今回の東京五輪で日本人選手の大活躍によって私たちも元気づけられたことは、前回の「東京五輪でメダル過去最高~「あきらめない気持ち」で経済復活へ(上)」で述べたとおりです。選手たちが見せたような、あきらめない気持ちを多くの人たちが共有して、コロナ禍を乗り越え日本経済を復活させるパワーにつなげていきたいものです。

海外メディアや選手、「おもてなし」を称賛~日本の魅力を発信

日本経済復活の観点から言うと、今回の大会を通じて日本の魅力を改めて世界に発信できたことも重要なポイントです。

大会の開幕当初は、一部の選手から感染防止のための行動制限や選手村の設備に不満が出ているなどと報道されていました。しかし日を経るにつれて、数多くの選手が大会ボランティアへの感謝や称賛のコメントをSNSに投稿するようになっていったことが印象的でした。

海外メディアも「非常に困難な状況にもかかわらず東京は本当に素晴らしい開催地だった」「変わることのない礼儀正しさには人々を生き返らせる効果がある」など、日本のおもてなしを称賛しています。

コンビニに関心「日本文化を代表」「五輪を支える」

競技以外では、日本のコンビニエンスストアに興味を持った記者が多かったようで、コンビニでアイスやおにぎりなどを買って楽しんだ様子をツイッターなどに投稿していました。街中への自由な外出ができない海外メディアの記者にとって、選手村やホテルの近くにあるコンビニは貴重な存在となったわけですが、その豊富な品揃えとおいしさ、そして"日本らしさ"にハマったようです。

中でもニューヨークタイムズは、弁当やフライドチキンなど何枚もの写真付きで長文の記事を掲載していました。記事では記者がコンビニで買った数十種類の食品を列挙するとともに、アメリカンドックに付いているソースの小袋について「一度つまんだだけて、まるでシンクロしている水泳選手のようにケチャップとマスタードが同時に出てくる」と驚いた様子で紹介しています。日本人にとっては日常の当たり前のことが、外国人にとっては新鮮に映り、日本らしさを感じられるのでしょう。同記事では「コンビニは日本文化を代表するもの」と評しています。

このように、行動制限などのため非常に限られた範囲ではあったものの、来日した人たちに日本への認識を深めてもらい、日本の魅力を海外に発信できたことは間違いないでしょう。このことがすぐに経済効果に結びつくわけではありませんが、中長期的にはじわじわとプラス効果を発揮し、日本経済を支える要素になることが期待されます。

コロナ禍でも「日本ブーム」は続いている~化粧品輸出は34%増

ところで、2013年に東京五輪が決定したことが一つのきっかけとなって日本を訪れる外国人が急増し、日本のすぐれた製品や技術から、食や文化、歴史、自然など、さらには「おもてなし」やマナーなどに至るまで、日本は称賛されるようになりました。それは「日本ブーム」と言えるものでした。それがコロナ禍で訪日外国人はほぼゼロとなり、ブームは消え去ったかのように見えます。

しかし実は、コロナ禍でも日本ブームは続いていたのです。それを裏付けるデータがあります。

その一つは化粧品の輸出です。コロナ禍前、日本を訪れた外国人がデパートやドラッグストアで日本製の化粧品を購入する光景がよく見られたように、中国やアジアを中心に日本製の化粧品への人気が高まりました。その結果、化粧品の輸出額は年々増加し、コロナ禍前の2019年には7年連続で過去最高を記録していました。

ではコロナ禍の2020年はどうだったかというと、前年比14.1%増の6,824億円となり、過去最高記録を8年連続に延ばしていました。さらに今年の1-6月は前年同期比で34.3%増の大幅増となっています。 

  • 化粧品の輸出額はコロナ禍でも増え続けている

コロナ禍でも日本製化粧品への人気は衰えるどころか、ますます高まっているわけです。日本へ行けない代わりに、ネット通販で日本製の化粧品を注文する人も増えているようです。日本の化粧品は以前は輸出は少なく内需型産業とされてきましたが、今や輸出産業の一角を担う存在になっていると言って差し支えないでしょう。

和牛、果物、日本酒……日本の食材が人気

同じように、日本の食材への人気も続いています。2020年の農林水産物・食品の輸出額は前年比8.1%増の9,860億円で、やはり8年連続過去最高。今年1-6月は31.6%増となっています。このぺースでいけば、今年の輸出額は1兆円を大きく超えることは確実で、金額からいえば「輸出産業」と言ってもいい規模です。

  • 農林水産物・食品の輸出も増え続けている

中でも増加が大幅なのは、海外でも「和牛」として高い人気を集める牛肉で、2021年1-6月期は前年同期の約2.2倍に達しています。アルコール飲料(特に日本酒、ウイスキー)、果物(特にりんご、いちご)、緑茶、ホタテ貝、ぶり、真珠などの増加が目立っています。

  • 輸出増加が大きい主な品目(2021年1-6月)

アルコール飲料の輸出増加も目覚ましいものがあります。従来のアルコール飲料の輸出は日本人の海外居住者や旅行者向けが中心でしたが、今では外国人向けが主力です。日本食ブームが広がるにつれて日本酒の需要が伸びていますが、日本食でなくても白ワインの代わりに日本酒を飲むといった需要も増えているそうです。日本製のウイスキーやワインがヨーロッパの品評会で表彰されるなど高い評価を受けるようにもなっています。いわば、本場で称賛されているわけで、まさに日本ブームの代表例と言っていいでしょう。

日本国内では日本酒の需要が減少傾向にあり、厳しい経営が続いている中小の酒蔵も少なくありません。しかしこうした現象は、日本酒業界にとって輸出という新たな可能性を生み出していると言えます。

農産物の輸出増加も同じことが言えます。後継者難などに直面している日本の農業はこれまで「輸出で稼ぐ」という発想はあまりなかったのが実情です。しかし最近の輸出増加は日本の農業を変えるインパクトを持っています。若い人たちや企業などももっと農業に参入して、さらに品質の良い農産物生産のための技術開発やIT化を進めれば、日本の農業を成長産業に発展させることは十分に可能だと思います。

"過度な悲観論"に陥らず、前向きな側面にも注目を

こうして農産物や化粧品に見られるように、海外の日本ブームは日本の内需型産業がグローバル需要を取り込んで成長できる可能性を広げているのです。日本ブームが続くことは、日本がコロナ禍を乗り越えて経済復活を遂げていくうえで心強い援軍です。

今回の東京五輪では開催前からさまざまな問題が相次いで批判が集まりましたし、コロナ禍への政府の対応も含めてネガティブな意見が増えています。日本経済の先行きについても全体としてみれば厳しいのは事実です。

しかし悲観的な面ばかりではありません。東京五輪を通じて日本の魅力が海外から改めて注目されたことは、日本ブームをさらに確かなものにする機会となりました。日本経済を見ても、この連載でこれまで何度か強調してきたように、コロナ禍でも強さを発揮している企業は数多くあります。こうした前向きな側面はあまりメディアでは取り上げられず、見過ごされているのが現状です。そのため残念ながら日本国内では悲観論、というより‟過度な悲観論"が支配的となっています。

しかし五輪で活躍した選手たちはトレーニングの過程で力不足を感じたり、くじけそうになったことがあったのではないかと想像しますが、それでも自分の力を信じて挑戦し続けたからこそ、メダルを手にすることができたのだろうと強く思います。あるいは敗れても、見る人の心を打ったのです。

私たちも「もう日本はダメだ」などとあきらめるのではなく、前述のような前向きな面にも目を向けて「オール・ニッポン」の力でコロナ禍を乗り越え、日本経済を復活させていきたいものです。