トヨタ自動車のコンパクトSUV「ライズ」が2020年1月の登録車販売台数ランキングで第1位を獲得した。ハイブリッドの設定がないクルマがトップに輝くのは、近年では珍しい。2019年11月の発売以来、快走を続けているライズだが、一体どこが支持されているのか。実際に試乗し、販売データを確認しながら、このクルマの魅力を探ってみた。

  • トヨタ「ライズ」

    2020年1月の登録車販売台数ランキングで1位を獲得したトヨタ「ライズ」

非ハイブリッド車が久々のトップ獲得

日本自動車販売協会連合会(自販連)は毎月、軽自動車を除く乗用車(登録車)の販売台数ランキングを発表している。2020年1月のトップに立ったのは、トヨタのコンパクトSUV「ライズ」だった。

ライズは、生産を担当するダイハツ工業「ロッキー」と基本設計が共通となっている。2019年秋の「第46回 東京モーターショー」でダイハツは、「新型コンパクトSUV(市販予定車)」のプレートを掲げ、具体的な車名を公表しない形で新型SUVを展示。モーターショー最終日の翌日となる11月5日に、そのクルマを「ロッキー」として発売した。同日に発売となったのが、トヨタのライズである。

  • ダイハツ「ロッキー」

    「ライズ」と基本設計を共有するダイハツ「ロッキー」

トヨタとダイハツでは販売力に差があるので、ライズが台数ランキングで上位になるのは当然だろう。ライズはデビューした2019年11月、早くも4位にランクインすると、翌月には2位にアップ。そして、令和2年初のランキング(2020年1月)でトップに輝いたのだ。

トヨタは2019年12月5日にライズの受注台数を発表していた。それによると、11月5日の発売から1カ月にあたる12月4日の時点で、受注台数は月販目標の約8倍となる約3万2,000台に達していたという。その勢いが今回、自販連の数字にも現れたのだ。つまりライズは、トヨタの販売上の戦略により、特定の月だけ首位になったわけではないということである。

それにライズは、全てのトヨタ系販売店で買えるクルマなので、各店舗の事情を考えると、ライズを推せばほかの車種が売れなくなる可能性がある。販売店にとっては、利益率の高い上級車種を推し、売りたいと思うはずだから、全ての販売店がライズ推しとはならないはずだ。

そんな状況でも首位に立ってみせたのだから、ライズの販売が好調なのは、クルマそのものの実力と判断していいのではないだろうか。

  • トヨタ「ライズ」

    トヨタ「ライズ」はクルマそのものの実力で台数トップを獲得したものと考えられる

ちなみに、ダイハツはロッキーの受注台数を発表していないものの、自販連のデータからは健闘している様子が伝わってくる。ランキングは2020年1月が21位だったものの、昨年11、12月は16位に入っていた。軽自動車以外のダイハツ車としては好成績といえる。

さらに注目したいのは、ライズのパワートレインが1リッター直列3気筒ターボのガソリンエンジンとCVTの組み合わせだけであり、ハイブリッド車の設定がないことだ。

自販連の統計によれば、2016年1月以降のベストセラーカーはトヨタの「プリウス」「C-HR」「アクア」「シエンタ」「カローラ」および日産自動車「ノート」の6台。全てハイブリッド車をラインアップに持つ車種である。軽自動車以外なら、ハイブリッド車を考えるのは当然という状況になっているのだ。

そんな状況が続いてきただけに、ライズの首位には驚いた。このクルマの魅力はどのあたりにあるのか、広報車両を借りて東京から神奈川や千葉などを巡りながら、考えてみた。

  • トヨタ「ライズ」

    ハイブリッド車なしで台数トップに輝いたトヨタ「ライズ」。その魅力とは

車両感覚のつかみやすさに感心

スタイリングは写真でお分かりのとおり、ゴツゴツしている。フロントは昨年モデルチェンジしたSUVの「RAV4」に似ているが、全幅に対してグリルが大きく、ヘッドランプやフォグランプは左右端にある。リアについても、横長のコンビランプを黒いバーでつなぐことで幅広感を強調している。前後バンパーのコの字型のアクセントも、左右いっぱいに張り出している。実寸よりもワイドに見えるデザインだ。

一方でボディサイドの抑揚が少ないのは、全幅を5ナンバー枠内に収めたためもあっただろう。さらに、フロントフードからサイドウインドーにかけてのラインは水平に近く、リアドア後端で控えめにキックアップしていることを除けば、落ち着いた造形である。

