働く親を持つ多くの子どもたちが、小学生になると通い始める「学童保育」。長期休暇中などはそこで一日を過ごす子も多いですが、具体的にどのようなことをして過ごすのでしょうか。「お迎えは行かなくていいの? 」「宿題は教えてもらえる? 」など、ママたちの疑問は尽きませんよね。
「学童保育のキホン」について、全国学童保育連絡協議会の事務局次長である千葉智生さんと佐藤愛子さんに話を聞くこの連載。4回目となる今回は、学童保育での具体的な活動内容について教えてもらいます。
学童保育への行き帰り、気になるお迎えは?
――学校が終わってから、学童保育へどのように移動するのでしょうか?
千葉:小学1年生は入学してからしばらくの間、集団下校をすることが多いですが、学童保育を利用する子は、指導員が小学校から学童保育まで連れて帰ります。道順や危険な箇所の確認を一緒にして、安全に通えると判断できれば、その後は子どもたちだけで学童保育まで帰ってくるようになります。
――子どもたちはバラバラに帰ってくるのですか?
千葉:同じ学年でもクラスによって帰りの会が終わる時間は違うので、子どもたちはバラバラに学童保育まで帰ってきます。学童保育では曜日ごと、学年ごとに時間割を把握しているので、それに合わせて子どもたちが帰ってくるのを待ちますね。
――学童保育までお迎えに行く必要があるかどうか、働くママたちが最も気になる部分だと思うのですが。
千葉:学童保育によって違いますが、早い時間帯なら一人で帰ってもいいが、遅くなればお迎えを必須としているところが多いですね。
佐藤:2012年に行った調査では、お迎えを必須にしているところもあれば、「お願い」に留めているところもあり、決まりにはバラつきがあるようです。ただ、18時を過ぎるとできるだけお迎えをお願いしているところは多いですね。
――高学年でもお迎えが必須ですか?
千葉:その点についてもそれぞれに異なっていて、高学年であれば一人で帰っていいところもあるようです。地域によって治安の良し悪しは違いますし、近所に住んでいる子と一緒に帰れるかどうかなどの事情もあるので、それぞれの学童保育で判断されているという現状ですね。
佐藤:運営形態や自治体によっても違うので、その点は事前にしっかり確認しておくことが大切かもしれません。
千葉:気になったら、ぜひ通う予定の学童保育に聞いてみてください。
長期休暇の長い一日、子どもたちはどう過ごすの?
――夏休みなどの長期休暇は、授業もないためどうやって学童保育で一日を過ごすのか気になります。
佐藤:確かにそうですよね。子どもたちは、朝から夕方までの時間を基本的なスケジュールに沿って過ごしています。夏休みは午前中の涼しい間に勉強する時間をとり、午後の一番暑い時間帯は部屋でゆっくり過ごすなど、家庭の生活と変わらないようなスケジュールが意識されているところが多いですね。
千葉:私が指導員をしていた学童保育では、朝静かに本を読んだり遊んだりして、9時ごろにみんながそろったら勉強する時間をとっていました。夏休みの宿題をしたり習い事の宿題をしたり、勉強する内容はそれぞれ違います。
――午前中にプール指導がある小学校も多いですよね。
千葉:プールのある日は、学年ごとに時間が決まっているので、午前中は子どもたちが学童保育に出たり入ったりしています。私が指導員をしていたころは、それが大体夏休みの最初と最後の1週間くらいにあるので、その期間中は、プールと勉強とちょっとした遊び時間で午前中を過ごすような感じですね。
佐藤:プールがない時は、9時か10時くらいに勉強が終わってから、少しゆっくりと過ごしたり「夏祭り」などのイベントの準備をしたりと、長期休暇ならではの過ごし方をします。
千葉:いつもとは違うような体験プログラムを用意している学童保育が多いですね。今は難しくなってきていますが、私が指導員をしていた時は、子どもたちとお昼ご飯を作ったり、材料やおかずを店に買いに行ったりするなどしました。子どもたちの生活体験になるとともに、保護者がお弁当を作る負担を軽減しようということもありましたね。
――学童保育や指導員によって、どんな体験ができるか変わってきそうですね。
佐藤:そうですね。
学童保育では勉強を教えてもらえるの?
――先ほど、勉強する時間をとるというお話もありましたが、基本的に学童保育では宿題などの勉強をしてもいいのでしょうか?
千葉:はい。2015年に国によって策定された「放課後児童クラブ運営指針」では、放課後児童クラブにおける育成支援のひとつとして、「子どもが宿題、自習等の学習活動を自主的に行える環境を整え、必要な援助を行う」と明言されています。
佐藤:家庭に帰るまでに宿題がまったくできていないと、生活が成り立たなくなってしまいます。18時半や19時ごろ、帰宅してから宿題をするとなると、子どもも親も辛いですよね。
――子どもたちが理解につまずいた時などは、指導員に勉強を教えてもらえるのでしょうか?
千葉:多くの学童保育では、指導員は勉強も見てくれますが、ほとんどの人は教えるプロではないので、現場ではどうすればいいかという戸惑いもあるようですね。たとえば、先生の教え方と自分の教え方が違うのではないかという不安の声も聞かれます。しかし「もう一度やってごらん」「ここが違うよ」など、子どもたちへの助言はしています。
佐藤:高学年になると学童保育で生活を共にしてきた子ども同士の関係があるので、勉強を教え合うような姿も見られます。また、上の学年の子が下の学年の子に教えてあげることもあります。そういった関係性も学童保育の良さですね。
――学童保育に任せっきりにするのではなく、親もしっかりと宿題ができているかどうか確認してあげる必要がありそうですね。
佐藤:私の娘は、音読や計算ドリルなどの宿題は学童保育でしてから帰ってきていました。ただ、ほかの子どもたちがたくさんいる時に創造的な作業が難しかったようで、新聞を作る宿題は持ち帰ってきていましたね。あと、繰り上がりの算数でつまずいた時に、「学童保育では恥ずかしいからしたくない」と言って持って帰ってきたこともありました。
千葉:学童保育はあくまで保護者と協力し合うという形なので、宿題についてもそれは同じですね。ぜひ子どもたちの声も聞きながら勉強もできるように、協力しながら進めてもらいたいと思います。
子どもたちの学童保育での過ごし方について知ることができて、筆者自身も年長の子を持つママとして少しずつ不安が解消されてきたように思います。次回は、気になる「待機児童と“小1の壁”の乗り越え方」というテーマで、引き続きお2人に話を聞きます。
プロフィール
千葉智生
全国学童保育連絡協議会事務局次長1983年から自治体職員として、公立公営の学童保育の指導員を32年勤める。市町村・都道府県の連絡協議会で、学童保育をよりよくするための活動を行ってきた。2015年から現職。
佐藤愛子
全国学童保育連絡協議会事務局次長自身の娘が通った学童保育で、指導員から子どもたちの話を聞くごとに、働きながらの子育てを支えられていることを実感。2004年から全国学童保育連絡協議会職員となり、2014年から現職。