政府は東京都など7都府県を対象とする緊急事態宣言を発令し、コロナウイルスとの戦いは新たな段階に入りました。この1カ月が勝負です。しかし緊急事態宣言の発令後、7都府県はじめ全国の感染者数は一段と増え続け、その増加ペースは加速しています。緊急事態宣言の効果が出てくるのは約2週間後であり、それまでは感染者数は増え続ける可能性が極めて大です。その間に何としても医療崩壊を防ぐとともに、約2週間後に感染者が減少に転じることを実現しなければなりません。

そのためには、人と人との接触を最大限に減らすことがどうしても必要です。キーワードは「接触8割減」です。「8割減」という数字は、政府や東京都のクラスター対策班のメンバーである北海道大学の西浦博教授が数理モデルを使って今後の感染者の予測などを導き出したもので、多くの専門家の共通認識となっています。

西浦教授の分析によると、「接触8割減」を実行すれば新規感染者数は急速に減少し始め、15日程度で感染拡大を抑制できるレベルにまで下がるそうです。感染が減少したことを確認できるのは、そのさらに約2週間後、つまりちょうど緊急事態宣言の期限がくる1カ月後ということになります。

しかし接触7割減にとどまった場合、感染拡大抑制レベルまで感染者数が減るのに34日間程度かかります。感染減少が確認できるのはそのさらに約2週間後、つまり約50日後ということになり、緊急事態宣言の期間内には感染減少を確認できないことになります。そうなれば緊急事態宣言を延長しなければならない可能性が高くなります。

また当面、4割減から始めて6割減、8割減と段階的に進めて2週間後に8割減にした場合、感染拡大抑制レベルまで下がるのに39日間程度かかり、感染減少を確認できるまでに2カ月程度を要するそうです(日本経済新聞より)。

しかし人との接触を8割減らすには相当の努力が必要です。東京都などが特定の業種や施設に対し休業要請を実施したのも、そのためです。多くの人が危機感を持って行動を変えることが不可欠なのです。そして緊急事態宣言の対象となった7都府県だけでなく、全国すべての地域で緊急事態宣言に準じた対応をとることが求められます。

「可能かどうか」ではなく「可能にする」

実際、緊急事態宣言が発令されてからは、都内の繁華街ではテレビの映像を見る限り、人出は明らかに減っていますが、「接触8割減」を実現するにはまだ不十分です。

しかし残念ながら、まだ危機意識が薄いと感じざるをえない人たちの行動が見受けられます。友達と飲み会をやったりカラオケに行ったりする人はまだいるようで、そのような中から感染者が出ている例が後を絶ちません。

東京都の休業要請で居酒屋の酒類提供が午後7時までとなったため「早い時間から飲みに来た」という人や、家族で近所の商店街に買い物に出かけて商店街が混んでいる様子が放送されていました。私たち一人一人が自覚と危機感を持ってこうした行動を控え、外出自粛をもっと徹底する必要があります。

「8割減」を達成するためのもう1つのカギは出勤をもっと減らすことです。各企業は「現在より在宅勤務を少しずつ増やす」という発想ではなく、業務遂行と人員配置を抜本的に見直して在宅勤務率を飛躍的に高める努力が求められます。

逆に、人との接触8割減が達成できなければ、前述の試算のように感染拡大抑制が長引き、かえって自粛生活が長引き経済的損失も大きくなってしまいます。最悪の場合は中国や欧米のような医療崩壊を起こし、救える命も救えなくなるという事態に至る恐れがあります。

ですから、何としてもそうならないように、すべての人が「8割減」を実現するために行動することが求められています。

テレビのあるニュース番組でキャスターが政府専門家会議の尾身茂副会長に「8割減は可能なんでしょうか?」と聞いていました。しかし問題のポイントは「可能かどうか」ではなく、可能にしなければならないということなのです。尾身氏が「そのために全員が努力すること。歴史的にも理論的にもこれ(接触8割減)をやれば間違いなく感染は下がる」と強調していたのが印象的でした。 今は、こうした専門家が示すデータと見解を信頼して、すべての人が「8割減」を達成するために力を合わせるときなのです。