エンタメライターのスナイパー小林が、テレビドラマでキラッと光る"脇役=バイプレイヤー"にフィーチャーしていく連載『バイプレイヤーの泉』。

第6回は俳優の風間俊介さんのことを書いていきます。生田斗真さんと並ぶかのように、ジャニーズ事務所の俳優として注目を集めている風間さん。友達でもなんでもありませんから、あくまでも俯瞰で見て感じていることなのですけど本当に努力の人だと思うのです。でもそのセンス、ビジネスにも匹敵するのではないのでしょうか。スナイパー小林が感じた、見た風間さんの魅力についてつらつらと。

風間俊介の努力は"スポーツマンシップ"だ

今でこそ、各作品で風間さんをよく見かけるようになった。最初に彼が目に飛び込んでくるようになったのはやはり『3年B組金八先生 第5シリーズ』(TBS系 1999年)。物語の冒頭からクラス担任が自殺未遂、荒れたクラスだった3年B組。その首謀者はクラスメイトの弱みを掌握する、優等生の兼末健次郎(風間)だった……という内容。家庭でも問題を抱えていて最終的に母親を刺してしまうというショッキングな役を彼は熱演。個人的には"腐ったみかん"を軽く超える衝撃作だった。

ジャニーズ熱血ファンではないので、ウィキペディアを頼ってみると風間さんはイメージ通りの努力の人だ。ジャニーズJr.として少年隊のバックからデビューしたものの、泣かず飛ばす。山P(山下智久)ら仲間が次々にデビューするジレンマの中で、ひたすら彼が頑張っている姿をお姉さんは容易に想像できる。

ふとそんなことを考えていたら、数年前に担当したサッカー日本代表・吉田麻也選手の話を思い出した。小学生の頃から地元を離れてJリーグチームのユースとなり、ひたすら練習と試合の日々。中高生の頃、文化祭や学芸会には自分の役割がなかったという話を聞いて泣けた。それでもW杯との距離を縮めるために努力するのがプロサッカー選手。

風間さんがかつて属していたジャニーズJr.も同じスポーツマンシップにのっとった世界だ。あくまでも良い意味で……の仮想なのだけれど、ジャニーズJr.内も女の世界に負けず劣らず、戦々恐々としているんだと思う。誰もがCDデビューを目標に掲げて、歌って踊って笑ってを繰り返す日々。

風間さんが賢いと思うのが、敢えて王道路線を外れて俳優道に自分の活路を見出したこと。諸先輩には例のない世界を自分でつくってしまったのだ。この切り返しの良さは目を見張る。そして現在、約50本近くのテレビドラマに出演経歴を持つ。

朝ドラ『純と愛』(NHK総合 2012年)、『救命病棟24時 第5シリーズ』(フジテレビ系 2013年)、『陸王』(TBS系 2017年)と名作に出演し続けているけれど、私が一番記憶に残っているのは『それでも、生きてゆく』(フジテレビ系 2011年)での雨宮健二役。主人公の妹を殺害、少年院を経て社会復帰。死にたいと思いながら、幼児に対して異常性を感じるという怪演を覚えている。

(相手を追い詰めるように)「明日が来ると思っているんですか? どうして明日が来るって分かるんですか?」

『金八先生』に然りだけど、彼は狂気じみた役をすんなり自分の中に溶かしてしまうので、やっぱり先天的に役者なのだと思う。良かった、もし今頃まだ迷いながらも歌って踊っていたら、演じる風間さんに会えなかったじゃないか。そして2013年の結婚を機になのか、彼から「(ジャニーズJr.)」の表示が消えた。ここまで14年間。これも新しい形のデビューなのだと思う。

親近感と癒しにあふれた、奇跡の35歳

演技力云々は周知の事実とするなら、彼の魅力には親近感は欠いてほしくはない。個人的にはもうこれが風間俊介最大級の魅力だと声を大にしたい。

『櫻井・有吉 THE夜会』(TBS系)に出演したときは、横浜市の桜木町付近で"野毛飲み"をしていた。ジャニーズのタレントなのに、入店5分後にはすっかり客と馴染んで立ち飲みしている様子に自分と同じ匂いを感じてしまった。これぞ親近感。

それから『はなまるマーケット』(TBS系 1996~2014年)にゲスト出演した際には、おめざに三軒茶屋にある名店『ベーカーバウンス』のハンバーガーを紹介していたことも思い出す。通常はスポンサーを気にして、メーカー名を隠すのに堂々と下町の店舗を好きだと公言してしまう。これも親近感。

親しみやすさを見せながら、自分のアピールを嫌味なく欠かさないのが風間流。今でこそ大好き芸人が大挙して舞浜に押し寄せているけれど、元祖ディズニーファンといえば彼だ。年間パスポートを毎年購入して、あの世界観に浸ることが好きだと『マツコの知らない世界』(TBS系)で愛おしそうに話していた。

芸人たちがなんとか仕事にしようと、ディズニー好きをアピールする傍で彼は静かにしたたかにディズニー愛を貫く。そして『D23 Expo Japan 2018(ものすごく簡単に説明すると世界的なディズニーファンイベント)』では、彼の私物が展示された。これがディズニーファンからすると、ミッキーがいきなり家庭訪問をしてくるような衝撃、そして名誉だ。

あんなにキラキラしたビジュアルの集団の中で、彼はひとり事務所内に"癒し部"を設置したようなものだ。異色だと言われていることを翻し、俳優になった。趣味愛を貫いて本国に認められた。ニッチ路線の極みとはまさにこのこと。そして普通っぽさを親近感という武器に変えて、世間に自分の存在をアピール。この姿勢はビジネスマンが手本にしたい、合理的な努力の姿勢だと私は思う。

誰もが開拓していないビジネスを成功させて、でも偉ぶらずに温故知新を重んじることを忘れないーー。いつの日かその極意をまとめて発表してほしい。そのときは陰ながらお手伝いさせていただきます。

スナイパー小林

ライター。取材モノから脚本まで書くことなら何でも好きで、ついでに編集者。出版社2社(ぶんか社、講談社『TOKYO★1週間』)を経て現在はフリーランス。"ドラマヲタ"が高じてエンタメコラムを各所で更新しながら年間10冊くらい単行本も制作。静岡県浜松市出身。正々堂々の独身。