FXの大相場の数々を目撃してきたマネックス証券、マネックス・ユニバーシティ FX学長の吉田恒氏がお届けする「そうだったのか! FX大相場の真実」。今回から「リーマン・ショック編」スタートです。

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リーマン・ショックとは、2008年9月15日に、米国の大手投資銀行だったリーマン・ブラザーズが突然破綻したことをきっかけに起こった金融市場の大混乱のことです。ただ一つ重要なのは、このリーマン破綻からすぐに金融市場の大混乱が始まったわけではなかったということです。

たとえば、「FX大相場」の観点から、米ドル/円の値動きを見ると、リーマンの突然の破綻後も、しばらく1ドル=105円前後での一進一退が続きました。大きく動き出したのは、じつはリーマン破綻から約半月過ぎた10月に入ってからのことでした。そしてやがて、あの「最悪の日」、10月24日がやってきたのです。

  • 【図表】米ドル/円の日足チャート(2008年10~12月)(出所:マネックストレーダーFX)

    【図表】米ドル/円の日足チャート(2008年10~12月)(出所:マネックストレーダーFX)

FX投資家が大混乱となった豪ドル/円暴落

2008年10月24日、1ドル=97円程度で取引の始まった米ドル/円は、ずるずると下がると、その日のうちに一気に90円割れに迫りました。引けにかけては94円台まで戻したものの、この日の最大下落幅は7円以上となったのです。最大下落率も何と7%以上。

たとえば、最近の米ドル/円の暴落の一つに「アップル・ショック」がありました。米IT大手であるアップルの株が暴落したことを受けて、2019年1月3日の米ドル/円は1ドル=108円台からほんの数十分の間に104円台まで暴落しました。

この日は箱根駅伝の往路の日ですから、私もそれをテレビ観戦するために起きて、8時過ぎに為替レートを見て、何が起こっているのかわからずビックリしたことをよく覚えています(日本人なら似た経験をした人はとても多そう)。

ただこの「アップル・ショック」でも、その日の米ドル/円の最大下落幅は4円強、最大下落率は4%程度だったのですから、リーマン・ショック「最悪の日」の下落がいかに凄かったかがわかるでしょう。

もう少し、最近のほかの米ドル/円暴落例を見てみましょう。「トランプ・ラリー編」でとりあげた2016年6月24日のBrexit(英国のEU離脱)ショックでの米ドル/円は最大7円以上、最大下落率も7%以上だったので、実はリーマン・ショック「最悪の日」並みの下落でした。

そして、2015年8月24日のチャイナ・ショックは、最大下落幅が6円、そして最大下落率は5%弱でした。ちょっと待ってください。チャイナ・ショックは8月24日、Brexitショックは6月24日、そしてリーマン・ショック「最悪の日」は10月24日。なぜか暴落日は24日に多いですね。これも、「トランプ・ラリー編」「アベノミクス編」で紹介した、論理的には説明できないが繰り返されるパターンといった「アノマリー」の一つといえるかもしれません。

それはともかく、確かにリーマン・ショック「最悪の日」、2008年10月24日の米ドル/円の下落は凄かったけれど、「ヘー、2016年6月24日のBrexitショックも同じくらい凄かったんだ」と思った人もいるかもしれません。

それはその通りなのですが、2008年10月24日が、リーマン・ショック「最悪の日」だったのは、むしろ米ドル/円よりもほかの通貨のことだったのです。米ドル以外の外貨と円の取引をクロス円といいますが、クロス円の中にはこの日、米ドル/円以上の大暴落となった相場が続出しました。その代表的な存在が豪ドル/円だったでしょう。

この日、1豪ドル=65円程度で取引の始まった豪ドル/円は、一気に54円台へ暴落、最大下落幅は10円を大きく上回り、そして一日の最大下落率もなんと16%以上に達しました。この頃の豪ドルは比較的金利が高いことも魅力となり、FXでも人気通貨の一つとなっていました。そんな人気通貨の大暴落こそは、まさにリーマン・ショック「最悪の日」の所以だったでしょう。