次々に新しい料理や食材などが登場するとあって、『食のトレンド』は刻一刻と移り変わっていく。しかし、クライアントや職場の同僚と「あれ食べた? 」という話になることはよくある。そんなときに「……聞いたこともない」というのは、かなりマズい。この連載では、ビジネスマンが知っておけば一目おかれる『グルメの新常識』を毎回紹介していく。第42回は「名店の激旨ミールキット」。

  • 招福門のミールキットを使って自宅でシュウマイ作りに挑戦!

「ミールキット」ってなに?

「ミールキット」とは、料理を作るための食材や調味料、場合によっては調理器具もセットになって販売されている手作りキットのこと。料理を一から作ろうとすると、スーパーに材料を買いに行き、食材の下ごしらえをし、調味料をそれぞれ計量……と、どうしても準備の手間が多くなってしまう。ミールキットを通販すれば、下ごしらえの済んだ状態で自宅に届くため、本格的な味が手軽に楽しめるだけでなく、自分で作る楽しみもプラスされるのが特徴だ。

これまでも食材宅配サービス(Oisix、パルシステムなど)などでミールキットは販売されていたが、忙しい主婦が時短のために利用することを想定した商品が多かった。しかし緊急事態宣言が出され、休業を余儀なくされた飲食店がミールキットの通販を始める事例が増加。「店に行きたいが外出を控えている」「テレワークになり料理をする時間ができた」といった消費者のニーズにマッチし、お取り寄せグルメの一種として人気に。「有名店の味を自宅で、自分の手で再現できる」という点が好評で、宣言解除後もサービスを継続する店が多いようだ。

どんな名店の「ミールキット」がある?

国内16店舗のほか海外にも展開するラーメン店「AFURI(あふり)」では、2020年4月にECサイトをオープン。看板メニューの「柚子塩らーめん」をはじめとしたラーメンやつけ麺などのミールキット、オリジナルのラーメン用どんぶり(食器)などを販売している。人気商品は「柚子塩らーめん 3食入り」と「柚子露つけ麺 3食入り」(各2,980円)。セット内容は、いずれも自家製の麺やスープのほか、角煮チャーシュー、メンマ、刻み海苔などのトッピング。爽やかな香りを添える高知県産の生絞り柚子果汁も付属している。

  • AFURIのミールキット「柚子露つけ麺 3食入り」(左)と盛り付け例(右)

「柚子塩らーめんは、新鮮な鶏ガラや香味野菜、魚介を丁寧に煮出した鶏清湯スープが自慢です。厳選した調味料をブレンドした塩ダレと合わせて調味しています。柚子露つけ麺は、らーめんと同様、鶏と魚介の旨味たっぷりの出汁に、キレのある生醤油を合わせてつくった冷製のつけだれが特徴です。こちらは麺・つけだれ共に『冷や』で召し上がっていただくのをおすすめしています」(AFURI 常務取締役 平田展崇さん)

ミールキットならではの工夫したポイントは、国産小麦と全粒粉を合わせた「真空手もみ麺」を使用していること。実際の店舗では基本的にそうめんに近い国産全粒粉入りの極細麺を使用しているが、好みで中太の真空手もみ麺に変更することもできる。極細麺では家庭用の調理器具で絶妙な茹で加減などを再現することが難しいため、家庭でも調理しやすいよう中太麺の真空手もみ麺を採用したという。スープやトッピングなどは店舗で食べられるものと同じものを使用しているため、購入者からは「お店で食べるのと同じ!」という感想が多く寄せられているそうだ。

「真空手もみ麺は、生パスタのように使ったり、太めの焼きそばにしてもおいしく召し上がれます。また、キットには入らない、お好みの野菜(水菜やほうれん草、小松菜など)やお好みの硬さに茹でた玉子を添えたり、残ったスープを雑炊や茶碗蒸しにしたり。ご自宅ならではの自由な発想でお楽しみいただければ幸いです」(平田さん)

東京・大阪に10店舗、ニューヨークにも店舗を構える高級焼鳥店「鳥幸」は、公式ECサイトで2020年6月よりミールキット「ベランディング鳥幸」の販売を開始している。

  • 鳥幸の「伊達鶏とはかた地どりのミールキット」

  • 単品のほか、オリジナルの焼き台とのセットも販売

今は遠出や屋外でのアクティビティを控えているという人でも、ベランダで絶品の焼き鳥を焼いて楽しんでもらいたいという意味を商品名に込めたという。新型コロナウイルス感染拡大により、店舗の休業によって飲食店だけでなく生産者も大きな打撃を受けているため、銘柄鶏の生産者支援のためにミールキットの販売を開始したそうだ。

人気のセットは、2種類の銘柄鶏にオリジナルの焼台がついた「『伊達鶏とはかた地どりのミールキット』と『鳥幸オリジナル焼台』セット」(6,600円)。ももや砂肝など5種類の焼き鳥に、各部位に合わせた柚子胡椒や黒七味などの5種類の薬味、特製のチャコールオイルやタレなどの調味料、さらにタレを塗るハケなども付属している。スーパーなどには流通しない銘柄鶏が使われており、ワンランク上の焼鳥を自宅にいながら楽しめる。

