病院で働く人たちの毎日は、患者さんには見えない“事情”と“本音”でいっぱい。予約の時間、紹介状の必要性、救急外来の待ち時間……「どうして?」と思われがちな場面の裏側を、受付・看護師・技師などさまざまな医療従事者の視点で描くオムニバス連載。ちょっと笑えて、少しだけ病院の見え方が変わる“医療現場の裏側”をお届けします。

⇒✅はじめからまとめて読む

解説

レントゲンの検査と聞いて、「被ばくが心配…」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、一般的な胸のレントゲン撮影1回で受ける放射線量は約0.05~0.1mSv(ミリシーベルト)です。

※mSv(ミリシーベルト)とは、人体が放射線から受ける影響の大きさを表す単位です。数値が小さいほど、身体への影響は小さいとされています。

私たちは医療検査を受けなくても、宇宙や大地、食べ物など自然界に存在する放射線から、年間約2.1mSv(日本平均)の放射線を受けながら生活しています。これは自然放射線(しぜんほうしゃせん)と呼ばれ、誰もが日常的に浴びているものです。

胸のレントゲン撮影1回(約0.05mSv)は、この年間の自然放射線量のおよそ40分の1に相当します。

また、飛行機で東京からニューヨークへ片道1回搭乗すると、高度が高いため宇宙からの放射線が増え、約0.05~0.1mSv程の放射線を受けるとされています。これは胸のレントゲン約1~2回分に相当する放射線量です。

「放射線はどれくらい浴びると健康に影響が出るの? 」と疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。

放射線には、しきい値と呼ばれる健康影響が発生する最小の放射線量が設定されており、例えば皮膚の赤みや脱毛などの急性の放射線障害は、一般的に1,000mSv(1Sv)以上を短時間で受けた場合に起こるとされています。

一方、胸のレントゲン撮影1回の約0.05mSvは、この値の約2万分の1です。通常の医療で行われるレントゲン撮影では、このような急性の健康影響が生じることはありません。

もちろん、放射線は「多ければ多いほど良い」というものではありません。そのため医療現場で放射線技師は患者さんの必要以上の被ばくを避けるため、撮影する部位や体格に応じて放射線量を細かく調整し、診断に必要な最小限の放射線量で検査を行っています。

一方で、レントゲン検査によって得られるメリットは非常に大きなものがあります。

レントゲン検査では、骨折や脱臼、肺炎、気胸などの病気やけがを短時間で確認することができ、適切な治療を早く始めるための重要な情報が得られます。また、見た目や症状だけでは判断できない異常を発見できることも少なくありません。

医療では、放射線によるごくわずかなリスクと、病気やけがを見逃さず正確に診断できるメリットを比較したうえで、検査が必要と判断された場合にレントゲン撮影を行っています。

そのため、医師から勧められたレントゲン検査を過度に心配する必要はありません。適切に行われるレントゲン撮影は、被ばくによるリスクよりも、病気を正しく診断し、早期に適切な治療につなげられるメリットの方がはるかに大きいと考えられています。

⇒✅はじめからまとめて読む