幼少期から熱血ドラマオタクというライター、エッセイストの小林久乃が、テレビドラマでキラッと光る“脇役=バイプレイヤー”にフィーチャーしていく連載『バイプレイヤーの泉』。

第71回は俳優の加藤清史郎さんについて。現在『ドラゴン桜』(TBS系)に出演中の加藤さん。人気絶好調のドラマで彼を見かけたいい大人たちは、こう思っているはずです。「こども店長……大きくなったなあ……」。私もその思いに駆られて、テレビで見る加藤さんについて書くことにしました。

切長の目、顔まわりから首の色っぽライン!!歓喜)

  • 加藤清史郎

誰が東大に合格するのか? 視聴者の間では早くも(勝手に)合格予想が始まっている『ドラゴン桜』。何を今さらと言われそうだけど、まずはあらすじを。

弁護士の桜木健二(阿部寛)と水野直美(長澤まさみ)が、東大合格者を排出して、学校再建するために辿り着いたのは龍海学園高校。そこで桜木が自ら選んだ生徒たち7名を”東大専科“で勉強の徹底指導をしている。東大受験まで半年を切った今、7人の受験生たちを合格に導くことができるのか? そしてその裏にはただ東大受験するだけではない、大人たちの企みがあった……。

2005年に放送された作品も面白かったけれど、今回も例に漏れず見応えがある。日曜21時という放送時間帯が後押しをするのか、大人が見ても高校生の受験勉強法が仕事に通用する内容になっている。視聴者はみんな東大専科の生徒になったつもりで、授業に参加した気分になっているということか。

そんな『ドラゴン桜』で加藤さんが演じているのは、東大専科の天野晃一郎役。東大合格が射程圏内にある優秀な弟と、常に比較をされながら育ってきたため、いつも自信がなさそうにしている。ただ最近はYouTubeで自分の個性をアップしてみたり、ロースピードではあるけれど自分の殻を破りつつある天野くんなのだ。さすが子役から叩き込まれた演技力は素晴らしい……。弟に対して劣等感のある雰囲気を絶妙に醸し出している。

冒頭で大人であれば、こども店長のことを知っているはず、と書いたがその逆で、加藤さんの子役時代を知らない人もいるはず。実は彼、CMやバラエティー番組に引っ張りだこ、CDを発売したこともある人気子役だった。

バラエティで見せた完璧な電話応対は、おとな店長の証

しばらくメディアで彼の姿を見かけないと思っていたら、高校3年間は海外へ留学していたそう。幼い頃から多くの視線と、ギャラにまみれて生活していたら普通の感覚とは縁遠くなってしまうだろう。そんな感覚を埋めるためなのか、顔が知られた日本を離れて、現在は大学生に。

そんな加藤さんが番宣のために『バナナマンのせっかくグルメ!』に出演していた回をたまたま見ていた。

最近のバラエティ番組では主流となった、突然のアポ取り交渉。会社員経験がない演者さんにはちょっとした関門である。謙譲語、尊敬語、丁寧語がごっちゃごちゃになってプチパニックを起こしている様が散見されるほど……。それが加藤さん、現役の19歳とは思えないほど、電話応対が完璧だった。緊張して「どうしよう!」なんて言う姿を想像していただけに、良い意味での期待を裏切られた。これも高校生活で養われた、普通の感覚の賜物なのだろうか。

さらに彼のことをよく見ると、大変良い感じにかっこよく進化している。これは5年後にもっと眼福度を増すに違いない、垢抜けた感じがある。幼少期に大人からチヤホヤされてしまった子役は大人になると「あ~……やっちまった……」みたいな、勘違いタレントになるケースもある中、彼は例外。謙虚さと役者一本でやっていく力強さをバランスよくにじませているではないか。どうかこのまま道を逸れずに進んで欲しい。

さて『ドラゴン桜』で、彼が演じている天野くんは第一シリーズで中尾明慶さんが演じた奥野一郎と重なる部分がある。奥野くんも進学校に通う双子の弟と比較されながら育ち、その悔しさを超えるために東大合格を獲得した。天野くんの進路やいかに?