春からの新生活。新年度の慣れない生活ですっかり外食の割合が増えたという新社会人や学生も多いだろう。手軽においしい外食が楽しめるファミレスはまさに庶民の味方だが、今回はそんな各ファミレスチェーン店でななかなか手を出す機会がない「一番高いメニュー」を注文。実食レポとともに紹介する。

本記事で取り上げるのは、1974年に1号店がオープンした日本を代表する老舗ファミリーレストラン「デニーズ」の最も値が張るメニュー「サーロインステーキ」(1,860円)だ。

  • 「デニーズ」の最も値が張るメニュー「サーロインステーキ」(1,860円)

■「肉の王様」と呼ばれるサーロインステーキ

身近な飲食店の代表的な存在であるファミレスにおける一番高いメニューというのは、なんとも絶妙に手を伸ばしにくいポジションにあるように思う。

ファミリーから一人暮らしの学生まで、多くの人の日常生活に寄り添ったファミレスという空間で提供されながら、スペシャルな奮発と勇気が必要とされる贅沢価格のメニュー。毎月の外食費やお小遣いも限られている中、イマイチだったら後悔を感じる可能性がそれだけ高い。だからこそ、その味わいやクオリティはやはり気になるところだ。

そんなわけで今回、ステーキやハンバーグ、パスタ、ライスプレート、御膳、丼、麺類などなど実に多種多様なメニューを展開する「デニーズ」の一番高いメニューに舌鼓を打つ幸運に恵まれた私。

「こちらの店で一番高いメニューを注文したいのですが……」と、ついにその日まで人生で言う機会のなかったセレブ感溢れる私のオーダーに、デニーズの店員さんが紹介したのは160グラム1,860円の「サーロインステーキ」である。

キレイな霜降りが特徴的なサーロインは、かつてイギリス国王・ヘンリー8世が食し、そのおいしさに感動して腰の肉の意味を持つ「ロイン」に、ナイトの称号「サー」を与えたことから名付けられた部位だと言う。

まさにキング・オブ・ステーキ。名前の由来からしてやんごとなき響きを持つ「サーロイン」だが、ステーキの他にもしゃぶしゃぶやすき焼き、ローストビーフなどもおすすめの食べ方のようだ。

参考までにデニーズには「BEEFハンバーグステーキ」という300グラムで1,580円のメニューもあり、「サーロインステーキ」は肉のグラム換算としては約2倍の価格ということになる。ちなみに、今回は勢いのままに大盛りライスとドリンクバーも注文。

■大盛りライスが驚くほど進む

デニーズのハンバーグ・ステーキ系メニューで好みに応じて選べるソースは、「おろしソース」「ガーリックソース」「オリエンタルソース」「デミグラスソース」の4種類。今回はにんにくの風味が際立つ「ガーリックソース」で注文した。

必ずしも「一番高いメニュー」は店側の「イチ推しメニュー」とは限らないようで、メニューの中での扱いは意外にも小さめだった。いろんな大人の事情を勝手に想像しながら、スマホでサーロインステーキについての解説記事に目を通し、料理を待つこと10分ほどだろうか。食欲をそそるジューシーな香り立ち上らせながら、ついに今回の主役が目の前に置かれた。

希少部位であるサーロインの肉質は、数回咀嚼するだけで飲み込めてしまいそうなほど柔らかく、噛みしめるほどに肉本来の旨味と味わいがダイレクトに感じられる。オーストラリア産の牛肉を使用しており、そのきめの細かい肉質の特長を生かしたシンプルな仕立て。

サーロインならではの脂身の上品な甘さだけでなく、赤身の肉の旨味もしっかりと味わえる。重くならない脂のおいしさと食欲をそそるガーリックソースとの相性も抜群で、鉄板の上でワイルドにカットしながら熱々をほおばると、我ながら驚くほど大盛りライスが進んだ。

もっともステーキの厚さとしては想像よりも薄く感じたのも率直な感想である。そもそも希少な高級部位を1,000円台で楽しめるのはコスパとしては悪くないはずなので、わざわざ指摘するべきか迷うところではあるが、パサつきや淡白さも感じられた。

デニーズはハンバーグなど他の肉料理メニューのクオリティがめちゃくちゃ高いだけに、価格なども踏まえると相対的にそちらの方がコスパは良いと感じる人も少なくないかもしれない。

もちろん注文して後悔するほどのものであるわけではなく、基本的には最後までおいしくいただけた。このあたりの感覚は個人差もあると思うので、懐に余裕のあるときはぜひ一度試してみると良いだろう。