私はかれこれ20年近く、家計のやりくりの取材をしてきました。その中には、貯蓄が1,000万円以上ある人も、少なくありませんでした。その人たちが、とりわけ収入が多いというわけではありません。年収300万円台(手取り)というケースもたくさんありました。また、お金を使わないケチケチ生活をして、ギスギス暮らしているわけでもありません。

要するに、お金のやりくりが上手なのです。ということは、そのやりくりの仕方を真似すれば、誰でも1,000万円貯めることが可能というわけです。ぜひ今日から真似してみてください。

簡単に買えるものは、簡単に手放せる

今、欲しいと思っているコートがあります。欲しいのですが、値段が高い。高いコートを買わなくても、もう少し安いものでもいいのでは……と迷いどころです。でも、ここで、一番気に入っているコートをあきらめて、「安いから」という理由で二番手のものを買ったら、手にしたときの満足度は必ず低くなります。

……と悩んでいるときに、取材でお会いした1,000万円貯めた人の話を思い出しました。彼女は、本当に欲しい"本命品"と出会ったときには「高くても買う」という考えの持ち主。もちろん、その場で衝動買いするわけではありません。本当に欲しいのか? そのものが値段に見合う価値があるのか? をじっくりと考えます。それでも欲しいとなれば、「買う」という決断をします。ときには、すぐには買わずに、目標金額を決めて、毎月、コツコツお金を貯めて買うこともあります。

値段は高くても満足度の高い買い物をする意味

反対に、100円のものでも、自分が欲しいと思わなければ買いません。その理由は「100円のものには、100円の満足度しかないんですね。"安いから"という理由で買ったものは、"安かったから"という理由で簡単に手放して処分することになります」とのことでした。

10年、愛着を持ち続けられる"一生もの"を手に入れる

1,000万円貯めることを目標にして、家計をやりくりして出費を抑えている人は、買い物に対して慎重です。でも、それはむやみに我慢しているということではありません。彼らが慎重に検討するのは、「値段VS満足度」のつり合い。値段に見合う、ときには"お値段以上"の満足度があると思えるものは、思い切った買い物をします。

その結果、持っているものの数は少ないのですが、どれも品質は申し分なし。フランスのブランド、JMウエストンの靴をメンテナンスしながら20年履き続けている人、「ジル・サンダーのジャケットが1着あれば、どこに出かけてもきちんと見える」という人、北欧のブランド食器を普段使いにして、家で心豊かな食事をしている人……など。

心から満足できるものを手にすることで、それほど欲しくもないものを"なんとなく"買うことがなくなります。値段で妥協しない、本当に欲しいものは高くても買うことが、かえってムダ買いを防ぐというわけです。


村越克子
フリーランスライター。学習院大学文学部心理学科卒業。編集会社を経て、フリーに。主婦を読者対象とした生活情報誌を中心に執筆。家計のやりくりに奮闘する全国の主婦を取材し、節約に関する記事を数多く手がける。執筆協力に『綱渡り生活から抜けられない人のための絶対! 貯める方法』永岡書店など。