発売になったばかりのコンパクトSUVであるダイハツ工業「ロッキー」とトヨタ自動車「ライズ」。日本の道路事情にフィットするサイズ感と100万円台からの価格設定が、今後のヒットを予感させる。その乗り味は、実際のところどうなのか。2台を乗り比べてきた。

  • ダイハツ「ロッキー」とトヨタ「ライズ」

    ダイハツ「ロッキー」(右)とトヨタ「ライズ」(本稿の写真は原アキラが撮影)

小は大を兼ねる

試乗を前に、ロッキー/ライズの開発を担当したダイハツ 車両開発本部 エグゼクティブ・チーフエンジニアの大野宣彦氏から車両概要の説明を受けた。

「ロッキー/ライズは、7月にデビューしたダイハツの軽自動車『タント』に続く、『DNGA』(Daihatsu New Global Architecture)プラットフォームの第2弾であり、トヨタのブランドとしては初めてのDNGAモデルになります。DNGAが目指すものは、まず“良品廉価”。基本性能ありきの中で ダイハツらしくSSC(シンプル・スリム・コンパクト)なクルマを開発し、お安く提供したい」

ロッキーの価格は170万5,000円~242万2,200円、ライズの価格は167万9,000円~228万2,200円。ボディサイズは全長3,995mm、全幅1,695mm、全高1,620mmだ。これらの数字からも、DNGAの効果を感じ取れる。ダイハツがDNGAで掲げる2つ目の目標は“最小単位を極める”だ。大野氏によれば、「これは“小は大を兼ねる”という逆転の発想で、軽自動車を起点とし、だんだんと大きなクルマに取り組んでいくという考え方です」とのこと。

  • ダイハツ「ロッキー」とトヨタ「ライズ」

    DNGA第2弾のクルマとなった「ロッキー」(右)。「ライズ」(左)はトヨタブランドで初のDNGAモデルとなる

DNGAで目指す3つ目のポイントは“先進技術をみんなのものに”で、これは「安心、安全、環境、コネクトという先進技術を、ユーザー視点で必要なものから搭載する」ことを意味する。

日本のユーザーにフィットするクルマを

最初に乗ったのは、ロッキーの「X」というグレード。外装色は、同社の往年の名車「コンパーノ」の名を冠した「コンパーノレッド」だった。これが、ロッキーのイチ推しカラーだ。エクステリアでは、ブラックの樹脂モール付きフェンダーや大径タイヤがSUVであることを主張しているものの、ボディサイズはコンパクト。ゴツさや土臭さからは程遠く、誰でもすぐになじむことができるデザインだ。

  • ダイハツ「ロッキー」

    「ロッキー」の「X」グレードは2WD(前輪駆動)が184万8,000円、4WDが208万6,700円

コックピットに乗り込むと、665mmというちょっとだけ高いヒップポイントとスクエアなボディによる視界の良さが気持ちいい。後席は分割可倒式で、レッグルームと頭上空間は十分だ。容量369Lの荷室は、床を跳ね上げると買い物袋2つ分(80L)の円形で深いアンダーラゲージが出現する。観葉植物など、天井に届くような背の高い荷物を載せる際にも重宝しそうだ。

  • ダイハツ「ロッキー」

    荷室の床下には深いスペースが

パワートレインは最高出力72kW(98PS)、最大トルク140Nmを発生する排気量1リッターの直列3気筒ガソリンターボエンジンに、ロックアップ機構付きCVTを組み合わせる。1トンを切る軽量な車体(970キロ)のおかげで、アクセルペダルの踏み込み量と車速のノリがリンクしていて、通常の運転領域で痛痒感は全くない。

  • ダイハツ「ロッキー」

    SUVで1.0リッターと聞くとパワー不足が心配になるが、通常の運転領域では必要十分だ

フル加速時はエンジン音がかなり高まるものの、巡航中は回転数が低く保たれるので(時速100キロで2,000rpmを少し超える程度)とても静かだし、16インチタイヤは路面の荒れたところでも良好な乗り心地をキープしてくれる。4.9mという最小回転半径は狭い日本の道路にぴったりで、年齢や性別を問わず、安心してドライブが楽しめそうだ。

