FXの大相場の数々を目撃してきたマネックス証券、マネックス・ユニバーシティ FX学長の吉田恒氏がお届けする「そうだったのか! FX大相場の真実」。為替相場分析の専門家がFXの歴史を分かりやすく謎解きます。今回は「トランプ・ラリー時の金融市場状況」について紹介します。

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前回私は、事前の「トランプ暴落」必至との見方が圧倒的だったことに対し、「トランプ・ラリー」といった正反対の大相場となった2016年11月、米大統領選挙後の大相場の真実を一言で言うなら、暴落恐怖症に陥っていた市場がもたらした歴史的「踏み上げ相場」だっただろうと述べました。

ただ、これまで述べてきたことから私が伝えたかったのは、当時においては金融市場が「暴落恐怖症」に陥るのも当然の状況だったということです。

ただし、そもそも人間の感覚には限度があります。そんな主観を諫めるためには、客観情報を活用する必要があります。では、2016年11月の米大統領選挙前、「暴落恐怖症」に陥っていた金融市場にとって、それを諫める意味で役立った客観情報とはどんなものだったのか?

行き過ぎた悲観論の見分け方

要するに、2016年当時の金融市場は断続的な「ショック相場」に見舞われる中で、行き過ぎた悲観論に陥っていた可能性があったわけです。では、それは客観的にどのように確認できるのか。

金融市場には、「リスク資産」と「安全資産」といった分類があります。悲観論が行き過ぎた状況に陥っているなら、リスク資産が売られ過ぎた状況になっているか、または安全資産が買われ過ぎた状況になっている可能性があるでしょう。

これまで見てきたように、2016年11月の米大統領選挙までに、チャイナ・ショックやBrexit(英国のEU離脱)ショックなど金融市場は歴史的な暴落に見舞われました。その中でリスク資産は売られ、リスク回避で安全資産へのシフトが起こりました。

ただし物事には限度がある。リスク資産の売りが続き、一方で安全資産の買いが続く中で、それが限界を超えた動きになってはいないだろうか-。その中で私がとくに注目したのが、安全資産の動きでした。

金融市場で伝統的な安全資産とされるのは、金(ゴールド)や国債などの債券。そして通貨では、かつて「有事の米ドル買い」といった言葉があったことが示すように基軸通貨の米ドルと永世中立国スイスの通貨、スイスフランが有名でしょう。このほかに、近年リスクオフ(回避)局面で買われる傾向が強いことから、代表的な安全資産とされるようになっていたのが日本円でした。

  • 円実効相場と52週MA (2000~2018年)(出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成)

    円実効相場と52週MA (2000~2018年)(出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成)

私は、この中でとくに日本円に注目しました。通貨の総合力を示す指標を実効相場と呼びますが、円の実効相場は「ショック相場」が続く中で大きく上昇していました

とくにそれを過去の平均値、移動平均(MA)からのかい離率でみると、記録的な「上がり過ぎ」を示す結果となっていたのです。