私はかれこれ20年近く、家計のやりくりの取材をしてきました。その中には、貯蓄が1,000万円以上ある人も、少なくありませんでした。その人たちが、とりわけ収入が多いというわけではありません。年収300万円台(手取り)というケースもたくさんありました。また、お金を使わないケチケチ生活をして、ギスギス暮らしているわけでもありません。
要するに、お金のやりくりが上手なのです。ということは、そのやりくりの仕方をまねすれば、誰でも1,000万円貯めることが可能というわけです。是非今日からまねしてみてください。
食費を削らないのが、今っぽいやりくり
少し前までは「出費を減らすには、食費を削るのが手っ取り早い」と言われていました。かく言う私もそう思っていましたし、取材させていただくやりくり上手さんも食費が少ない人が多いものでした。お子さんが未就学児とはいえ、家族4人で1カ月の食費が2万円台という人はザラで、中には2万円を切る人もいました。
ところが、今どきは"食費節約"は、はやりません。雑誌でも、食費の"節約"どころか、"食費"というワードさえ人気がないのが実情です。ひき肉におからや豆腐などを混ぜ、カサ増ししてハンバーグを作ったり、その日作ったものをリメイクしたりして、翌日も、その翌日も食べるという、いじましいことに嫌気が差したのかもしれません。やっぱり、普通のものを、普通においしく頂きたいと、皆さん、感じるのだと思います。
シンプルな味つけだからこそ、いい調味料が光る
食費を無理に削らないとはいうものの、使いたい放題ではお金は貯まりません。そこで、最近のはやりをお教えします。それは食材はお手頃価格のものでも、調味料をランクアップするという手です。
先日、取材させていただいた1,000万円貯蓄を達成した人も、"調味料こだわり派"でした。調味料の中でも、特にこだわりがあるのが塩。精製されていない粗塩を使用し、産地や製法にもこだわりを持ち、海藻のうまみ成分が入っている"藻塩"を使っていました。「塩自体にうまみがあると、少量でも味わいがあるし、いろいろな調味料を足さなくても、塩だけでおいしくなる」とのことでした。
塩の他にも、酢は京都の「千鳥酢」、醤油は木だるで1年以上長期熟成した天然醸造醤油、みりんは原料の米が無農薬有機栽培のものなど。確かに、よくあるメーカー品やスーパーのプライベートブランドのものよりも、値段は少し高めですが、味見をしてみると、それだけの価値があると納得します。調味料自体がおいしいのです。
いいお醤油を使うと、ただの卵かけごはんも格上げされます。特売の鶏胸肉も藻塩で下味をつければ、ソテーするだけでおいしくなります。おいしい調味料を使うというだけで、素材の味が生きて簡単な調理でも料理の味が格段とおいしくなるのです。
今は、ネットで全国の商品情報を検索できますし、通販で簡単に取り寄せることが可能です。1,000万円貯蓄を目指しながらも、食事を貧相にしないためには、少しだけいい調味料を使ってみるという手がオススメです。
村越克子
フリーランスライター。学習院大学文学部心理学科卒業。編集会社を経て、フリーに。主婦を読者対象とした生活情報誌を中心に執筆。家計のやりくりに奮闘する全国の主婦を取材し、節約に関する記事を数多く手がける。執筆協力に『綱渡り生活から抜けられない人のための絶対! 貯める方法』永岡書店など。