「東京は物価が高いので、生活費が高い」または、「地方は物価が安いので、生活費が東京に比べてあまりかからない」と世間でよく言われていることは、本当なのでしょうか。

連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京から地方へ移り住んで感じたことを交えながらお伝えいたします。

地方にも広がるカーシェア

私は現在、自動車を所有していません。東京から地方に移り住みましたが、現在の自宅は、駅から徒歩10分圏内にあり、また、コンビニエンスストアやスーパー、喫茶店、レストランなどが自宅の近くにあるため、自動車を所有していなくても、大きな不便は感じていません。しかし、少し遠くに足を伸ばして温泉に行きたいときや、トイレットペーパーなど大きくてかさばるような日用品を購入したいときは、自動車があれば便利だろうと思います。

そんなふうに思っていた矢先、自宅から徒歩5分くらいの場所にある駐車場に、カーシェア用の自動車を見つけました。自動車の購入も検討していましたが、その前に、1年間カーシェアを利用してどれくらいの費用がかかるのか試してみることにしました。

カーシェアを利用してみると、周りの駐車場にある「カーシェアあります」の看板や旗が気になり始め、駅周辺や商業施設周りにある複数の駐車場にカーシェア用の自動車が止まっていることに気づきました。カーシェア会社は、以前は首都圏を拠点にサービスを展開していたようですが、現在は地方にも広がっているようです。

そこで、今回は、カーシェアについて調べてみました。

「カーシェア」とは

そもそも、「カーシェア(もしくは、カーシェアリング)」とは何でしょうか。一般に登録を行った複数の会員間で、特定の自動車を共同利用するサービスのことです。サービスを提供する会社に事前に予約をすれば、駐車場などに設置している自動車に乗れます。予約はスマートフォンやパソコンで簡単に予約ができます。

料金設定は、「月額基本料金+利用料金」が基本となっており、月額基本料金は、利用しない月も支払わなければなりません。また、月額基本料金がないサービスもありますが、この場合は、月額基本料金があるサービスよりも利用料金が高く設定されている場合が多いです。

15分~30分単位など短時間から利用でき、利用料金も、200円前後(車種により異なる)からあります。レンタカーやマイカーとは違い、ガソリン代や自動車保険料は、利用料金に含まれています。

カーシェアの自動車数と会員数

表1によると、2010年から2018年までカーシェアの自動車数も会員数も右肩上がりに伸びており、自動車数においては、2010年では1,200台程度でしたが、2017年には20,000台を突破し、会員数も2010年では15,000人程度でしたが、2017年には100万人を超えました。現在2018年3月時点では、自動車数29,208台、会員数1,320,794人となり、今後もますます増加していくことが予想されます。

  • (表1)カーシェア自動車台数と会員数
    ※出典「わが国のカーシェアリング車両台数と会員数の推移」(公益財団法人 交通エコロジー・モビリティ財団)
    ※公益財団法人 交通エコロジー・モビリティ財団調べ。
    ※2010年から2014年までは1月調べ、2015年からは3月調べ。

終わりに

今回は、カーシェアについて調べてみました。カーシェアの利用料金のプランにおいて、15分などの短時間単位での料金プランの場合は、距離に応じた「距離料金」を無料にしているプランが主流です。しかし、6時間や12時間、24時間などの長時間のプランになると走行距離に応じて「距離料金」が加算される場合が多いので、長時間利用になる場合は、レンタカーとどちらが費用を抑えられるか比較した方が良いでしょう。

また、料金の設定は、カーシェア会社それぞれ異なりますので、会社ごとの料金設定を比較して、利用頻度や利用する距離を想定してからカーシェア会社を選択した方が良いでしょう。月額基本料金を利用料金に充当できるサービスや、予約時間ではなく利用時間のみ課金されるサービス(例:60分利用で予約したが、50分間の利用で返却した場合は、50分間のみ課金される)を行っているカーシェア会社もあります。

カーシェアを利用してみると、いろいろな車種の自動車に乗ることができるので、「この車は、助手席に収納スペースが多い」「この車は、運転席に肘置き(アームレスト)があるので運転が楽」など、自動車ごとの特色に気づきます。自動車を購入する際に、自動車の機能として何を希望するのか、明確になると思いますので、購入前にカーシェアを利用していろいろな車種の自動車を試して乗ってみるという考え方も良いのではないでしょうか。

「地方暮らしでは、自動車の所有は必要」とよく言われますが、自動車の利用頻度が少ないのであれば、所有ではなくカーシェアという選択肢もあるということを、自らカーシェアを利用して感じました。

高鷲佐織(たかわしさおり)

ファイナンシャル・プランナー(CFP 認定者)/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/DCプランナー1級。

資格の学校TACにて、FP講師として、教材の作成・校閲、講義に従事している。過去問分析を通じて学習者が苦手とする分野での、理解しやすい教材作りを心がけて、FP技能検定3級から1級までの教材などの作成・校閲を行っている。また、並行して資産形成や年金などの個人のお金に関する相談を行っている。