したがって経済が本格復活するまでの間、政府の経済対策が果たす役割は大きなものがあります。政府は4月に成立した補正予算(第1次補正)に続いて、27日には第2次補正予算案を決定しました。事業規模は総額117兆円、このうち一般会計の財政支出は31.9兆円で、補正予算としては過去最大。1次と2次を合わせた事業規模は234兆円に達し「空前絶後の規模」(安倍晋三首相)となりました。

2次補正では、新たに医療現場で働く人たちへの支援金、飲食店などの家賃補助、雇用調整助成金の支給額引き上げ、従業員が直接申請し支給できる給付金の創設などが新たに盛り込まれ、このほか持続化給付金の追加拡充、企業の資金繰りや財政基盤安定のための無利子無担保融資などを拡充させるとしています。 

  • 第2次補正予算の主な内容

確かに1次、2次を合わせると、これほどの経済対策はかつてない規模です。内容もメニューとしてもかなり充実していると言えます。ただそれでも本当に苦境に陥っている人や企業を支援するにはまだ十分とは言えません。それに手続きが複雑だったり支給までに時間がかかったりするなどの問題点があります。これは、例の10万円の現金給付で批判されていますが、他の給付金などでも指摘されています。また給付金や融資制度ごとに申し込みの役所や金融機関が別々でわかりにくいという声も聞かれます。

今の最優先課題は、今の厳しい状況の中で中小企業や個人事業主の経営と雇用を何としても守ることです。それは時間との勝負でもあるのですから、まだまだ改善すべき点が多いと感じます。 そのうえで、景気全体を回復させていく戦略を明確にすべきです。ここで課題となるポイントを3つほど挙げておきたいと思います。

「新しい生活様式」への対応など3つの課題

第1は、従来の経済危機や不況では消費を喚起させ企業活動を活発化させることによって景気を回復させてきましたが、今回はその手法がとりにくいということです。つまりコロナの感染拡大防止を大前提としているため、一気に消費を刺激するような対策をとるわけにはいかないのです。感染拡大をできるだけ防ぎながら、同時に経済活動の水準を徐々に引き上げていって景気を回復させるというきめの細かい対応が求められます。だからこそ、弱い立場の企業や個人を守ることが最優先されるべきなのです。

第2は、「新しい生活様式」への対応です。非常事態宣言の下で「Stay home」やテレワークなど「新しい生活様式への移行」が呼びかけられましたが、今後の経済活動においても継続されるべきテーマです。

人材紹介・派遣のパーソルグループのパーソル総合研究所の調査によると「コロナ禍が収束した後もテレワークを続けたい」と答えた人が27.4%、「やや続けたい」が25.8%で、合計すると継続意向を表明した人は53.2%に達しました。特に20代と30代では6割を超えています。この調査は4月上旬時点のものですので、現在ではその割合はもっと増えている可能性があるでしょう。

テレワークによって通勤地獄を味わう毎日から解放されることはサラリーマンにとって歓迎すべき変化ですし、「仕事がはかどる」「リモートでの会議のほうが濃い内容の議論ができる」などの感想も聞かれます。もちろんテレワークにはまだ解決すべき問題点などがありますが、それらを解決・改善していけばまだまだ拡大の余地がありそうです。テレワークの拡大によってIT技術やソフトの開発などが広がる可能性もあります。

  • 新型コロナウイルスが収束した後も、テレワークを続けたいと考えている人は5割以上

テレワークだけではなく、医療や教育、エンターテインメントなど幅広い分野でオンライン化が進み、その関連ビジネスの成長が見込まれます。またオンライン化は、東京一極集中の是正と地方分散のチャンスかもしれません。そうなれば、日本経済にとってかねてからの課題である地方活性化につながることも期待できます。

さらにネット通販の拡大、買い物での現金決済からキャッシュレス化の普及などが一段と進むことになるでしょう。今回のコロナ禍を機に、企業内の決裁や契約などでハンコを廃止して電子化に移行する動きも見られます。 これらはITの技術開発やIT産業の一段の成長を後押しし、物流・宅配産業や小売・サービスなど幅広い分野にも革新の波を広げる効果があります。「新しい生活様式」は模索が続くでしょうが、それは同時に日本経済に新たな可能性をもたらすかもしれないと前向きにとらえる視点も必要ではないかと思います。