「生前贈与」は「贈与の特例」とセットで話題になることが多いです。なぜなら、贈与は亡くなった後に発生する相続と比べて税率が高く、控除も少ないため、一般には特例なしでは、大きな金額を贈与するメリットはあまりないからです。

前回に概要をまとめた「贈与の特例」の詳細については順次回を追って解説していきますが、今回は基本的な贈与の税率と計算方法をまとめてみましょう。

基本的な暦年課税の速算表

最初に暦年課税の復習です。贈与はその年にその人(受贈者)が受け取ったすべての贈与の合計額から、基礎控除額110万円を差し引いた額が、贈与税の計算のもととなる課税価格となります。課税価格が高ければ税率も高くなります。

  • 暦年贈与の考え方

    暦年贈与の考え方

また贈与には、「一般贈与」と20歳以上の者が直系尊属(父母・祖父母など)から受け取る「特別贈与」の2種類があり、税率が異なります。

  • 贈与税の速算表

    贈与税の速算表

上記の表の中の控除額とは、税額の計算を簡略するためだけの控除額です。

ケース1

例えば300万円の一般贈与の課税価格の税額は、300万円全体に15%となるのではなく、200万円以下の部分の税率は10%で200円を超える部分から300万円までの100万円分の税率は15%となります。

200万円×10%+100万円×15%=35万円(税額)=300万円×15%-10万円(控除額)

ケース2

また、親からの特別贈与300万円と義理の母からの一般贈与300万円を同じ年に受贈した場合の贈与税額を、速算表を使って計算すると以下のようになります。

まず、600万円から基礎控除分110万円を除くと課税対象は490万円となります。その490万円分を特別贈与分と一般贈与分に按分します。

計算方法として、特別贈与分と一般贈与分ともに490万円もらったとして、それぞれに税額を計算し、最後に贈与された600万円のうち、特別贈与分(600万円のうち300万円)と一般贈与分(600万円のうち300万円)の比率でそれぞれの最終税額を算出します。

特別贈与分の贈与税額は(490万円×20%-30万円)×300万円/600万円=34万円

一般贈与分の贈与税額は(490万円×30%-65万円)×300万円/600万円=41万円

贈与税額合計は34万円+41万円=75万円です。

贈与の申告

日本の場合は贈与をされた側(受贈者)が申告します。申告期限は贈与された年の翌年2月1日から3月15日までで、受贈者の住所を管轄する税務署に贈与税の申告書を提出します。

暦年課税

その年1年間でもらった額が110万円を超える場合は申告が必要です。110万円以下の場合は申告不要です。

相続時精算課税制度及び贈与税の各種特例を利用する場合

暦年課税の非課税範囲以外はすべて申告が必要です。それぞれの特例は併用できるものや、どちらかを選択するものがあります。相続時精算課税制度は、いったん選択すると暦年課税には戻れませんので注意が必要です。

前回も述べた通り、贈与には長期的展望と生活設計が大切です。そのうえで制度を正確に理解し、特例を上手に活用してください。

次回以降、それぞれの特例について解説していきますが、限られた記事の中ですべてを網羅するには限界があります。記事を参考に、国税庁などのホームページで詳細を確認ください。

■ 筆者プロフィール: 佐藤章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。