株や投資信託、FXや不動産など、これからは投資によって自分のお金を増やしていく視点が不可欠。ただしそこにはいくつか落とし穴がある。最も危険なのがマスコミの情報や広告にいたずらに乗ったり、成功した人の話を聞いてすぐにでもお金が儲かりそうな幻想に捉われてしまうことだ。

投資で痛い目にあっている人の共通点は「勉強不足」と「思い込み」

「FXで儲けた先輩の話に自分もできると思い込んだのが失敗でした。あっという間に50万円が消えてしまった」「証券会社の勧めるままに投資信託を始めたが、3年たった今は見事に元本を割れです」など、投資で痛い目にあっている人は少なくない。ただしそんな人に共通しているのが勉強不足と勝手な思い込み。

「5年前に株式投資をやって100万円を失いました。それを取りもどそうとFX投資に手を出した。当時はFXがやたら宣伝されていて、その投資ブームに乗って、とくに勉強をするわけでもなく始めました」

と話すのは三田義之さん(仮名・41歳)。当時の資金は300万円。主婦でもFXで稼ぐと聞いて、当然自分も同じように稼げると思っていた。ところが失敗を取り戻そうと熱くなり、当時可能だったレバレッジ100倍、200倍という取引で、気が付いたらあっという間に元手を失っていた。それどころかいろんなところから借りた借金が300万円にまで膨らんでいたという。

「相場の借金は相場で取り返すしかない。とにかく必死の思いで勉強しました。何冊も書籍を読み、投資成功者のブログを片っ端からチェック。直接メールで投資のノウハウを聞いたこともありました」(三田さん)

基本的なテクニカル分析や経済指標を学ぶと同時に、自分なりにエントリーや損切りのルールを確立した。たとえばその日仕込んだポジションは必ず寝る前には決済、翌日に持ち越さない。トレンドが右肩上がりなら買いポジション、下がっていれば売りポジションから入る"順バリ"投資に徹する。思惑が外れて逆方向に1割以上相場が動いたら、即座に損切りするetc. 連敗続きだったFXが嘘のように復活、借金を返済し、いまでは毎月20万から30万円の利益を上げるようになったという。

"身の丈"に合った投資方法とは?

投資で失敗するケースのほとんどは三田さんのように勉強不足なうちに始めてしまったというパターン。多くの人はそこで「やっぱり投資は儲からない」「危険だ」という結論を下し、投資そのものから身を引いてしまう。三田さんのように勉強し直して再度挑戦する人はむしろ稀だが、投資で現在継続的に利益を上げているほとんどが、一度手痛い失敗を経験し、それを教訓に立ち直った人たちだ。

投資においての失敗経験は、むしろ自分の不勉強と実力を知る良い機会。成功するには通り抜けなければいけない関門だとしたら、問題はいかに失敗の痛手、すなわち金銭的な損失を小さく抑えるかということになる。そこで大切なのが、今の自分にあった投資、身の丈にあった投資をすること。

自分の身の丈とは、現在の自分のマネー状況と投資経験がどのレベルかということになる。大きく分けてそれは以下の4つのレベルに分けられる。

レベル1

家計がひっ迫していて貯蓄が無いどころか借金がある。投資に対する知識はほとんどない状態

レベル2

家計は何とかマイナスにならずにやりくりができている。ただし貯蓄はほとんどなく余裕はない状況

レベル3

貯蓄が年収の2倍程度あり、家計は毎月貯蓄が可能なくらいの収入がある。投資信託や株、FXのいずれかの経験がある

レベル4

貯蓄が1000万円以上あり、毎月貯蓄を続けている。投資信託や株、FXなどの投資でかなりの成果を上げている

以上の4つのレベルのうち、果たしてあなたはどのレベルに当てはまるだろうか? 「レベル1」の段階で株や投資信託、FXなどに投資するのはもってのほか。自己資金も知識もないうちに投資を始めても成功する可能性はほぼゼロだ。まず日々の生活を見直して節約に努め、家計を改善することが先決だろう。当たり前だと思われるかもしれないが、この「レベル1」の段階で一攫千金を狙ってFXなどに手を出す人も意外に多いのだ。

「レベル2」の人は、基本的には貯蓄を増やすことにウエイトを置くが、投資をあえてやるというならば、たとえば「るいとう」などの積み立て型商品を中心に行う。まずは元手を最低年収の1年分くらいまで増やした上で、株式や投資信託などに投資をするのが良い。

「レベル3」の人はすでに元手がある程度確保できている。積み立ての貯蓄は続けながら、まず元手のうちの4分の1くらいを投資に回してみよう。ある程度投資の知識や経験がある人ならば、元手の半分くらいは投資に回してもよい。ただしその際1つの商品だけに投資をするのではなく、株や投資信託、金投資、FXなど、複数の対象に分けて「分散投資」が鉄則だ。経済や社会の変動で株やFXで損失が出ても、金などに投資していたら上がっている可能性がある。リスクを分散することが投資成功の条件だ。

すでにかなり金融資産を持っている「レベル4」の人は本格的な資産運用を考える段階だ。株やFXなどの投資だけでなく、不動産投資を視野に入れてみる。つまり投資商品そのものの価格の変動によって利益を得る、いわゆる「キャピタルゲイン」から、家賃収入や配当など固定的で安定的な有益である「インカムゲイン」にシフトする。このようにして資産を着実に増やして行くことができるようになれば、勤めを辞めて大家(おおや)業に専念するなど"アーリーリタイア"の方向も見えてくる。

いずれにしても、レベル1や2の段階で一攫千金を狙って、ギャンブル的な投資を行うことが一番の落とし穴。自分がどの段階なのかを冷静に見極めた上で、自分の身の丈にあった投資を心掛けることが肝心だ。

執筆者プロフィール : 本間 大樹(ほんま たいき)

月刊誌の編集を経てフリーの編集、ライター。経済、マネー、法律などの分野を中心に雑誌や単行本を執筆している。