ひとことで「バイク」といっても、車体の形や排気量、国内、国外メーカーなど、さまざまなモデルがあります。『バイクを買おう! 』と思っても、詳しいことを知らない初心者や、久しぶりに戻って来たリターンライダーの方は迷ってしまうのではないでしょうか?

そんな方々に向けて、バイク選びのポイントを3回に分けて解説します。第1回(前編)の今回は、排気量やバイクのモデル、エンジンの形式や重さなどについて解説します。

  • ひとことで「バイク」といってもさまざまな種類があり、それぞれに長所や短所がある

■排気量ごとのメリットとデメリット

バイクのエンジンは原付の50ccから大型クルーザーなどの2,000cc以上まで幅広く存在します。排気量が増えるほどパワーも増えるため、小排気量車は車体が小さくて軽く、大排気量車は大きく重くなるのが一般的です。パワーや重さについては後述しますが、コストの面では小排気量ほど車両も安く、税金や保険料、燃費やメンテナンスといった維持費も安く抑えられます。

50ccと125cc

一番コスパの高い50ccですが、最高速度は30km/hまでのほか、二人乗りの禁止や二段階右折といったわずらわしさがあります。その点、125ccクラスは制限もなく維持費も安いため、若者やビギナーのほか、通勤用のセカンドバイクとして人気があります。ほかの車両で任意保険に入っていれば、特約で安く加入できるのも大きなメリットでしょう。デメリットは、高速道路などの自動車専用道路や、一部の区間の走行が禁止されていることです。

250ccクラス

250ccなら高速道路を使ったロングツーリングも楽しめます。車体も軽く扱いやすいため、昔からビギナーや女性に最適とされたクラスですが、中には超高回転まで回る4気筒や、パワフルな2ストロークエンジンを積んだ本格的なモデルも。機動性が重視されるオフロード車もこのクラスが人気ですが、125ccベースの車体に150ccのエンジンを搭載したスクーターも注目されています。車検が不要というのも大きなコストメリットといえるでしょう。

400cc以上

400cc以上になると2年ごとの車検が必要で、太いタイヤなどを含めた消耗品も高価なため、維持費もそれなりに必要です。しかし、音や振動といった本格的なバイクの世界が味わえるのが大排気量車の魅力。スロットル一ひねりで瞬時にパワーが引き出せるため、ロングクルージングでもストレスなく走れます。ただし、大排気量車になるほど車体も重くなり、エンジンからの熱量も増えるため、混雑した市街地や夏場の渋滞はとても大変。日本国内では400~750ccクラスがベストと考える方も多いようです。

■見た目やジャンルによる違い

バイクは二つのタイヤを持ち、ライダーが風を受けて走る乗物ですが、同じ「バイク」でも、軽くて小さな「原付スクーター」から、大きくて重厚な「アメリカン」や「クルーザー」、いかにも速そうなスタイルの「スポーツ」、長いサスペンションを持つ「オフロード」など、さまざまなジャンルがあります。どんなジャンルでも市販車は公道走行を前提に作られていますが、自分の使い方にあったバイクを選ぶと快適になるはずです。

「ネイキッド」は、昔ながらの“単車”イメージを残すベーシックスタイル。ここからさまざまなジャンルに分化していった基本形ですので、オールラウンドに楽しむことができるでしょう。ワインディングやサーキット走行が主体なら、低いカウリングとハンドルを持つ「スポーツ」、高速道路を使った長距離ツーリングがメインであれば、ゆったりした乗車姿勢と防風効果の高い大型カウリングを持つ「ツアラー」といった具合です。

「ネイキッド」よりもロー&ロングな「アメリカン」は、ゆったりとエンジンの鼓動や振動を味わうクルージングに適しています。ダートコースや林道を走りたい人は、サスペンションのストロークも長く、ブロックパターンのタイヤを履いた「オフロード」ですが、高速道路を使った長距離ツアラーの要素を入れたいなら「アドベンチャー」系がおすすめです。ウエアにもこだわらず気軽に乗りたいならば、操作もイージーで積載性も高い「スクーター」でしょう。

しかし、杓子定規に用途で決めるのではなく、“好きなデザインのバイクに乗る”という選択も間違いではありません。例えば古いベスパなどは「スクーター」に分類されますが、シート下の収納スペースもなく、独特のハンドチェンジも必要。給油のたびに2スト用オイルをガソリンタンクに入れる手間もあります。現代の「スクーター」のような万能性はありませんが、クラシック・ベスパ愛好家達は、そこに楽しみを持っているわけです。

■エンジン形式がフィーリングを決める

  • オートバイの主役はエンジン。排気量やシリンダーの形式で性格は大きく変わってくる

バイクの車体は大半がエンジンを占めるため、その形式によってある程度の性格が決定づけられます。単気筒はリズミカルに路面を蹴っていく感覚が小気味よく、ノスタルジックなフィーリングも大きな魅力です。一つのピストンというシンプルなエンジンと、軽くスリムな車体は初心者向けにも思われますが、それも250ccクラスまで。排気量が増えれば振動や1発の蹴り出しも強くなり、500cc以上のビッグシングルはかなりのベテラン向けになります。

2~3気筒エンジンはクセも少なく、トルクやパワーの変動もフラットで扱いやすい特性をもっています。並列とV型があり、一般的には並列よりもV型の方がスポーティな味付けです。中排気量では単気筒よりもマイルドで、初心者からベテランまで安心して乗れるでしょう。「ハーレーダビッドソン」や「ドゥカティ」くらいの大排気量になると一発の蹴り出しも大きくなり、独特の迫力や鼓動感も味わえます。

