バイクに詳しいベテランに聞いてみても、『高くても国内メーカーのフルフェイスが一番安心』という意見もあれば、『初心者ならオープンフェイスが最適』、『やっぱりカッコいいのはBucoのスモールでしょ!?』など意見はバラバラですが、実はどれが一番正しいとも言い切れません。今回は、そんなバイク用ヘルメットについて解説します。

■バイク用ヘルメットは大まかに分けて3タイプ

バイク用ヘルメットはさまざまなモデルがありますが、構造的な特長で3つのタイプに分類できます。

<フルフェイス>

顎の部分まで「外殻(シェル)」を一体成型としたことで、もっとも耐衝撃性に優れたヘルメット。高い安全性はもちろん、ロードレースでも使われるスポーティなイメージがあるため、昔から絶大な人気があります。

<オープンフェイス(ジェット)>

フルフェイスの顎の部分を取り去った形状のタイプ。視界は良好で開放感も高いため、街乗りやツーリングライダーに好まれています。耳と後頭部が浅いタイプは「スリークオーターズ」と呼ばれ、125cc以下用として販売されています。

<ハーフ(半キャップ)>

安価で手軽ですが、保護できる部分は耳から上半分しかありません。原付や小型車用として売られていますが、クラシカルなイメージは一部のアメリカンやクラシック系のライダーにも好まれます。ツバや耳当てのついたタイプもあります。

バイク用ヘルメットにはさまざまなタイプがありますが、発泡スチロール製の「衝撃吸収ライナー」に「シェル」を被せたという構造はだいたい同じです。鉄兜のようにシェルが金属製なら頑丈ですが、軽さも求められるため、ここには特殊な樹脂(プラスチック)が用いられます。大半はABSやポリカーボネートという、バイクのカウルにも使われる樹脂ですが、アライやSHOEIなどの有名メーカーは、さらに強靭で熱にも強いFRP(繊維強化プラスチック)などを採用しています。こういった製造工程に手間がかかる素材のほか、開発やテストなどにもコストをかけているため、一流ブランドの製品は高価になるというわけです。

また、近年はインナーサンバイザーを備えたモデルも増えています。朝夕の強い日差しなどでは便利ですが、帽体は少し大きくなります。

  • 代表的な形はフルフェイス、オープンフェイス、ハーフの3タイプだが、さまざまなバリエーションがある

■フルフェイス VS オープンフェイス、どちらが安全?

バイク乗りの間では、しばしば「フルフェイス」と「オープンフェイス」のどちらが安全か? と議論されることがあります。見た目ではフルフェイスの方が安全に思えますが、一概にそうとも言えません。

MotoGPなどのロードレーサーは全員がフルフェイスを装着していますが、限界走行では激しい転倒をするリスクも高いため、耐衝撃性が一番重要になります。サーキットではほかの競技者も同じ方向でコースを周回するため、公道のように対向車や歩行者に注意したり、のんびりと景色を楽しむこともありません。オープンフェイスより視界が悪くても、前を走るライバルとコーナーのクリッピングポイントが確認できればよいわけです。

対して、公道のプロである白バイ隊員はオープンフェイスを利用しています。彼らもツーリングライダーのように景色を楽しむ余裕はありませんが、周囲の交通状況を注意深く見たり、違反者とコミュニケーションを取る際には、オープンフェイスの方が適しています。公務中は制帽、つまりヘルメットをむやみに脱げないという理由もありますが、炎天下の路上で待機することもあるため、オープンフェイスが最適というわけです。

バイクの話から少し脱線しますが、第二次世界大戦中に「P-51」というアメリカの戦闘機がありました。最初は空力と防弾性能を両立したコックピットを持っていましたが、戦局が進むにつれて大きなバブル型キャノピーに改修されています。キャノピーはアクリルなので弾が当たったらひとたまりもありませんし、機体の速度や安定性も犠牲になりますが、それよりも一早く危険を察知できる視界の良さを優先したというわけです。

こう考えると、想定外のインシデントが多い公道では視界が広いオープンフェイスの方が適しているようにも思えますが、転倒をした場合、顎や顔面を強打するケースも少なくありません。フルフェイスでも衝撃が強ければ顎の骨や歯を折ることもありますが、オープンフェイスよりは格段に安全でしょう。また、顔面を打たなかったとしても、帽体全体の強度はフルフェイスに分があります。“危険を察知する視認性”か、“衝撃を受けたときの安全性”か、どちらを優先するかは、ライダーの考え方次第ということです。

