「人生100年時代」と言われる現代。20代でも早いうちから資産形成を進めることが求められています。一方で、どのように投資・資産運用の目利き力を磨いていけばいいのか、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

この連載では、20代の頃から仮想通貨や海外不動産などに投資をし、現在はインドネシアのバリ島でデベロッパー事業を、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイザーも行っている中島宏明氏が、投資・資産運用にまつわる知識や実体験、ノウハウ、業界で面白い取り組みをしている人をご紹介します。

今回は前編に引き続き、M&A仲介・アドバイザー、財務コンサルティング、M&Aスクールなど、M&A領域の総合コンサルティングを手掛けるBish株式会社の齋藤吉秀氏にお話を伺いました。

齋藤吉秀氏

Bish株式会社 代表取締役 17歳より単身オーストラリアに留学。学生時代には、現地にて日本化粧品の個人輸入販売の他、アルバイトでバーテンダーとして働く。帰国後、SBIホールディングス(株)に入社。同社にてM&Aプロジェクトに従事し、買収後は統合作業のため、買収先のドイツ法人に1年間出向。出向解除後は、(株)SBI証券 経営企画部にて子会社の企画・立ち上げや業務効率化プロジェクト等に従事。グループ内異動で地方銀行とのRM及び地方銀行などに向けた新たなアプリ事業の企画推進を行う。その後、LINE(株)に転職し、AI(人工知能)事業企画チームにてアライアンス担当としてパートナープログラムの立ち上げ・運営の他、グループ内外でのAI導入促進に従事。2020年10月にLINE(株) を退職し、Bish(株)を創業。2022年には記帳代行BPOや補助金申請代行なども行う(株)MillionHeartを自ら買収し代表に就任。新規事業企画・推進及びM&AやDXを中心とした経験とノウハウを活用し、「できない」「仕方ない」をなくすことで一人一人が思いやアイディアの"wish"を実現し活躍する時代を創ることを目指している。

財務で企業価値を上げるには?

――後編では、財務コンサルティングやM&Aスクールについてお聞きしたいと思います。まず財務コンサルティングの方ですが、M&AやIPOという出口戦略を描く際、「会社の価値をどう上げるか」が経営課題になるわけですが、財務で企業価値を上げるためにはどうすれば良いのでしょうか?

齋藤吉秀氏(以下、齋藤氏)氏:とてもシンプルで、「企業価値をどう評価するのか」が答えです。企業価値を算出するアプローチはいろいろとありますが、例えばDCF法ならキャッシュを増やしてキャッシュフローをどうつくるかがポイントになります。「利益を増やして負債を減らす」という、極めてシンプルな話です。

M&Aは、会社の仕組みやキャッシュフローを買うことが主な目的ですから、属人的なスキルや経験にだけに頼らず、仕組み化して利益を出せる体制をつくることが欠かせません。また、財務は地道です。キャッシュフローの改善は時間かかりますから、半年はかけて財務体質を変えていく必要があります。そのため、取り組むなら早めに取り組んでおくのが良いと思います。

――財務体質を鍛えておくことは、M&AするにせよIPOするにせよ、そうでなくても日々の会社経営には欠かせませんね。そんな経営課題を解決するのが、「まるごと財務サービス(社外CFO)」という財務コンサルティングなわけですね。

齋藤氏:はい。M&A仲介・アドバイザーとして多くの経営者の方と接している中で、財務に関するご相談もたくさんいただきます。M&Aという出口戦略を念頭に置いて経営をする場合、企業価値を高めるためにも財務体質の改善は必須です。

「財務担当が社内にいないので、まるごと任せたい」というニーズや、「社内CFOを育成してほしい」というニーズにお応えできるように、まるごと財務サービス(社外CFO)という財務コンサルティングを始めました。経営者の方の財務の悩みや負担をなくし、経営者としての本業に集中していただくことが目的です。

