教育費は住宅購入費用、老後費用と並んで人生の三大支出といわれています。皆さんは社会人になるまで一定の教育費が必要だったわけですが、「自分自身に総額いくら教育費がかかったか」を認識しているでしょうか。

  • 子どもが大人になるために必要な教育費の総額を正しく理解していますか?

三大支出の1つ「教育費」と金融リテラシー

文部科学省や日本政策金融公庫のデータから計算しますと幼稚園から大学までオール公立であっても1,000万円程度、オール私立の場合は、約2,500万円にも及びます。

これら教育費は塾や部活動といった費用も含まれているため、個人差はありますが、それでも住宅購入費用や「老後2,000万円問題」でも話題となりました老後費用に匹敵することが分かります。

小さなお子さんがいる人やこれから子供が欲しいと望んでいる人にとっては、教育費をどのように準備をすべきか? ということが非常に大きな問題となるわけです。

とはいえ、1人のみならず2人以上の子供を育てるとなった場合、単純に前出の金額を2倍、3倍することになれば、夫婦の収入のみではどうにもならない可能性も。こんな時は奨学金を利用することになるでしょう。

「今まだ奨学金を返しています。」という20代や30代の人も多いと思いますが、この奨学金に関しても金融リテラシーの必要性を様々な研究機関や論文などが指摘をしています。

2.7人に1人が奨学金で大学などへ

独立行政法人日本学生支援機構によりますと大学、短大、高等専門学校などの高等教育機関で学ぶ学生のうち、2.7人に1人(2017年度)が同機構の奨学金を利用して通学しています。10年前(2007年度)が3.4人に1人だったことと比較しますと、奨学金に頼る学生が増えていることが分かります。

2008年のリーマンショックを機に、会社員の給与水準は徐々に低下傾向をたどりました。一方で教育費は上昇傾向にあり、必然的に子供の教育費を負担できる家庭が減っていったのでしょう。

奨学金は借りた後が重要です。一般的に卒業後に返済が開始するのですが、在学中に見込んでいた給与水準ではなかった、給与が減ったなどという理由で滞納をする人も少なくないようです。

一定の条件を満たした人を対象にした返還不要の奨学金制度も現在はありますが、原則、奨学金や教育ローンは当然返済が必要です。しかし、日本学生支援機構の「返済義務を知った時期」に関する調査によると、延滞せずにきちんと返している人(無延滞者)の約9割は「申し込み手続きを行う前」と回答しているのに対し、延滞者の同割合は50.9%と約半数にとどまっています。

さらには「貸与終了後に返還義務を知った」人が19.1%もいることが分かっています。つまり、親が手続きを行う場合もあるため、「返さなくていいお金だ」、「そもそも借りていない」という間違った認識をしていたことになります。

子供の教育費として奨学金を利用する場合は、必ず奨学金の内容を親子で事前に共有することを覚えておいてください。

返済ができない人にはある特徴が

実は、こういった奨学金の問題は日本だけではありません。アメリカでも教育費が上昇していることにより奨学金(連邦学生ローン等)を利用し高等教育を受けている学生が増えています。

アメリカの政府系機関「U.S.Financial Lieteracy and Education Commision」による高等教育における金融リテラシーに関する調査報告によりますと、大学教育を修了できず学士号を取得できなかった人と奨学金を返済できない人との間に強い相関があるということです。

また4年生大学を4年ちょうどで修了したかどうかも相関性があり、4年制大学を5年以上で修了した人に比べ、4年ちょうどで修了した人の方がきちんと奨学金を返済できているとのこと。

たしかに、入学した大学を修了できなかったことによって、その後のキャリア形成にマイナスの影響が生じ、その結果、奨学金の返済が困難になるという状況が想像できます。また1年や2年留年することによって、本来なら働き収入を得ることができた期間を学生として過ごすことになり、当然その分の学費も生じるわけです。やはり奨学金の滞納等につながる要因の1つとなりそうです。

なお、同機関は、こういった返済困難な学生を減らす方法として、奨学金に関する学生に発送するレターから専門用語を減らし分かりやすいものにすることや、1対1でカウンセラーと相談できる機会を増やす取り組みなどが成果を上げており、また高校生のうちから金融教育を行うことも効果につながっていると提言しています。やはり学生の時から金融リテラシーを高めておくことが重要ですね。

※参照:Best Practices for Financial Literacy and Education at Institutions of Higher Education

親子で一緒にお金について学ぶ、そして行動する

筆者自身、30代後半に大学院を受験、合格した後に大学指定の銀行窓口で入学金を納めた経験があります。その日は入学金納入日の最終日で、同大学へ入学する現役生も数名いました。私の順番の前に呼ばれたのは1人の女子高生。銀行窓口の人から「合格おめでとうございます」と言われながら手続きを進め、親から預かってきたのか、入学金を自ら納めていました。

それを見た時、私にも娘がいるため、もし娘が大学に入学することになったら、同じことをさせようと強く思いました。そして半年に1回の前期・後期の授業料が銀行口座から引き落とされるタイミングでも、その都度、子供に学費を手渡ししたいとも考えています。「学校に行く」ということにどれだけお金がかかっているのか自覚することにもなります。

ちなみに、ある大学(私立)の4年間の学費を必要単位数などで計算した1コマ(90分)あたりの授業料は約5,000円でした。子供の進学先が決まれば、同様の計算をし、1コマあたりの金額を伝える予定です。この単価を下げる方法は在学中にたくさん授業を受け、たくさん学ぶことです。

奨学金を活用するかもしれません。いずれにしても定期的に親子で学費と向き合うことで、お互い金融リテラシーを高め、そして子供には、4年ちょうどで卒業してもらいたいですね。