つまりフロント/リアとサイドのデザインの違いが大きい。近年のカーデザインは、ボディ全体での一体感を出すべく、フロントからサイド、サイドからリアへと面を連続させることが多いが、ライズはフロント・サイド・リアをはっきり分けている。

  • トヨタ「ライズ」

    「RAV4」に似ている「ライズ」のフロント

インテリアもエアコンのルーバー周辺やドアのグリップ、センターコンソール周辺など、エッジを強調した造形としている。ベースグレード以外はこれらの部分がシルバー仕上げとなっており、前席には赤いパイピングを施しているので、かなり若向きという印象も受ける。

  • トヨタ「ライズ」

    インテリアは若者向けといったイメージだ

ところが、走り出すとそれとは別の印象を受けた。まず感じたのは、車両感覚のつかみやすさだ。全長3,995mm、全幅1,695mmというコンパクトな外寸でありながら、全高は1,620mmと高め。おかげで運転席は乗り降りがしやすく見晴らしが良い。しかも、インパネの向こうに広がるフロントフードは四角形に近く、サイドの張り出しは少ないので、抜群の見切りのしやすさなのだ。

パワートレインも親しみやすい。1リッター3気筒ターボエンジンは、アクセルを踏み込んだ直後から十分なトルクを発揮してくれるので、先にエンジンの回転だけが上がるCVTの悪癖はなく、あらゆるシーンで必要な力を的確に取り出せる。この素直さに貢献しているのが、前輪駆動では1tを下回る軽いボディだ。車体が軽いから、限られた力でもリニアな加速が手に入る。

  • トヨタ「ライズ」

    乗ってみると見切りの良さに驚いた

データから見える意外な(?)支持層

驚いたのは、乗り心地とハンドリングのバランスが高次元だったことだ。特に中間グレードの「G」は、ホイール/タイヤが最上級グレード「Z」の17インチから16インチになるためもあって、当たりが柔らかい。それでいて、大きめのショックはしっとりと吸収する。軽量ボディがしっかりしたボディ剛性を備えていることが確認できた。

  • トヨタ「ライズ」

    16インチのタイヤを履く「G」グレード

それでいて、ハンドリングでは軽量ボディの良さが前面に出ていて、キビキビと向きを変えてくれる。しっとり動くサスペンションは信頼できるグリップを発揮してくれるので、安心してそのキビキビ感が味わえる。

ではこのライズ、どんな人が買っているのか。試乗後にトヨタ自動車広報部に聞いてみると、個人ユーザーの男女比は約7割が男性で、年齢では10~20歳台が約1割、30代が約1割、40代が約2割、50代以上が約6割とのことだった。ボディカラーではホワイト、ブラック、シルバーの順で人気だという。

個人的に印象的だったのは、コンパクトな車種でありながら男性ユーザーが7割に上り、50代以上が6割を占めることだ。

ライズは5ナンバーにこだわったことが話題を集めているが、5ナンバーであることを重視するのはベテランドライバーのほうが多いと思っている。というのも、現在の自動車税は排気量で区分しているが、昔は3ナンバーと5ナンバーという区分もあり、1984年の数字を紹介すると、同じ2リッターでも5ナンバーは3万9,500円、3ナンバーは8万1,500円と倍以上の差があったからだ。

しかも、ライズのデザインはコンパクトでありながら可愛らしさとは無縁で、全長4m未満の5ナンバーでありながら大きく見える。このあたりは男性ドライバーが好みそうだ。そして、前述したように乗り降りのしやすさ、車両感覚のつかみやすさ、扱いやすいパワートレインは、若い頃に比べて基礎体力や反射神経などが低下してきたと自覚するドライバーにも向いている。

  • トヨタ「ライズ」

    コンパクトでありながら男性が好みそうなデザインのトヨタ「ライズ」

確かに若向きのエクステリアやインテリアは、運転免許取りたての若者にもふさわしい。しかし筆者は、ここまでベテランドライバーに適した素性を持ち、実際にそういうユーザーから支持されているのだから、自分を含め、そういう人たちにふさわしいデザインを与えてほしいとも思った。そういうクルマが成熟したクルマ社会を育んでくれると信じているからだ。

著者情報:森口将之(モリグチ・マサユキ)

1962年東京都出身。早稲田大学教育学部を卒業後、出版社編集部を経て、1993年にフリーランス・ジャーナリストとして独立。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員を務める。著書に『これから始まる自動運転 社会はどうなる!?』『MaaS入門 まちづくりのためのスマートモビリティ戦略』など。