「鳥幸オリジナル焼台」は、ミールキットの販売に併せて開発。鳥幸を運営する東京レストランツファクトリーの担当者は「ステンレス素材のシーズヒーターを採用しています。遠赤外線で焼きながら煙を極力発生させないため、季節問わずご自宅のリビングでも使用できます」と話す。

発売開始以来「ベランディング鳥幸」の販売数は3,000セットに到達。同担当者は「短期間で販売数を伸ばせたのは、何よりもその楽しさにあります。クルクル、ガヤガヤ、ニコニコと簡単シンプルな焼鳥体験にハマってしまった人が続出しています」と話す。ベランダで気軽に楽しむレジャーとして、まさに“新しい生活様式”にベランディングがマッチしたといえそうだ。現在は比内地鶏や国産うなぎも取り扱い、8月からは別の銘柄鶏の販売も予定しているという。

「名店の激旨ミールキット」を試してみた

横浜中華街で香港飲茶の食べ放題が楽しめる「點心酒家(テンシンシュカ)」、フカヒレ専門店「魚翅酒家(ユウチイシュカ)」、新中国料理のオーダー式ビュッフェレストラン「美食同源(ビショクドウゲン)」を運営する招福門は、今年の3月から「蒸しを楽しむ本格ミールキットシリーズ」を同社オフィシャルネットショップで販売している。シリーズは肉まん、シュウマイ、天然アカハタの3種類。今回はシュウマイを手作りできる「凄旨!逸品伝授・焼売の素」(3,780円)を使って、自宅で初めてのシュウマイ作りにチャレンジした。

  • 招福門の「凄旨!逸品伝授・焼売の素」のセット内容。クール便で冷凍された状態で届く

ミールキットの内容は、3種の餡(鶏肉、豚肉、海老)、3色の皮(白・黄・緑 各10枚)、特製竹ヘラ。自宅で用意するのは蒸し器と水だけだ。招福門の広報担当 鈴木安佳音さんは「ご家庭で一から作るのは大変な餡を、すぐに使えるよう3種類ご用意しました。餡を包む皮にもこだわり、彩り鮮やかな3色の皮をセットにしています。包む楽しさ、蒸している間のドキドキ感、フタを開けるときのワクワク感、食べた瞬間口に広がるジューシー感など、どの瞬間も楽しんでいただけます」と話す。

冷凍庫に保管していた具材を前日から冷蔵庫に移し、自然解凍させたら調理開始。鈴木さんに上手に作るコツを聞くと「餡の包み方がポイントです。餡を皮に包む際は、左手の親指と人差し指・中指で輪を作り、その上に皮をのせます。竹ヘラを使って皮の中央に餡をのせ、円柱状に形を整えます」とのこと。セットには作り方の説明書がついており、Youtubeにお手本の動画もアップされているので、それらを参考に一つひとつ餡を包んでいく。

  • 包む作業は楽しいがなかなか難しい。「プロの点心職人はすごいな」と実感する

竹ヘラを使って黙々とシュウマイを包んでいく作業は、まるで職人になったような気分で没頭できる。皮は薄すぎず厚すぎず包みやすいが、お手本のようにスムーズに、かつ、皮にきれいなヒダをつけながら包むのは少々テクニックがいりそうだ。何個か包んでいるうちにだんだんコツが掴めてきて、なんとか形になった。フライパンに水を沸騰させ、シュウマイを並べた蒸し器を置いて蓋をして5分加熱、火を消してさらに2分半蒸らせば完成だ。

包み終えたときはどうなるかと思ったが、蒸し上がりはなかなかおいしそうな出来栄え!(記事冒頭写真参照)湯気もいい香りだ。早速試食してみると、白い皮に包んだ海老シュウマイは、皮からこぼれそうなほど海老がたっぷりでボリューム満点。「丸ごと入った海老の豊かな風味とプリップリの食感を生かした自信作です」(鈴木さん)と、店舗でも人気のメニューだそうだ。緑の皮に包んだ豚シュウマイは、ギュッと詰まった餡から肉汁がジュワっとあふれ出て、食べ応え抜群。黄色の皮に包んだ鶏シュウマイは、ジューシーな鶏肉にコリコリとした山クラゲの食感が良いアクセントになっている。

形は少々いびつになってしまったが、店のノウハウが詰まった材料を使用しているので味は絶品。ご飯にもお酒にも合いそうだ。下味がしっかりついているのでこのままでもおいしいが、好みで醤油やショウガをプラスしてもいいだろう。材料は30個分とたっぷりあるので、家族でワイワイ包んでおうち時間を楽しむのもよさそうだ。

外出したくても、今はなかなか遠くの名店へは足を運ぶのが難しいこともある。自宅にずっといてストレスが溜まりそうなら、作る楽しみ・食べる楽しみが味わえる名店の激旨ミールキットを試してみては。自分の手でお店の味を再現できる達成感に、ついハマってしまうかもしれない。

※価格は特記がない限り税込