「母子家庭(シングルマザー)」というと、「貧困」とセットでイメージする方は、今も昔も少なくないかもしれません。では、実際の母子家庭の年収はいくら位なのでしょうか。また、もし母子家庭で低収入であったとしたら、そこからどう抜け出せば良いのでしょうか。将来に向けてどう資産形成すればよいかも一緒に考えてみます。

  • シングルマザーの年収、平均いくら?「母子家庭」がすべき4つの貯蓄術も紹介

    シングルマザーの年収、平均いくら?「母子家庭」がすべき4つの貯蓄術も紹介

母子家庭の年収はいくら?

最初に統計値から母子家庭の年収をチェックしてみましょう。厚生労働省は「全国ひとり親世帯等調査」を発表しています。以前は「全国母子家庭世帯等調査」でしたが、時代の流れに応じて父子家庭も含めた統計値に変わっています。2019年3月発表の2016年度の調査結果を抜粋し、下表にまとめてみました。

「就労収入」が本人の年収です。それに補助金や元配偶者からの養育費などを加えた金額が「平均収入」となります。「世帯収入」とは同居の親族等の収入を合わせた金額です。

母子世帯の就労収入の中央値は169万円となっていて、月額14万程度です。一方父子家庭は、年収350万円、月額約29万円で倍額以上の違いとなっています。やはり母子家庭の収入は相当低いようです。

なお、中央値とは、サンプルを収入別に並べたときに、ちょうどサンプルの半数地点の収入値を示しています。平均値の場合は極端に高い収入のサンプルの値に影響されると実態とかけ離れてしまう傾向があるので、中央値がよりリアルな数字に近いと言えるでしょう。下記の表でも平均値が中央値よりも50万円ほど高くなっています。

  • 「全国ひとり親世帯等調査」参照

統計値は表現の仕方で意味合いも違う場合があり、実態を把握するのに必ずしも万全とは言えない部分もありますが、それでも何か疑問に思うところがあれば、元のデータや法律を調べて読み取る習慣は大切です。「全国ひとり親世帯等調査」の統計値には、年収以外にも様々な角度のデータが掲載されていますので、今後の方針を考える上でとても参考になると思います。

なぜ母子世帯の収入は低いのか、背景には専業主婦優遇制度が?

母子家庭といっても離別と死別ではかなり収入状況が異なります。死別であれば、生命保険の保険金、夫の退職金、遺族厚生年金や遺族国民年金等を受け取れます。また住宅ローンを借り入れていたのであれば、団体信用生命保険により残債が相殺され、借入金のない住まいが手に入ります。収入が少なくても、生活が十分に成り立つ可能性もあるでしょう。ただし自営業のケースは、違う側面もあるのでよく調べることをおすすめします。

さらに、正社員として共働きしていた女性がひとり親になったとしても、生活が直ちに困窮するとは考えにくいです。地位や役職による差はあるものの、基本的には男女雇用機会均等法で同じ仕事であれば同一賃金が保証されていますので、それほど低い賃金ではないはずです。

つまり母子家庭で困窮ケースは、旦那と離別して、かつ母親が就業による年齢にふさわしいスキルがないケースと言えるでしょう。専業主婦であったり、パート等で年齢に応じたスキルをアップしていけない仕事についていたりするケースは、ひとり親になれば生活が苦しくなるのは自明の理です。

本来、子供を持つのであれば、どのような状況にあっても子供を育てきるだけの覚悟と準備が必要なはずです。ひとり親になって、子供を育てられないとなるのは、それだけの覚悟と用意がなかった結果と言えます。問題解決はそこからスタートしなければなりません。

背景にあるのは、専業主婦や扶養家族の範囲内で働くパート主婦への優遇措置かもしれません。サラリーマンの妻であれば、妻の国民年金の保険料を支払う必要はありません。また、寡婦となれば、保険料を支払わずに受け取る自分の老齢基礎年金と、夫の厚生年金の75%を遺族厚生年金として受給できます。

国民年金加入者がもらう老齢基礎年金の原資の半分は税金ですが、所得税も支払っていなければ、もらう一方です。女性の年収は男性の55%程度と言われていますので、場合によっては定年まで働いてきた女性の年金額よりも寡婦となった専業主婦の年金額の方が高くなるのです。

しかも遺族年金は非課税で、それより年金額が少なくても自前の年金には課税されるのです。また配偶者控除などで、実質夫の手取りが増えます。そのような背景が、積極的に働く社会が作られていかなかった一因と思います。託児施設が不十分なのも問題でしょう。