  • 衝撃に強いのは圧倒的にフルフェイスだが、オープンフェイスにはリスクを未然に察知しやすいというメリットがある

■オープンフェイスのバリエーション

開放感と視界がメリットのオープンフェイスですが、レース用フルフェイスの顎部分だけを切り取ったようなエアロタイプのほか、ネオレトロやアメリカンバイクにマッチするストリートタイプもあります。前者はレーサーが使っている有名メーカー製が多く、価格もそれ相応に高いですが、後者はさまざまなメーカー製のものが手頃な価格で販売されています。

一流のヘルメット専業メーカーが作るエアロタイプは、やはりバイク用品としての設計がしっかりしているのが最大の特長です。耐衝撃性はフルフェイスに劣るものの、シェルにはFRPなどの強靭な素材を採用したモデルもあります。軽さと空力性能にも優れ、ベンチレーションや肌触りのよい内装、シールドの曇り防止といった快適機能も対策されているため、長時間の走行も快適にこなせます。

ストリートタイプは1960~70年代のビンテージヘルメットをモチーフにし、デザインやファッション性を重視したヘルメットです。シールドも昔ながらのボタンフック式で、レトロなデザインを損ねるような現代風の空力帽体やベンチレーションダクトは装備していません。頭が小さく見えるように、緩衝材を薄くして帽体をひと回り小さくしたスモールタイプも人気があります。

もちろん、機能と安全性ではエアロタイプの圧勝ですが、そのデザインはスポーツや高速ツアラーのテイストが強いため、流行りのネオレトロやアメリカンにマッチしたものではありません。中には最高級エアロモデルよりも高価な復刻版のビンテージヘルメットを求める人もいるほどです。そのため、最近は有名メーカーも自社のノウハウを活かしつつ、レトロなデザインを取り入れたモデルもリリースしています。

  • スポーツ系のバイクにはエアロ系が似合うが、ネオレトロやアメリカンなどは昔ながらのヘルメットに人気が集まる

■「システムヘルメット」はベテラン向き

「システムヘルメット」は、フルフェイスの安心感やスポーティな外観に空力性能と、フェイスガードを跳ね上げることでオープンフェイスの爽快感と利便性を兼ね備えたヘルメットです。

世界初のシステムヘルメットは、1981年のBMW純正ヘルメット(シューベルト製)でしたが、そのコンセプトは利便性や快適性だけでなく、ライダーが事故をした際の安全を確保するためという、いかにもドイツらしい考え方があったようです。ロングツアラーの多いヨーロッパでは一定の人気があったようで、ドイツやイタリア、スペインなどのヘルメットメーカーからも発売されています。

日本国内では1993年にSHOEIが発売し、現在はオージーケーカブトやワイズギア(ヤマハ)からもリリースされています。そのほか、海外メーカー製ではフェイスガードが後頭部まで跳ね上げられたり、パーツ交換でオフロードタイプに変更できるものもあります。

デメリットとしては、フェイスガードの開閉機構があるため、一般的なフルフェイスよりも大きくて重いことが挙げられます。ビギナーや軽いヘルメットを被っていた方は首が疲れてしまうため、長年バイクに乗って首に筋力がついたベテラン向きとも言えるでしょう。また、見た目はフルフェイスでもシェルの基本構造はオープンフェイスなので、フルフェイスほどの強度はありません。

  • システムヘルメットは便利だが、一般的なフルフェイスの1.2~1.5倍の重量がネック

■用途に応じて使い分けできればベスト

万が一の際の耐衝撃性に優れた「フルフェイス」か、広い視界で危険を察知しやすい「オープンフェイス」かは悩むところですが、両方とも揃えて使い分けるのも悪くありません。それぞれのメリットやデメリットも実感でき、自分にとって最適なヘルメットの条件も分かってくるはずです。

安全面から考えると、防護できる範囲も狭く、脱落しやすい「ハーフタイプ」はおすすめできません。万一の時に脱げてしまったら元も子もなく、命が助かったとしても、頭部の損傷は大きな後遺症を負うリスクがあるからです。

さて、ヘルメット着用が当たり前となった現代では、ほとんどのライダーがバイク用のヘルメットを購入していますが、「125cc以下用」のシールが張られたハーフタイプで大型車に乗っている人もいます。中には『工事現場用のヘルメットでもOK』と言い出す人もいたり、海外の有名なブランドのヘルメットなのに「公道走行不可」や「観賞用」として販売されているものもあります。

こういった「怪しいヘルメット」を使用しているところを警察官に見られた場合、ノーヘルとみなされて違反切符を切られてしまうのか、また、「公道走行不可」の注意書きがあるヘルメットは、バイク用品店で売られているものと何が違うのでしょうか?

次回は、そんな疑問をスッキリさせる「バイク用ヘルメットの法律」について解説します。