次々に新しい料理や食材などが登場するとあって、『食のトレンド』は刻一刻と移り変わっていく。しかし、クライアントや職場の同僚と「あれ食べた?」という話になることはよくある。そんなときに「……聞いたこともない」というのは、かなりマズい。この連載では、ビジネスマンが知っておけば一目おかれる『グルメの新常識』を毎回紹介していく。第34回は「映えるおかゆ」。

  • 粥餐庁「海老とチーズのトマトのおかゆ」(780円)。リゾットのように見えるが、食べてみるとあっさりとやさしい味わいのおかゆ!

「映えるおかゆ」って何?

おかゆといえば、病中病後や胃腸が弱っているときに食べるシンプルなものを思い浮かべる人が多いが、ここ数年、見た目にも美しく、健康なときでも食べたいグルメな"映えるおかゆ"が登場している。シンプルなおかゆに盛りだくさんのトッピングをしたもののほか、おかゆ自体にしっかりした味付けをしたものなど実に多様。たっぷり食べても胃腸への負担が少ない点も人気の理由だ。

"映えるおかゆ"は中華粥がベース。日本式のおかゆはシンプルに多めの水で白米を柔らかく炊いたものだが、中華粥はゴマ油などの油を米に絡ませてから鶏ガラスープや干し貝柱など魚介の出汁を使って炊いたものが基本。ザーサイや白ネギ、ピータンなどを刻んでトッピングしたり、魚や肉を具材として煮込むこともある。米の原型がなくなるほど長時間煮込むのが特徴で、出汁の旨味を味わうのが醍醐味だ。

今回紹介する"映えるおかゆ"はこの中華粥をベースにした、美しさが映える新しいおかゆ。エスニックな味付けを加えたものや、ほうれん草やかぼちゃなどを混ぜ込んだ色鮮やかなものなど。見た目はまるで洋風のリゾットのように華やかで、従来のおかゆとは一線を画すものとなっており、SNSでもたびたび話題となっている。

「映えるおかゆ」はどこで食べられる?

中華粥ベースの映えるおかゆは都内をはじめ、各地にあるおかゆ専門店で食べることができる。

九段下にあるおかゆ専門店「MOMOGAYUYA(ももがゆや)」では、和風だけでなくアジアンテイストのものなど常時10種ほどのおかゆがラインナップしており、月替わりのメニューも1種登場する。

  • ももがゆ家「ももがゆ薬膳粥~参鶏湯風のお粥~」(M720円、S560円)

「一番人気は、参鶏湯風のおかゆです。店内で飲食される方にはサービスで、揚げパン・オニオンチップ・ワンタンチップから1つをおつけしています。食べ応えもあって好評です」と同店代表 秋本裕介さん。松の実やクコの実など薬膳で使われる食材がふんだんに入っており香り高く、ヘルシー志向の女性を中心に評判がいい。

  • こちらはももがゆ家「緑のお粥~ほうれん草のお粥~」(M720円、S560円)

緑が鮮やかなほうれん草のおかゆも、見るからに体に良さそうな一品。ほうれん草の風味がまろやかで、揚げたちりめんじゃこの食感がアクセントになっている。同店ではおかゆ全品がテイクアウトでも利用が可能(トッピングのサービスはなし、店内飲食より20円引き)で、オフィスでのランチなどにも役立っている。

外苑前にある「粥麺楽屋 喜々(かゆめんがくや きき)」は化学調味料を使わない個性派のおかゆが好評。シンプルな「鶏粥」(840円)のほか、パクチーをトッピングした「トムヤムクン鍋」(950円)もあり、「他店にはないオリジナルのトムヤムクン粥はリピーターも多く人気です。パクチー好きな方におすすめです」(同店を運営するkiki(キキ)の佐々木洋介さん)。

また同店では夜の居酒屋メニューとして〆におかゆを味わえるコースも提供している。餃子や蒸し鶏など中華風の料理とともに、酒の〆としておかゆを食べることができ、このおかゆを目当てに来訪する客も多いそうだ。

映えるおかゆを食べてみた

都内に3店舗(新宿、池袋、大崎)をはじめ、全国で10店舗を展開するおかゆと麺の専門店「粥餐庁」(かゆさんちん)にて、映えるおかゆを食べてみた。同店ではおかゆを常時10種近くラインナップしている。

  • 粥餐庁「8種野菜のベジかゆ」(880円)※新宿京王モール店では取り扱いなし

トマト、水菜など生の野菜、ボイルしたキャベツ、レンコンやさつまいも、紅芯大根等がふんだんに入った「8種野菜のベジかゆ」を頼んでみた。おかゆの上にサラダが乗っているようで、目にも鮮やか。レンゲでおかゆと具材を軽く混ぜていただいてみると、おかゆの熱で野菜が少し柔らかくなり、食べやすくてスイスイ食が進む。おかゆは出汁の旨味が前面に出た優しい味わいで、とてもクリーミー。とろみのあるスープを食べているような感覚だ。テーブルには「粥だれ」という醤油に似たオリジナルの調味料と黒酢があり、途中で味変するのも楽しい。

メニューを見ると、これだけ盛りだくさんなのにたった253キロカロリーと書いてある。もしかして物足りないかもと思いきや、完食するとしっかりお腹にたまり、満足感もあった。

「当店のおかゆは白米2:玄米1の割合。玄米かゆは白米に比べ、ビタミンB1が7倍、食物繊維が6倍も多く含まれていて栄養豊富で低カロリーなのが特徴です。干すことでうまみが増した"干し貝柱"や"昆布"、チキンスープ、身体を中から温める生姜とともに、毎日お店で時間をかけておいしく炊き上げています」(同店を運営するグリーンハウスフーズ 広報IR室 杉山典幸さん)

利用者はヘルシー志向の女性だけでなく男性も多く、また年齢層も幅広いそうだ。杉山さんによると、「台湾や香港等への旅行で現地の中華粥に親しまれたお客様によって、本格的な中華粥の魅力やおかゆの楽しみ方が広がって来ている」という。

従来のおかゆと同様に、最近人気の"映えるおかゆ"も胃腸にやさしくヘルシーだが、味わいも多彩で物足りなさは一切ないものとなっている。おいしいだけでなく見た目にも鮮やかなおかゆは、忙しいビジネスマンにとってゆっくり味わい、元気をチャージするのにおすすめのメニューだ。従来のおかゆの概念にとらわれない、新しいおかゆの魅力を味わってみてはいかがだろうか。

※価格は全て税込