私は戦略人事のコンサルタントとして25年以上「働き方や人事」に関するコンサルティングを行い、5万人のリストラと6,500名以上のリーダーの選抜をしてきた『人の「目利き」』と言われています。

最近、驚くことが増えました。本人は「周りに気を使い、慕われ、優秀な俺」と思っているけれど、周囲からは「勘違い野郎」と評価されている人が繁殖しています。ややこしいのは「本人は悪気がなく、よかれ」と信じ切っていることです。いわばグレーゾーンの範囲なので周りは指摘しづらい状況なので本人は気付きません。

本連載では、「悪気のない困ったちゃん」のパターンを知り、そこから抜け出すヒントを解説してきました。最終回となる今回は、悪気のない困ったちゃん上司ができるメカニズムと対応方法を解説します。

  • 悪気はないけど困った上司に悩んでいませんか?

困ったちゃんは単なるビビりだ

さまざまな企業をコンサルし、数多くの管理職面談をする中で、困ったちゃんに関わらず、上司は部下に対し共通した5つの想いを持っていることに気付きました。

(1)一人前のビジネスパーソンとしての立ち振る舞いや言動をしてほしい。
(2)仕事の進め方は主体的に自立して進めてほしい。
(3)その反面、報連相をして進捗や状況を把握して安心させてほしい。
(4)意識の向上や能力開発は自主的に行ってほしい。
(5)上司である私に尊敬の念を抱いて言うことを聞いてほしい。

多くの上司は「部下は(自分に)心配かけず、自主的にちゃんと仕事をしてほしい」と思う反面、「上司としてリスペクトし、従う行動をしてほしい」と思っているのです。つまり、意外とビビり。

ただ、リーダーに選ばれる人間は、思い切って仕事を任せる勇気と覚悟があり、本当にやばくなるギリギリまで任せる胆力があります。本当にやばくなるギリ手前、いざという時は上司が助けてくれる安心感を持たせることで部下がチャレンジし、成長できる環境を整えているのです。

一方、困ったちゃんになる人は自分のビビりが勝り、ガラスハート・チキンハートなので任せきれません。細かい指示を出し過ぎて、かえって部下は混乱。

報連相を細かくさせ過ぎて部下の考える機会を奪ったり、自信がない反動で上から目線でパワハラ認定されたりするなど、まさにビビって「から回っている」証拠なのです。

困ったちゃんはメンツを大事にする

ビジネス界のインフルエンサーとして知られている田端信太郎さんの名言、「35歳過ぎの男性は、8割がメンツでできている」はまさにその通りです。

35歳は日系企業では仕事が一人前以上になり、重要なプロジェクトを任せられたり、マネジャークラスとチームを任されたりする年齢。なので、自分をスルーして、部長以上を口説いてトップダウンされるとメンツを潰されるのでスムーズに進めるには、それはいかん、ということは真理です。

「私の担当でも、どんどんすっとばして部長に直接承認もらってください」という課長は存在しません。「自分は無能です」と周りにPRすることになるからです。思い出してください。困ったちゃんは超ビビりです。周囲の評判をむちゃくちゃ気にするチキンハートで、ゆえに心に余裕がなくなります。

上司や先輩に相談して無能だと思われたくないので、結局一人で抱え込みます。結果、マイクロマネジメントで細かく部下を管理し、自分の成功方法を合わないメンバーにも押し付けます。

挙句、舐められないよう去勢を張ったり、威嚇したりするようになります。残念なことに、部下や周りからその振る舞いは丸見え。上司として自信もなく、マネジメントもできないと自らPRしていることすら気付きません。

自分なりには一生懸命やっていますが、周りが見えていないので困ったちゃんになるのです。35歳より若いから大丈夫とは限りません。体育会系の組織や昇進が速い営業組織など、20代からメンツが命になる文化があるところは、困ったチャンになる年齢も早いので注意が必要です。

困ったちゃんも成長途中

では、どうすればいいか。上司だと思うと、「上司としてこうあってほしい」という想いがでるのは、気持ちとしてはよく分かります、ここは割り切りましょう。

連載4回目、「仕事の丸投げと、委ねることを勘違いする上司」の対応方法でも解説したとおり、困ったチャンであるないに関わらず、相手は「キャラ」と割り切るのが一番です。

ワンピースのサンジなら、美人をみると目がハートになり仕事が手につかなくなるのはキャラだからしょうがない。と割り切れるのと一緒です。他人は変えられないし、変わらないので、「キャラ」だと割り切ると冷静に対処方法が見つかります。

さらに、上司であれば、上司も成長の途中だと、もう一歩突っ込んで割り切りましょう。西遊記の三蔵法師も敵にさらわれてしまいますし、ワンピースのルフィーもちょくちょく敵に捕まります。完璧すぎる上司より、一緒に成長する仲間で上司の役割を担って、彼・彼女も成長の途中なのだと思えば不思議と気持ちはラクになり、欠点も許せる余裕がでてきます。

困ったちゃんの行動を違う人に置き換えて相談する

上司とはいえ1ミリでも成長してほしい、良くなってほしいのは当たり前ですが、直球でフィードバックしても伝わりません。ビビり。メンツが8割。キャラであるため変わらないですが、プライドを傷つけずにフィードバックするテクニックがあります。

「私の友達が言っていたのですが、上司が〇〇〇するので大変。時代に合わないですよね」とその上司の行動を友達から聞いた話として置き換えて伝えるのです。

転職や恋愛相談の時「私の友達なんですけど……」と人目を気にして、自分の事を友達の事として話すのと一緒です。直接ではなくワンクッションかますのです。

「うんうん、そうか。それは大変だね、時代に合わないね」とうなずきながら上司は聞いてくれるでしょう。部下からのフィードバックでは、メンツがあるので素直に聞けるわけありません。

しかし、主語を友達の上司にすると他人事なので冷静かつ客観的に受け止めることができます。「やばい、私も同じようなことやっているかも……」と内心ヒヤヒヤしながら聞くでしょう。

同じ行動をすると、私も同じように部下に嫌われると学ぶことができるのです。最後に「だから〇〇してほしいんですよね」「〇〇してくれたら素直にうんと言えるのに」というように、上司にしてほしい行動を具体的に言うと良いでしょう。「そりゃそうだよね」と上司は言いつつ、「そうか、こうすれば部下がついてきてくれるんだ。上司として認めてくれるんだ」と学び、次からは、あなたが期待する行動をとってくれるようになるので、お勧めします。

筆者プロフィール: 松本利明

外資系大手のコンサルティング会社であるPwC、マーサー、アクセンチュアなどのプリンシパルを得て現職。世界を代表する外資系や日系の大手企業から中堅企業まで600社以上の働き方と人事の改革に従事。5万人のリストラと6,500名以上のリーダー選抜・育成に従事した「人の『目利き』」。英国BBC、TBS、日経、AERA等メディア実績多数。『「いつでも転職できる」を武器にする 市場価値に左右されない「自分軸」の作り方』(KADOKAWA)などはベストセラー。