整体師として活躍しながらランニングに関する著書を出版している「りょう」こと鮎川良さんが楽しいランニング方法を紹介する本コラム。今回は、膝の故障をしないためにも、重心の真下に着地する大切さを紹介します。

重心の真下に着地すると、膝は身体の前に出ない

多くのマラソン本には「膝を前へ出すように意識する」と書かれています。ところが、これが故障の原因になる悪いことと私は考えます。ここで再確認しておきますが、私がいま書いているコラムは「楽に長く走るための方法」であって、「速く走るための方法」ではありませんので、そこのところをお間違いのないように読んでくださいね。

着地したときに膝が身体の前に行かないようにする

「マラソンを始めてから膝を痛めた」。こんな人がとても多いです。その原因の一つに、膝が前へ出ることがあります。分かりやすく写真でご説明しましょう。

まず上の写真をご覧ください。私が推奨する「重心の真下に着地した図」です。膝が身体より前へは出ていませんよね? 比較するために下2枚の写真もご覧ください。左下は、前傾姿勢になっているけど、それよりさらに膝が前に出ています。スピードの速い人や大股の人が、このような着地になりやすいです。右下の写真は、後ろに傾いた姿勢になっているのに、膝が前に出ています。このような姿勢は、一生懸命走っているのになかなか進まない人に多いです。

前傾姿勢だけれど、膝が前に出ている

後に傾いた姿勢で、膝が前に出ている

良い着地と悪い着地で、膝にかかる負担が大きく違う

走るということは、歩くときに比べて、膝には3倍とも10倍とも負担がかかると言われています。では、なぜその数値に開きがあるのでしょうか?

それは走り方の違いにあると私は考えています。良い着地をすれば体重の3倍の負荷ですむのに、悪い着地をすると膝には10倍の負荷がかかってしまう。そう考えると、同じ距離を走っても、膝にかかる負担の違いはものすごく大きなものになるのは言うまでもありません。だから体重の重い人は要注意なのです。

着地の衝撃を足全体で受け止めると楽になる

膝には、「荷重」「衝撃」「ひねり」という3つの負荷がかかります。「重心の真下に着地する」ということは、「体重×着地」の衝撃を足全体でしっかり受け止めていることになるのです。その目安になるのが、膝の位置にあります。膝を痛める原因には、膝のひねりも大きく関係しますが、このことについては先で紹介する予定です。

「マラソンは着地の連続だ」ということを第3回で書きましたが、着地の衝撃を片足で受け止めなければならないのですから、一歩一歩しっかり受け止めてください。速く走りたいがために膝が前へ出ている人=がんばり過ぎです。故障する前に見直しましょう! 第4回で書きましたが、フルマラソンを4時間や5時間で完走するということは、ゆっくり走っても可能なんですよ。次回は足全体への乗り方をもう少し詳しくご紹介します。

著者プロフィール

鮎川 良
奈良県の学園前にて「RYO整体院」を営む整体師ランナー。整体師だからこそ分かる身体のメカニズムを基に、ストレッチの重要性を説き、クリニックも開催する。ストイックにタイムを追求するよりも、健康で楽しいマラソンライフを提案。筋肉痛になりにくい身体作りや疲労回復のケア方法、自身が提唱する疲れにくいランニングフォーム「エンジョイラン走法」で、フルマラソン走破を目指す人のサポートをしている。著書に『がんばらないで楽に長く走る』(学研パブリッシング)がある。また、累計200万アクセス超の人気ブログ「整体師に学ぶ~マラソンによる筋肉痛改善方法と、フル完走ノウハウ」も執筆している。