学童保育で子どもたちと直接関わる「指導員」という人たちのことを知っていますか? 保育士と比べてもあまり聞き慣れない仕事ですが、小学生の放課後を支える大変重要な役割を担っています。

「学童保育のキホン」について、全国学童保育連絡協議会の事務局次長である千葉智生さんと佐藤愛子さんに話を聞くこの連載。3回目となる今回は、学童保育の指導員について教えてもらいます。

  • 学童保育の指導員ってどんな人?

    学童保育の指導員に必要な資格とは?

指導員の仕事は子どもと遊ぶだけではなく専門性が必要

――学童保育の指導員は、資格が必要なのですか?

千葉:学童保育の指導員は「放課後児童支援員」という名称で、2015年から専門の資格が創設されました。支援の単位ごとに原則2人以上の放課後児童支援員を置くことが義務付けられています。

佐藤:資格を取得するには、
・保育士や社会福祉士、教諭などの資格を持っている
・大学で一定の決められた課程を履修した
・高卒以上で2年以上児童福祉事業に従事した
など、9項目のいずれかに該当することが必要だと2015年に厚生労働省令で定められました。そのうえで、都道府県が実施する16科目24時間の「放課後児童支援員都道府県認定資格研修」を受講して、修了すれば資格を取得できます。

――指導員として働くには、専門性が必要なのですね。

佐藤:学童保育に通う子どもたちは、一人ひとりの年齢や発達段階、家庭環境や生活環境が違います。興味や関心もさまざまなので、指導員は子どもが学童保育での生活をスムーズに送れるよう、また安心して充実した生活が送れるように働きかける必要があります。

千葉:それぞれの年齢や発達段階に応じた関わりを持って、子どもが学童保育を「安心できる毎日の生活の場」として認識し、必要な期間、自ら進んで通い続けられるように支え、援助することが求められるのです。

――ただ、子どもと遊ぶだけの仕事ではないのですね。

千葉:そうです。私たちは、子ども、指導員、保護者がともに行う、「子ども一人ひとりと、子どもたちの生活内容を豊かにするための継続的な営み」を、「生活づくり」と呼んで大切にしています。そして、子どもや保護者とともに生活づくりを進めるうえで、指導員の担う仕事は多岐にわたり、専門性が必要だと考えているのです。

劣悪な労働環境による「なり手不足」と「質の低下」が懸念される

――専門性が必要な指導員ですが、現場では「なり手不足」や「質の低下」が懸念されていますよね。

佐藤:私たちが2014年に行った調査では、多くの指導員が不安定な雇用で、劣悪な労働条件のもとで働いていることがわかっています。半数以上の指導員は年収が150万円未満で、8割近くが非正規雇用です。また約半数は「勤続年数が増えても賃金は上がらない」と回答していて、勤続年数が1~3年の指導員が約半数を占めているのです。

千葉:何よりも、指導員にとって安心して働き続けられる条件が整っていないことが大きな問題で、それこそ「なり手不足」や「質の低下」の原因ですよね。私たちとしては、指導員は複数体制で、常勤かつ専任での勤務が必要だと考えています。

――保護者にとっても、子どもたちを預かる指導員の置かれている状況は決してひと事ではないですね。

佐藤:指導員が子どもと継続的な関わりを持てるようにするためにも、長期にわたり安定した雇用が確保される必要があります。仕事を継続する中で経験を蓄積し、その経験と自らの学びを同僚と確かめ合うことは、指導員が専門的な技能と知識を高めていくことにもつながります。

千葉:指導員が頻繁に代わっては、子どもも親も安心して学童保育に通わせられないですよね。指導員の処遇改善は、保護者にとっても関係のない話ではないと思います。

指導員を確保するために基準はなくすべき!?

――そんな中、2018年11月に「従うべき基準」として定められた「放課後児童支援員」の資格と配置基準を参酌化して、基準を緩和する方針が決まりました。

佐藤:「放課後児童支援員」の資格を持った指導員を原則2名以上配置することは、全国どの地域であっても子どもの生活を保障するために欠かせないものです。だからこそ、市町村が最低基準となる条例を定める際の「従うべき基準」として、児童福祉法に位置づけられているのです。

千葉:これが「参酌すべき基準」に引き下げられてしまえば、自治体の考え方次第で「放課後児童支援員」をまったく配置しないことも起こり得ます。そうなると、資格のない大人がたった一人で子どもたちを保育する可能性もあり、子どもたちに安全で安心できる「毎日の生活の場」を保障することは難しくなってしまいます。

――具体的にはどういった事態が懸念されますか?

千葉:自治体の考え方次第で指導員の資格と配置基準を決めることになるので、そうなると、市町村ごとに学童保育の質が大きくばらつくことにもつながりかねません。子どもの命と安全、安心できる「生活の場」を保障するという観点からも、市町村ごとの格差の広がりは大きな問題です。

佐藤:働く母親が増えた今、学童保育が質的に拡充し、量的に拡大して、安心して預けられる場所を作ることの重要性が高まっています。子どもたち一人ひとりの思いや願いを受けとめるために、子どもの発達などについての専門性が必要で、指導員の資格と配置基準は守られるべきだと考えています。

保護者と指導員との関わり方とは?

――指導員と保護者はどのような関係づくりをするべきでしょうか?

佐藤:保護者と指導員と子どもが一緒になって、学校、家庭、学童保育を含めた全体の生活を維持していくべきです。指導員と保護者は、「サービスを提供する人」と「受ける人」ではなく、あくまで一緒に子どもの生活を支えていく存在ですよね。

千葉:保護者と指導員が対等な立場で子どもの成長を振り返ったり、これから何が必要か一緒に考えたりできるのが一番です。私も長年指導員を務めてきましたが、お母さんたちは「子育ては失敗しちゃだめだ、迷惑を掛けてはいけない」といっぱいいっぱいになっているように思います。もうちょっと肩の力を抜いて、周りの人の手を借りてもいい。そういう関係も、指導員の働きかけで作れるといいですよね。

――指導員に任せるのではなくて、一緒に学童保育を作っていく、子どもたちを育てていくという考え方が必要なのですね。

千葉:そうですね。学童保育では保護者が運営に携わることもあるため、保護者たちが力を合わせて指導員と協力して運営しているところも多くあります。ぜひ、受け身ではなく積極的に指導員と関わっていってもらいたいですね。

学童保育の指導員は、専門的で代えがたい仕事だということがよくわかりました。子どもたちの命を預かってくれるそんな指導員の処遇改善にも、保護者の賛同や協力が必要とされているのかもしれません。次回は「学童保育って何して過ごすの?」というテーマで、引き続きお2人にお話を聞きます。

プロフィール

千葉智生

全国学童保育連絡協議会事務局次長
1983年から自治体職員として、公立公営の学童保育の指導員を32年勤める。市町村・都道府県の連絡協議会で、学童保育をよりよくするための活動を行ってきた。2015年から現職

佐藤愛子

全国学童保育連絡協議会事務局次長
自身の娘が通った学童保育で、指導員から子どもたちの話を聞くごとに、働きながらの子育てを支えられていることを実感。2004年から全国学童保育連絡協議会職員となり、2014年から現職。