第3のポイントは、企業の中国戦略の見直しです。今回のコロナ危機では、中国に過度に依存している日本経済の危うさが浮き彫りになりました。問題となったマスク不足も、その最大の原因は国内のマスク供給の8割を中国からの輸入に頼っていたことでした。医療用マスクの素材となる不織布や医療ガウン、防護服なども、その多くを中国に依存しています。

中国の問題は別の機会に詳しく述べたいと思いますが、日本企業はこれまで中国の安い人件費などから続々と中国に進出し、医療用に限らず衣料品や自動車部品など幅広い分野で製品や部品を生産し日本に輸入してきました。しかしその結果、過度に中国に依存する経済構造になってしまっていたのです。そのため今回マスクだけではなく、必要な部品が届かないと言った事態がさまざまなところで起きていました。

このような状態は「産業の安全保障」の観点から見直すべきです。現在、米国はコロナ感染拡大について、中国の初期対応や情報隠蔽などで批判を強めており、米中の対立が激しくなっています。こうした国際情勢からも、日本企業が中国戦略を見直し、安全保障の視点をもっと取り入れることが迫られることは間違いありません。

また、一つの国に事業を集中しすぎることはリスク管理の観点からも望ましくありません。実際、すでにコロナ以前から米中貿易戦争が起きたことをきっかけに、一部の製品や部品の生産を中国から国内に戻したり東南アジアなどに移転したりする動きが始まっています。

ただそうは言っても、生産拠点を移転したり調達先を変えたりするのはコスト増になりますし、そう簡単なことではないでしょう。企業にとって難題ではありますが、しかし逆にリスクを回避または分散する体質を作り上げるという意味では、むしろチャンスと捉えることができます。「新冷戦」の時代に突入するのに対応して、新たなグローバル戦略を構築することは日本や欧米企業にとって共通の課題であり、そこで先行すれば国際競争力を強化することにつながるはずです。

「課題にこそニーズ」 - ピンチをチャンスに変えよう

以上の3つの点は、これからの日本経済と企業にとって課題となるものです。政府は第1次、第2次の補正予算でこれらの対策も盛り込んではいますが、まだ十分ではありません。従来の景気対策とは違った長期的な視点に基づいて、もっと支援を強化すべきです。

以前、ある経営者に取材したとき「課題にこそニーズがある」という言葉が印象的だったことを思い出します。「課題に取り組む」というと受け身的なイメージがありますが、実は課題があるところに新しいニーズがあると言うのです。「課題に飛び込んでニーズをいち早くつかむ。そうすれば他社に先んじてビジネスチャンスを広げることができる」と、その経営者は語っていました。

今まさに、新しい生活様式への対応や国際戦略の見直しなど課題は山積ですが、それに積極的に取り組むことで、むしろ新しいチャンスが生まれるかもしれないのです。

「ピンチをチャンスに変える」――。これがコロナ後のキーワードであり、私たちは新しい日本経済の姿を作り上げる力を持っていると確信しています。日本の底力に自信を持って、このコロナ禍に打ち克ちましょう!