  • ダイハツ「ロッキー」

    コンパクトなサイズ感で小回りも利く「ロッキー」は、狭い日本の道路でも安心してドライブが楽しめそうだ

もう1台のライズは、ロッキーよりもワンランク上の「G」というグレード。タイヤは一回り大きな17インチで、ボディカラーはターコイズブルーとブラックルーフの2トーン仕様だった。

  • トヨタ「ライズ」

    「ライズ」の「G」グレードは2WD(前輪駆動)が189万5,000円、4WDが213万3,700円

まずは顔つきだが、グリルが台形になっていて、ミニ「RAV-4」とでも呼べそうな印象を受ける。ロッキーとは違う、トヨタ車らしいデザインだ。インテリアのデザインや素材、パワートレインなどについてはロッキーとほぼ変わりがない。

  • ダイハツ「ロッキー」とトヨタ「ライズ」

    2台の大きな違いは顔つきだ。「ライズ」には「RAV4」の面影がある

大径の17インチタイヤによる走りはスポーティーな方向にきちんと振ってあり、キビキビとした動きを見せてくれる。それでありながら、特に後席に座った際に顕著な、跳ねるような動きは全く感じられない。上手にチューニングされていることが分かる。

  • トヨタ「ライズ」

    大径タイヤをはいた「G」グレードもキビキビと走った

ステアリングのスイッチで作動する「アダプティブ・クルーズ・コントロール」(ACC、設定速度で自動で加減速し、前にクルマがいれば追従する機能)を試してみると、こちらは全車速で前走車を追従してくれる本格的なタイプだった。完全停止する時は「フットブレーキを使用してください」と警告してくれるのだが、ドライバーが主たる操作役であることを知らせてくれるのは良かった。

ロッキー/ライズが搭載するディスプレイオーディオは、スマートフォンと連携させることができる。操作に慣れれば使い勝手が良いのだが、スマホ利用に不慣れなユーザーには難敵になってしまう可能性もある。

  • ロッキー/ライズのディスプレイオーディオ

    ロッキー/ライズはディスプレイオーディオを標準装備する。スマホ連携機能は便利だが、スマホ自体に不慣れな人は機能をいかしきれないかもしれない

快適な乗り心地の秘密は?

ロッキー/ライズが見せてくれた好ましい乗り味の秘密を教えてくれたのは、ダイハツ 車両開発部 ボディー設計室の谷本光伸主担当員と、シャシ設計室の坂井直樹副主任だ。

「ポイントは『足回りから始めたクルマである』というところです。前後サスペンションの取り付け位置と、それをつなぐ骨格配置を、なるべくスムーズでシンプルな形状にすることに配慮しました。衝突性能は旧モデルと同じですが、ボディ剛性を上げ、結果的に軽量化もできています」

  • ダイハツ「ロッキー」とトヨタ「ライズ」

    「足回りから始めた」ことがロッキー/ライズの乗り味を快適にしているようだ

車両開発の要諦について、谷本氏はこのように解説する。シャシーについては坂井氏の言葉を引用したい。

「シャシーの形状は軽自動車のタントと相似形なのですが、Aセグメントプラットフォームに適したサイズになっています。軽の開発で得られた知見をいかすことで、工程を減らしながら開発することができました。小は大を兼ねる、という言葉が適切かどうか分かりませんが、ダイハツらしく、小さいところから始めたクルマなんです」

  • ダイハツ「ロッキー」とトヨタ「ライズ」

    ロッキー/ライズは軽自動車で培ったダイハツのノウハウが詰まったクルマだ

坂井氏によると、サスペンションの取り付け位置については、2012年の「ムーブ」の頃から追求している操縦安定性を突き詰め、最終的に“素”のジオメトリーを進化させることで、安定した車体姿勢や長距離でも疲れない乗り心地を実現することができたのだという。具体的には、リアサスの動きをボディーがきちんと受け止める位置に設定することで、運動性能と快適な乗り心地のバランスを取ることができたそうだ。このあたりには、直近のタントで得たノウハウも活用されている。

まさに良品廉価という言葉がぴったりのロッキーとライズ。お好みの「顔」で選んで間違いない出来栄えだ。

  • ダイハツ「ロッキー」
  • ダイハツ「ロッキー」
  • ダイハツ「ロッキー」

著者情報:原アキラ(ハラ・アキラ)

1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。