京成電鉄は2015年12月5日にダイヤ改正を実施する。今回の改正でAE100形は引退となりそうだ。長い間「スカイライナー」として活躍したAE100形は、後進のAE形に役目を譲り、現在は京成本線の有料列車「シティライナー」として走っている。AE100形の有終の美となる列車をダイヤグラムで眺めてみよう。
京成本線は京成上野駅と千葉県の成田空港駅を結ぶ69.3kmの電化路線だ。京成船橋駅や京成津田沼駅などの主要駅を経由する。当初は東京と成田山新勝寺を結ぶ参詣鉄道として親しまれていた。新東京国際空港(現在は成田国際空港)の開業を転機に空港連絡路線として脚光を浴び、国際都市東京に君臨した。
しかし2010年、成田スカイアクセス線が開業すると、看板列車の「スカイライナー」は成田スカイアクセス線経由に移る。京成本線は東京都と千葉県のベットタウンを結ぶ「地域密着路線」に戻った。ただし、通勤時間帯・帰宅時間帯の有料定員制列車として「モーニングライナー」「イブニングライナー」は継承され、日中には「シティライナー」が設定された。空港連絡列車ではなく、京成本線沿線の人々や、創業時以来の成田山参拝客のための着席サービスだ。
京成本線は12月5日にダイヤ改正を実施する。「シティライナー」は運転終了となり、AE100形の定期運行はなくなるという。今回は空港連絡の任を解かれた現在の京成本線のダイヤを眺めよう。AE100形の定期運行の最終ダイヤとなる。
平日の全区間全時間帯を圧縮表示した。列車の線の色は、京成電鉄が案内している色に合わせている。有料列車「スカイライナー」「モーニングライナー」「イブニングライナー」「シティライナー」は藍色、快速特急は緑色、特急は赤色、通勤特急は水色、アクセス特急は橙色、快速は桃色、普通は黒だ。
急行は青色だけど、このダイヤでは表示されない。急行は北総線内のみ設定されている。急行のほとんどの列車は都営浅草線から押上線を経由するため、青砥~京成高砂間を通過しているはずだけど、じつは京成高砂駅で種別変更しているため、急行として走っていない。「京成本線に急行はない」これ、ちょっとした京成本線トリビアかもしれないな。
青砥~京成高砂間はダイヤの上から1/4あたり。列車の密度が高く濃い色の帯に見える。ここは京成本線唯一の複々線区間だ。なぜここだけかというと、2つの運行系統が重複しているから。青砥駅から都心方面に押上線が分岐し、京成高砂駅からは北総線・成田スカイアクセス線が分岐する。これらの路線は直通運転を行っている。押上線は都営浅草線とその先の京急線に乗り入れ、羽田空港に至る。北総線・成田スカイアクセス線は線路を共用していて、成田空港に通じている。
つまり、羽田空港と成田空港を結ぶ相互直通運転ルートと、京成上野~成田空港間を結ぶ京成本線が、青砥~京成高砂間で重複する。2つのルートは交差しているけれど、青砥駅は分岐駅としては珍しい二重構造となっていて、立体交差を実現している。ただし、京成高砂駅の下り線東側に車両基地があり、上り方面の入出庫が平面交差になる。片方のルートでダイヤが乱れると、別のルートにも影響しそうだ。運行業務で気を遣う区間といえそうだ。
京成本線にはもうひとつの濃い帯がある。一番下の空港第2ビル~成田空港間だ。ここは単線だけど、成田スカイアクセス線と共用している。京成高砂駅で別れた「スカイライナー」が、ここで合流してくる。京成本線は全線複線に見えて、じつは複々線も単線もある。これも京成トリビアかも!?
京成本線は朝に有料列車「モーニングライナー」を運行している。使用車両はAE形だ。もともと「スカイライナー」の車両だけあって、線の角度を見れば速さがわかる。ただし、最も混雑する時間帯は避けている。朝の京成上野行は6時台から7時台にかけて到着する2本と、9時台に着く2本。この時間帯は京成高砂駅から合流してくる「スカイライナー」も少ない。
通勤時間帯だから、極端に速い列車は止めて、停車駅の多い通勤列車を増やしたい。これは通勤路線のセオリーだ。ただし、「スカイライナー」は空港連絡の重責があり、空白時間帯は作りたくない。京成本線・押上線に都心方面への乗客が分散されているため、助かっているといえる。
続いて「イブニングライナー」の時間帯を見てみよう。朝に比べて列車の運行密度が低いため、7本も運行されている。車両も最新のAE形だし、京成本線の貫禄を残したダイヤといえる。緑色の快速特急は通勤時間帯に特急の代わりに運行されている。停車駅の違いは京成佐倉駅から京成成田駅までで、快速特急は通過し、特急は各駅に停車する。したがって、列車密度の高い京成上野~京成佐倉間では同じ停車タイプの列車だ。
「シティライナー」は休日のみの運行だ。当初は平日も毎時1本の運行だったから、京成本線のダイヤは「スカイライナー」運行時代とほぼ変わらず、停車駅が増えただけ、という印象だった。しかし、東日本大震災で全面運休となって以降、少しずつ運行回数が減り、とうとう休日に1往復だけになってしまった。
そこで休日ダイヤを見ると、朝夕ラッシュ時間帯の運行密度が低めの他は、ほとんど平日と変わらないように見える。京成上野駅から遠ざかるほど列車の密度が下がり、沿線の人口の様子も見えてくる。日中の通過列車が多いことから、長距離路線だけど、ほとんどの乗客は都心へ向かっているんだな、という推察もできる。
休日に1日1往復の「シティライナー」を拡大してみた。朝に京成成田行、夕刻に京成上野行という設定だ。"シティ"を結ぶというより、成田山に参拝するための列車に見える。「シティライナー」の運行激減と次のダイヤ改正での運行終了は、AE100形の老朽化も原因だろうし、期待通りの乗客数ではなかったともいえそうだ。だけど「シティライナー」ではなく、「成田山参詣ライナー」という名前だったら、もう少し沿線以外からの認知度も高まって、乗客も増えたかもしれない。
そこで提案してみたい。最近の中古電車を改造した観光列車のブームにあやかって、AE100形の内装をリフォームして、休日に成田山参詣観光列車を走らせたどうだろう? 朝は遅めの朝食を提供して、夕方は軽食やスイーツにワイン、もちろん和食とお酒でもいい。参詣グループ向けならお座敷や畳敷きにしてもよさそうだ。どうかな。
妄想はこのくらいにして、改めて京成本線のダイヤを拡大してみると、ほぼ全線にわたって緩急接続に配慮が行き届いている。主要駅だけではなく、所要時間でほぼ等間隔になる駅で、普通列車と通過タイプの列車の通過待ち合わせが行われている。それでいて、上野側では「スカイライナー」が乗り入れ、朝夕に全線で「モーニングライナー」「イブニングライナー」が走る。複々線区間や単線区間もあり、見所の多いダイヤだ。とくに青砥~京成高砂間を眺められる場所があったら、始発から終電まで退屈しないだろう。鉄道ファンなら住みたい町の上位入賞、間違いなし!