4気筒エンジンは高性能国産車の象徴ともいえる形式です。これも並列とV型がありますが、並列はモーターのように振動もなく、中回転から盛り上がるパワー感と甲高いエキゾーストが魅力。V型も同等にパワフルでトルクの出方も扱いやすい万能型ですが、双方ともにコストのかかった高出力型エンジンです。デメリットはエンジンが大きく複雑になることや、小排気量では低回転時のトルクが不足すること。こういった特性からオフロード車ではあまり使われません。

ほかには、気筒数に関係なく空冷と水冷があります。現在は排ガス規制のため水冷化が進んでいますが、ハーレーやヤマハのSRといった空冷エンジンの良さは、やはり昔ながらのシリンダー・フィンが持つ美しさや、エンジン本体から鳴り響く音が挙げられます。また、現在は絶滅した2ストロークは過激なイメージもありますが、80年代後半の市販車なら意外に乗りやすかったりするものです。これがレーサーや大排気量車、チューニング車両になると、パワーバンドに入ったときの加速はすさまじいものになります。

■重さや大きさについて

モデルによって差があるものの、基本的には排気量に応じて車体も大きく重くなります。たとえば50ccや125ccは軽くて小さいため、混雑した市街地や狭い駐輪場での取りまわしは苦になりません。スクーターならシート下のメットイン(ラゲッジ)スペースもありますが、とても小さいモデルになるとフルフェイスヘルメットが入らないこともあるので、事前に確認したほうがよいでしょう。

コンマ1秒を争うレースの世界では“軽さは正義”ですが、公道の場合は大きくて重いバイクにもメリットはあります。それは路面のうねりや横風などの外乱に強くなるため安定感があり、長距離走行では疲労も少ないということです。近年の大型車は寝かし込みも軽快なので、巨大な車体をヒラヒラと操っている満足感も高いはずです。

ただし、いくら扱いやすくても確実に質量が大きくなっていることは頭に入れておく必要があります。奥で曲がり込んでいるカーブでは車体の反応が遅れたり、急な下り坂では制動距離もかなり長くなります。これらはトラクションコントロールやABSだけでは解決できないものです。

昨今は中高年のリターン組を中心にライダー人口も増えましたが、連日のようにバイク事故のニュースも報道されています。その多くは交差点での右直事故や、ツーリング中のカーブの飛び出しですが、現在のバイクがとても乗りやすくなったことも影響しているはずです。大きくて立派なバイクは乗っていて満足感が高いですが、とっさの時に動かない、止まらないといったリスクも抱えていることを認識しておくべきでしょう。

  • 本格的なバイクの世界を味わえるのがビッグバイクの魅力。ロングツーリングの快適性も高い

■色やグレードも大事

バイクの人気色は、「ドゥカティ」ならレッド、「トライアンフ」ならブリティッシュグリーン、「カワサキ」はライムグリーンでヤマハは「ブルー」、「ハーレーダビッドソン」なら星条旗ペイントもアリ! といった具合に、お国柄やメーカーのイメージカラーが影響しています。人気の定番カラーは台数も多いため、修理時のパーツ供給や売却時にも有利ですが、珍しい色の場合はパーツの入手に苦労したり、査定が下がることもあるようです。

重厚な単車っぽいブラックなどの濃い色も人気ですが、こういった色は周囲の景色と溶け込みやすく、ほかの車両からの視認性が悪くなるというデメリットもあります。クルマの場合、どんなシチュエーションにも合う無難な色が好まれますが、バイクは趣味で乗る要素が強いもの。自分が好きなら、安全も兼ねてオレンジやイエローなどの派手な色を選んでもよいでしょう。

グレードに関しては、塗装やメッキパーツ、シートの表皮、マフラーなど、細部の質感をアップさせた上級グレードが設定されているモデルもあります。価格は少しアップしますが、ほかの同型車に差をつけたい方にはおすすめでしょう。後から同様のカスタムをするよりは安いですし、メーカー純正なので安全性や法的にも問題ありません。

ただし、スーパーバイクや往年のレーサーレプリカといったスポーツタイプの場合は要注意。これらの限定モデルは希少価値も高いものの、公道の使い勝手よりも市販車レースで勝つことを優先してチューニングされた過激な仕様もあるからです。ギア比も高めで発進もしにくく、積極的に荷重をかけないとカーブを曲がらないサスペンションなど、バイク歴の長いベテランでも手こずるものもあります。

  • スポーツタイプは乗車姿勢もきついが、サーキット向けの過激なモデルも存在する

■まずは、どんなエンジンのフィーリングを楽しみたいか?

バイクの魅力のひとつとして挙げられるのが「音」や「振動」ですが、それはエンジンのピストン数やシリンダーの並び方といった形式で決定づけられ、排気量が増えるほど主張は強くなるものです。バランサーや爆発間隔などで味付けを変えたモデルもありますが、ほとんどのモデルはそのエンジンのテイストを楽しめる車体の造り方になっています。

遮音されたキャビンを持つクルマと違い、バイクは前後二つのタイヤに挟んだエンジンに跨り、その存在を感じながら走る乗物です。パルス感のある振動や蹴り出しを楽しみたいなら単気筒やツイン、モーターのようにスムーズで、高回転・高音質で炸裂するパワー感を味わいたいなら四気筒と、まずはどんなエンジンを楽しみたいかを考えてみてはいかがでしょうか。

次回は、国産や輸入車、新車や中古車、不人気車や旧車などについて解説します。