FXの大相場の数々を目撃してきたマネックス証券、マネックス・ユニバーシティ FX学長の吉田恒氏がお届けする「そうだったのか! FX大相場の真実」。今回は「オージーの復活」を解説します。

前回の話はこちら

今までの話はこちら

以前述べたように、リーマン・ショック前後での、FXにおける最大の事件は、人気通貨だったオージー(豪ドル)の暴落だったでしょう。7年で1豪ドル=50円台から100円を超えるまで上昇したオージーは、リーマン・ショック前後のたった3カ月で50円台まで大暴落となったのでした。

「豪ドル建ての運用商品をお客様に薦めた金融機関の販売員の人たちは自信を失っています。そこで彼らに向け、元気が出て勇気がわくようなセミナーをお願いします」

知人から、そのような依頼を受けたという話を、以前紹介しました。ところが、そんな「失意のオージー」は、その後見事に「奇跡の復活」に向かったのでした。

オージー「奇跡の復活」をもたらしたものは?

オージー円は、2009年2月までは1豪ドル=50円台の安値圏で推移しましたが、年末までには約30円も上昇、1豪ドル=90円に迫る動きとなったのです。ここで興味深いのは、同じ期間に米ドル/円も同じように上昇したわけではなかったということです。

  • 【図表1】豪ドル/円の週足チャート(2008年10月~2010年1月)(出所:マネックストレーダーFX)

    【図表1】豪ドル/円の週足チャート(2008年10月~2010年1月)(出所:マネックストレーダーFX)

2009年1月に1米ドル=87円で下落一段落となった米ドル/円は、その後1米ドル=100円の大台を回復する場面はあったものの、それはごく短期間にとどまり、年末にはむしろ安値を更新するところとなったのでした。

  • 【図表2】米ドル/円の週足チャート(2008年9月~2009年12月)(出所:マネックストレーダーFX)

    【図表2】米ドル/円の週足チャート(2008年9月~2009年12月)(出所:マネックストレーダーFX)

要するに、2009年は年後半にかけ米ドル/円は円高(米ドル安)、一方オージー円は円安(オージー高)といった具合に、基本的に反対の動きとなったのです。それこそ、「100年に一度の危機」からの脱出が、中国など新興国主導で展開した影響だったのでしょう。

豪州は中国との貿易関係が強いため、オージーは中国の景気や株価の影響を受けやすい通貨として知られています。そんなオージーだからこそ、中国が主導した「100年に一度の危機」からの脱出は全く追い風となったのでしょう。

前に述べたように、「勇気がわくようなセミナーを」といった依頼に対し、私は、オージー円の5年MA(移動平均線)からのかい離率のグラフを示し、「今まで記録的な割高圏で推移していたオージーが、リーマン・ショックの大暴落を受けて、今や一転記録的な割安圏となりました。割安圏で買い、割高になったら売るといった投資の大原則からすると、今がまさに絶好の投資チャンスになったということではないでしょうか」と述べたのでした。

その指摘自体は正しかったでしょうが、正直に言うと、オージーがそれからすぐに、これほどまでに上がるとは全く予想していませんでした。その意味では、私にとってもまさに「奇跡のオージー復活」だったわけです。

そんなオージーを尻目に、米ドル/円は2009年後半にかけて下落が再燃。1米ドル=100円を超える円高を「超円高」と呼んだことがかつてあったのですが、そのんな「超円高」が定着し、一段と広がり出したのです。

それには、「100年に一度の危機」から脱出するために、これまで述べてきた中国など新興国の政策発動ともう一つ、米国など先進国の伝統的政策範囲を超えた、非伝統的政策発動の影響が大きかったのでしょう。