エンタメライターのスナイパー小林が、テレビドラマでキラッと光る"脇役=バイプレイヤー"にフィーチャーしていく連載『バイプレイヤーの泉』。

第7回は俳優の間宮祥太朗さんのことを書いていきます。現在、朝ドラ『半分、青い』(NHK総合 月~金曜 8:00~)で、主人公・鈴愛(永野芽郁)の夫・森山涼次役として出演中の間宮さん。今までどこに潜んでいたのかと見ているほうを惑わせる、端正な顔立ちに女性視聴者は騒然。でも彼には"ちょっと変わった役"への出演を経てやっと普通の役にたどり着いたという変遷があります。

どんな変遷をたどったのかザックリと振り返りつつ、私が見つけた間宮さんの魅力だと思う"エロさ"についてもまとめてみました。

間宮祥太朗

エキセントリックな役柄に消されたいい男素質は望外

「(鈴愛に向かって)いっそ結婚しませんか? すごく好きなので、結婚しませんか? ずっと一生、一緒にいたいです」

『半分、青い』で涼次こと、りょうちゃんが雨の中で鈴愛に伝えたプロポーズの言葉に地球が揺れた。視聴者の半分以上が"ロンバケ世代"で、この作品の脚本を手がけているのは北川悦吏子氏。私たちは彼女の作る世界観に何度泣かされて、励まされてきただろうか。そんなアラフォー世代が熱視線を送る番組に、りょうちゃんは舞い降りてきた。

鈴愛とのシーンで、りょうちゃんが実は漫画家・楡野鈴愛のファンで次回作を待っているという話をしてきたシーンも印象的。もう鈴愛はマンガの道を諦めたのに……いろんな思いが去来したのか泣いてしまう彼女をそっと抱きしめるりょうちゃんに私の心は興奮に支配された。

もし私が結婚してライター業を引退して主婦になったとしよう。スーパーのパート先でバイトの男の子に「俺、スナイパー小林さんっていう人のコラムを読んでいて、すっごいファンなんですよね。最近、書いていないけれどどうしたのかな」となんて言われて泣き出した私をバイトが抱きしめて、昼顔妻が始まるところまで妄想が広がった。

話をりょうちゃんに戻そう。映画助監督と言いながらほぼ無職、あるのは愛と勢いだけ。そんなダメ男を演じているのが間宮さんである。天然アヒル口と少女マンガに出てきそうな、キラキラした瞳。「え、この人誰?」と女性視聴者は大騒ぎだ。

いや、ちょっと待て。間宮さんは中学生の頃から読モでスタートして、たくさんの作品に名前を連ねている25歳の俳優だ。テレビヲタからすると『花ざかりの君たちへ~イケメンパラダイス2011~(フジテレビ系 2011年)』『勇者ヨシヒコと導かれし七人』(テレビ東京系 2016年)などちょくちょくテレビで見かける存在だった。

とはいえ、だ。女性の印象の網に引っかからなかったのはなぜか。それは彼の役柄がエキセントリックな役が多かったということがあると思う。銀行強盗をはじめ、現在出演中の『ゼロ 一獲千金ゲーム』(日本テレビ系・毎週日曜22:30~)ではダークな世界に身を置くリアリスト……と主役と対峙する位置にいる多々。主演映画『全員死刑』(2017年)ではタイトルにも鬼気を感じるけれど、殺人者の役だったもんなあ……。

残念だけど女がワルに目を向けるのは、漫画『ホットロード』で終わったような。ちょっと影があるくらいの役ならまだしも、やはり主役の王子オーラには敵わらない。私の記憶が確かならばご本人も最近出演した『おしゃれイズム』(日本テレビ系)で「普通の役がなかった」と話していた。自覚ありか。

それがここにきて白肌でまつ毛の長い美青年が『きみはペット』(TBS系 2003年)のモモを彷彿させる、ふわくしゅパーマヘアにて朝ドラへ登場。金なし、社会常識なしのダメ男? そんなのどうでもいい。「毎朝、起きる心の拠りどころをありがとう!」とNHKに感謝している女性も多いはず。このドチャクソ暑い夏の清涼剤になるであろう逸材がやってきた。

「嫌な男」それこそが間宮祥太朗の趣なのだ

間宮さんの印象がドン、と胸に入ってきたのは『僕たちがやりました』(フジテレビ・関西テレビ系 2017年)だ。爆破事件の犯人かもしれない高校生グループのひとり、伊佐美翔役だった。もともと間宮さんが美青年であることはチェック済み、むしろいい男すぎて嫌な男に成り下がる予感がしていた。造形美は彼の魅力であることは間違いないけれど、そのまま使うのはなんだか違う気がする。だから、これまでの役柄はただのイケメンにならないよう、変わった役が多かったのか。

そんな作品でひさびさに会った彼女をアパートの一室で、勢いよく押し倒してエッチに持ち込むシーンがあった。高校生の止められない衝動をほんの数秒で表現してくる間宮さんの演技、そしてエロさにドキドキしたことを覚えている。"秒でエロ"。きっと会ったらむちゃくちゃいい男なのだろうともゴクリ……。

友人も裏切って、エロくて、自分だけが可愛い高校生役。これまで見えなかった嫌な男の部分がめきめきと見えてきたけれど、それこそが彼の真骨頂だと見ていた。

そして『BG~身辺警護人~』(テレビ朝日 2018年)では警備会社のチャラい、キムタク(木村拓哉)の後輩役へと続き、今回の朝ドラ事変へと向かう。またこれも間宮祥太朗という舞台の壮大な演出なのかもしれないけれど、『ゼロ 一獲千金ゲーム』では銀髪のビジュアルだった。そろそろキテレツな役の領域へ戻るのかもしれない。

でもあの可愛かった一服の清涼剤は戻って来るものだと信じて、女たちよ、間宮さんを待とうではないか!

スナイパー小林

ライター。取材モノから脚本まで書くことなら何でも好きで、ついでに編集者。出版社2社(ぶんか社、講談社『TOKYO★1週間』)を経て現在はフリーランス。"ドラマヲタ"が高じてエンタメコラムを各所で更新しながら年間10冊くらい単行本も制作。静岡県浜松市出身。正々堂々の独身。