こんにちは、人事・戦略コンサルタントの松本利明です。私は戦略人事のコンサルタントとして25年以上「働き方や人事」に関するコンサルティングを行い、5万人のリストラと6,500名以上のリーダーの選抜をしてきた『人の「目利き」』と言われています。

最近、驚くことが増えました。本人は「周りに気を使い、慕われ、優秀な俺」と思っているけれど、周囲からは「勘違い野郎」と評価されている人が繁殖しています。特に令和になり、その傾向が顕著になりました。

ややこしいのは「本人は悪気がなく、よかれ」と信じ切っていることです。いわばグレーゾーンの範囲なので周りは指摘しづらい状況なので本人は気付きません。なので、うっかりするとあなたも「悪気がない困ったちゃん」の仲間入りを仕掛けているかもしれません。

本連載では、「悪気のない困ったちゃん」のパターンを知り、そこから抜け出すヒントを解説します。

  • 上司からのフィードバックは適切だと思いますか?(写真:マイナビニュース)

    上司からのフィードバックは適切だと思いますか?

比較野郎とは?

「比較野郎」とは、部下にフィードバックする時に他人と比較してダメ出しをする人です。 部下指導の教科書には「他人との比較は言語道断。事実をもとにタイムリーに具体的にフィードバックすること」と必ず書いてありますが、その基本すら守れない人が、令和の世でもたくさんいます。それには「ある心理」が隠されているからです。

早速解説しましょう。

一言や態度のグレーゾーンはここだ

この一言を言われたら、あなたはついていきたいと思いますか?

同期ができて、なぜ、あなたができない?

昭和の時代、仕事をするのに同期をライバル視することは多くありました。「同期で一番になりたくないのか」「同期のあいつに負けて悔しくないのか」と本人はそう思っていなくても、「はい、同期で一番になりたいです。あいつに負けたくありません」と言うまで永遠に終わらないフィードバックは当たり前のように行われていたのです。

今のご時世なら「一発パワハラ認定なこと」は、その上司も分かっているでしょう。では、なぜ、同期をライバル設定し、競争させようとするのか。実は、部下への期待の裏返し、愛情があるのです。

「お前なら同期で一番になれる力があるので踏ん張ってほしい」という高い期待を素直に言えないので、逆に冷たく詰めてしまうのです。男の子が好きな女の子をいじめる心理に近いものがあり、悪気はないので余計、ややこしくなるのです。

俺がお前と同じ年齢(年次)の時にはできていた

同期などのライバルではなく、自分の昔の姿と比較してフィードバックしてくるパターンです。「俺と勝負するか」というマウンティング&タイマン野郎とはちょっと意図が違います。

多くの場合「俺ができていたから、お前もできるはずだ」という期待があるので、こう言ってしまうのです。「どうすればできるようになるか?」と一生懸命頭の中で考えながらしゃべるあまり、そのフィードバックの受け手の気持ちを忘れてしまっています。

ここまでできてほしい、という期待値を示すために俺がお前と同じ年齢の時、と事例変わりに示しているのかもしれませんが、こう言われたら部下であるあなたはどう思うか?

「その通り、上司が私と同じ年齢の時はできていましたね」となるわけはありません。「できていたと言いますが、それって本当ですか?」と疑う。これが普通の反応です。

その上司が本当に当時できていたか証拠を示されないと信用できないもの。なぜなら、人は他人の評価より自分の評価の方が高くなるバイアスが働くからです。思い出は都合よく記憶することも不信感につながります。

仮に本当に同じ年齢でできてしたとしても、それがあなたのできない理由や根拠にならないので不毛なやり取りにしかなりません。上司があなたと同じ年齢の時とビジネスの置かれている環境が違い過ぎるので、単純比較できないことも納得感を下げることにつながるのです。

比較野郎への対処法

いかがでしたか。そもそもですが、人は物事を絶対値で把握するには難しく、何かと比較することで理解する生き物なのです。そこに、期待の裏返しという愛情があるのでややこしいのです。

では、どう対処すればいいか。簡単です。誰かと比較されたらやりあわずに「分かりました」とだけ言ってスルーしましょう。分かりましたと言われると上司はそれ以上、比較して言うことができなくなります。

次に、「なので、一緒に解決策を考えていただけませんか」「課長だったら、この局面をどう乗り越えていくのか、教えてください」と言いましょう。論点が他人との比較による劣る面の認識合わせから、この局面を乗り越える解決方法を考え、着手することに切り替わります。

大事なことは現状を打破することなので、解決することに視野を向けさせてあげることも、生産性高く仕事をする部下の心得というかコツになります。