つまり今まではかなり優遇されてきたこと、そして優遇されていた時代は終わったということなのです。それでもひとり親には様々な優遇措置がありますが、ここは意識を変えて自分の力を発揮していく心構えが大切です。

母子家庭にふさわしい貯蓄術

とにもかくにも母子共々生きていかなければなりません。子供の養育だけでなく、子供が育った後の親の老後の生活設計も大切です。老後の生活が成り立たなければ、子供の負担を増加させてしまいます。ですので、次の4つを意識して行動に移してみてください。

■収入を確保する
年齢にふさわしい給与を得られていないのであれば、貯蓄を考える前に、何としても子供を育てられるだけの収入を確保することが重要です。日々の生活の糧を得ながらも、粘り強く道を探っていくことが求められます。

なんとしても正社員の道を探す、資格を取得してそれを使う就職先に就く、自営の道を探るなど、長期にわたって満足のいく収入を確保するのが先決です。できれば厚生年金に加入できる仕事や職場が望ましいと思います。

当面収入がなければ、生活費や教育費が優先され、自分自身の老後の資金準備まで手が回らない可能性があります。年金が老齢基礎年金だけでは、現在の給付額で年額80万円に満たない金額です。老後のための貯蓄ができない分、ぜひとも厚生年金に加入しておきたいものです。

また長く働ける職種や職場の選択も大切です。少なくとも年金がもらえる65歳までは働ける道を確保しましょう。年金額が少なければ、70歳位まで働き、年金受給を70歳まで繰り下げて年金額を増やす方法もあります。定年後は子供も独立しているはずですので、多くの収入は必要ありません。自分だけの生活費と医療費やレジャー費などで何とか70歳まで収入を確保すれば、年金額を最大42%増額することができます。

■子供を自立させる
私の友人には、高校と大学を新聞配達しながら自力で卒業した人もいます。奨学金制度もありますが、社会人になってから返済に苦しむケースが続出するなど、一種の問題の先送りとなっている可能性があります。

子供たちには、早くからアルバイトなどで一定の自立する道を探るよう教育する方が、グローバル化していくこれからの社会にはふさわしいのではと考えています。欧米では、大学は自活して通うのが普通と聞きました。早くから独立して社会を生き抜く力を蓄えた欧米の子供たちと、いつまでも親がかりの日本の子供が同一の土俵で競争するとなると、日本の子供たちは不利ではないでしょうか。

■節約する
ひとり親世帯に対する公的支援はいろいろあります。それぞれ大いに助かるとは思います。ただし、あくまでそれは支援であって親の実力ではありません。支援がなくなったとき、子供が独立した後の自分自身の生活も想像して、生活を膨らませないことが大切です。

ひとり親には、子供には不自由させたくないという意識も高いと思います。しかし子供に苦労を見せることこそ教育でもあります。また子供はいずれ独立していきます。自分自身の人生設計をしっかり立てて、少しでも節約していくことが何よりも大切です。

貯蓄は万一の場合の医療費や生活費の蓄えを第一順位とし、それが確保された後は、教育費、老後の生活資金へと目的を分けて、順々に準備していくのがポイントです。基本的には預貯金でプールし、老後の資金は一部投資で運用してもよいでしょう。

学資保険は金額的にはメリットが少ないですが、親に万一の事態が生じたときにはその後の保険料の払い込みが免除されるメリットがあります。ただし、保険料が支払い切れずに途中解約すると、支払った保険料より少ない金額しか戻ってこないケースもあります。

■周りの支援を受ける
公的支援は当然ですが、親などからの支援も可能であれば受けましょう。資格取得の勉強の期間など一時的でも支援を受けられれば、その後は自立でき、より多くの収入を得られるかもしれません。一般的な収入を確保できるようになれば、支援を受けた金額を親に返済することも可能でしょう。

そのためには、親を納得させられるだけのしっかりした人生設計が必要です。もし母子家庭で現在困窮していたとしたら、それはどんな状況下でも子供を育てられるだけの生活設計がなかったということにほかなりません。当面の子育てに精一杯かもしれませんが、ここはいったん立ち止まって、生涯を通じた生活設計を立ててみましょう。

人生100年時代、今後の人生は途方もない長さです。親がきちんとした人生設計を持ち、日常的に子供たちにも示していくことは、子供たちへの最大の教育であると思います。

筆者プロフィール: 佐藤章子(さとうあきこ)

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。