが、賃金は80%になる。年金額は、夫240万円、妻120万円の見込み。

(2)今後の大きな出費予定

・自宅のリフォーム: 予算500万円(子どもが家を出た後に全面リフォームを希望)
・車の買い替え: 予算300万円×2回、計600万円
・旅行費用: 予算未定(海外旅行を年1回、国内旅行を年2回希望)

(3)ボーナスの使い道

・車関係費(自動車税・メンテナンス費): 20万円
・外食娯楽費: 20万円
・夫小遣い等: 34万円
・妻小遣い等: 10万円
・固定資産税: 15万円
・雑費(帰省・冠婚葬祭・家電の買い替え等): 45万円
・貯金: 156万円

◆FPからのアドバイス

老人ホームは施設により受けられるサービスも違いますが、費用にもかなり差があります。よく、調べてから入居するようにして下さい。

今回は、ご夫婦共に100歳まで生き、ご希望の施設に85歳から15年間入居すると仮定して、2人分の費用を入居一時金68万円、月額費用41万円でシミュレーションしてみました。

ご夫婦共に60歳で退職したとすると、60歳での貯蓄は8,275万円、65歳から100歳までの年金総額は1億2,600万円で老後資金の合計は20,875万円です。ご希望の老後生活の支出は旅行費1,400万円(年間予算70万円で60歳から20年間)、車の買い替え600万円、リフォーム代500万円、老人ホーム費用7,448万円の計9,948万円となります。

施設に入るまで、生活費は年間437万円でやりくりしましょう。

アドバイス1: 生活費のダウンサイジングを

年間437万円使えると聞くと「結構使えるのね」と思うかもしれませんが、まゆみさんの家計では年間187万円支出を減らす工夫が必要です。意識して生活費のダウンサイジングをしましょう。

今後はご主人の仕事関係の費用は必要なくなるのでお小遣いは大きく減らせますし、総菜の使用を減らし、食材や日用品の買いすぎがないかを見直しましょう。支出項目ごとに予算を決めると取り組みやすいと思います。

アドバイス2: お子さんにも負担を

同居されているからには、社会人のお子さんたちにも生活費を入れてもらいましょう。また、まゆみさんが4人分の家事をしていて、疲れて総菜の利用や外食が多くなっているということですので、家事の分担もさせましょう。

食費や外食費等の削減にもつながりますし、まゆみさんの負担が減るので再雇用で仕事を続ける気持ちになるかもしれません。また、お子さんたちの完全な自立のためにもプラスになると思います。

年間187万円削減例(すべて年額)
夫婦小遣い: 154万円→72万円(差額: 82万円)
食費・日用品費: 180万円→162万円(差額: 18万円)
外食・娯楽費: 38万円→23万円(差額: 15万円)
子どもから生活費: 0万円→72万円(1人月3万円)(差額: 72万円)

◆相談者さんからのご感想

旅行にリフォームに老人ホームなんて無理と言われるかと思っていましたが、見直す点を教えていただき、希望がでました。お金に直接は関係ないけれど、子どもがいつまでも同居していることも悩みでしたが、生活費を受け取ることで自立に向け一歩進めそうな気もします。支出を年間187万円減らすのは簡単ではないけれど、やってみようと思います。