プランによって異なりますが、

隔月~毎月の面談、オンラインベースのご相談、予実管理、事業計画ブラッシュアップ、資金繰り表作成、借入⼀覧表作成、社内CFO候補育成、OJTなどの支援を行なっています。CFOの平均年収は、1,500万円~5,000万円と言われており非常に高額です。さらに、そんな人材を採用するためには、年収の20~30%もの採用コストがかかります。まるごと財務サービス(社外CFO)を導入していただくことで、採用コストはゼロ、大幅に月額コストを抑えて財務のプロを活用することができます。

M&Aアドバイザーを育成するBish M&Aスクール

――「CFOは社内に置きたい」という考えの経営者の方もいらっしゃるでしょうから、外注化(社外CFO)だけでなく社内CFO育成のニーズにも応えられるのが特に良いですね。M&Aスクールも、人材育成や教育の観点からスタートされたのでしょうか?

齋藤氏:そうですね。開講してまだ1年経っていないのですが、FPや税理士、会計事務所職員のような、普段から経営者と接している方はもちろん、買い手企業の経営者の方やM&A業界に転職したいという方も受講されています。

私は、M&A仲介・アドバイザー事業は本業とのシナジー効果が期待できる、“ローリスク&ロングリターン”な新規事業だと考えています。

「経営者+M&A事業」「コンサルタント+M&A事業」「士業+M&A事業」「営業マン+M&A事業」というように、既存事業にM&A事業を加えることで、足し算にも掛け算にもなり得ます。新規事業の立ち上げというと数百万円~数千万円の予算が必要になりますが、M&A事業であれば「低コスト&ローリスク」で開始できます。M&A案件での関わり方によっては、顧問料やコンサルティング料などの「ロングリターン」を得ることも可能です。

M&Aスクールのカリキュラムは、

・業界サマリー
・スモールM&Aが身近になる理由
・アドバイザーに求められる資質
・M&Aプロセス全体
・必須資料、契約書
・交渉ポイント
・ソーシング手法
・スモールM&Aの実務
・企業、事業の分析
・企業価値評価
・M&Aに適するビジネス
・バリューアップ手法
・PMIの重要性
・他社との連携、協業方法
・超実践M&A WORK(ノンネームシート/IM作成、事業分析&企業価値評価、交渉ロープレ)

となっており、すべてのコンテンツにオンラインでアクセス可能です。30本以上の動画コンテンツ・PDFでM&Aについて学ぶことができます。今はQ&Aを充実させており、e-ラーニングサイトも構築中です。どれくらい受講して理解できているかを管理できる仕組みもつくっています。

このM&Aスクールを始めたことで、「M&A事業部の立ち上げ支援」も行うようになりました。まずは、私がM&A事業部を立ち上げる企業様の名刺を持ってM&A事業に関わり、弊社と業務提携して案件化していきます。その次のステップでは、だれか担当者をつけていただいてOJT+Bish M&Aスクールの動画コンテンツで学んでいただき、共同仲介という形で案件を進めます。最後のステップでは、担当者の方にすべてのプロセスをできるようになっていただきます。

Bish M&AスクールやM&A事業部の立ち上げ支援を通じて、弊社としてもアライアンス先を増やしていきたいです。ネットワークを広げることで、M&A案件の量も質も上がると考えています。量と質が上がれば、おのずとマッチング率も上がります。

もちろん、M&A仲介・アドバイザー会社としての競合会社はあるのですが、競争よりも共創と考えて、一緒にM&A案件に取り組んでいければと思います。まだM&A経験のない人にも、もっとこの業界に入ってきてほしいですね。今後は、M&Aに関するセミナーにも力を入れていこうと考えているところです。良い会社や良い事業を次世代に引き継いで経済・社会を回していく、循環させていくことはとても重要だと思います。それを実現する手段の一つがM&Aであり、このM&Aの可能性をもっと多くの人に知っていただければと思います。