エンタメライターのスナイパー小林が、テレビドラマでキラッと光る"脇役=バイプレイヤー"にフィーチャーしていく連載『バイプレイヤーの泉』。

第29回は俳優の山田裕貴さんについて。ここ最近、テレビドラマでの出演が続く山田さん。何が理由なのかは分からないのですけど、すごく印象に残っていました。きれいな顔立ちなのに、アイドルでもゴリッゴリの俳優でもない。その狭間に存在するような感じなんですよね。世の中はそれを「持っている」と呼ぶのでしょうか? そんな28歳の青年のことを色々と。

あのツン、とした目元は見る側に何かを残す

山田裕貴

現在、2本のテレビドラマに出演中の山田さん。1本は『HiGH&LOW THE WORST EPISODE.O』(日本テレビ系)では定時制高校に通う、不良役に。こちら、この秋に公開される映画の前哨戦ともいえる内容。そして、もう1本は出演が少なくなってしまったけれど、朝ドラ『なつぞら』(NHK総合)の小畑雪次郎役だ。申し訳ないが、朝ドラのイメージは大きい。あの一作品で彼は、高年齢層からも"言うことをなかなかきかない息子"。そして同世代からは"居たらうれしかった、こんな幼なじみ"のポジションを確立したと思っている。

ヒロイン・奥原なつ(広瀬すず)の幼なじみ役という、ちょうど良く目立つことのできる役柄だ。本来であれば、実家の菓子屋を継ぐ修行のために、上京。でもそこで見つけてしまった新たな夢……。ただその夢にも恋心にも破れて、雪次郎は地元へ帰郷する。その息子を見守る家族の葛藤や、人間模様にも心打たれた。

俳優になりたいという息子の夢を認められない父。どうしても応援してしまう母。孫をかばう祖母。東京の狭いアパートで母の作ってくれたカレーを

「母ちゃん……やっぱり母ちゃんのカレーが一番うめえ」

そう言って、泣きながら食べるシーンをよく覚えている。

今はメインの舞台が東京なので、雪次郎の登場はすっかりご無沙汰だ。でももう少ししたら、初恋の夕見子(福地桃子)と結婚して、実家を継いでいるなんていうアナザーストーリーが見れないものかと、勝手に期待を寄せている。

たったのワンシーズンで不良から、道産子お兄ちゃんの役まで披露している山田さん。もちろん放送時間帯もあるけれど、雪にまみれて農業高校に通って、演劇部で楽しそうにして居た雪次郎が私の中に残る。少し前に出演していた『健康で文化的な最低限度の生活』(フジテレビ系)で演じた、ちょっとマザコン気味の公務員の役もそうだ。なんだろう、なんだろうとあの目元を思い出しながら、山田さんのことを回想。

蓋を開けたら天然男子という安堵感

山田さんと言って、最初に思いつくのが目元なのである。まるでアイラインでも引いているのかと二度見をさせる、あのキュッとつり上がった目元だ。第一印象のままだと、怖そうなイメージが定着してしまう。

でも各バラエティー番組で時々見かける様子が、やたら可愛い。パッと見、強面なのに蓋を開けたら純粋な青年なのである。

自分の初恋のことを突っ込まれれば、顔を真っ赤にさせてしまう。ドッキリを仕掛けられれば、まったく疑うことなく信じてしまう。そんな天然ぶりを発動しているではないか。その様子を見て、ふと思った。

「この人、クラスに一人はいるような残念なイケメンくんかもしれない……」

先に伝えておくが、山田さんが残念なイケメンと断定しているわけではない。 自分の学生生活を振り返ると、クラスにいたのだ。顔はかっこいいのに、給食を食べるのが遅い。東京から転校してきたヒーローだったのに極度のカナヅチで、女子を少しだけ失望させてしまう男子がいた。その時はその存在に恋心も抱かず、サッカー部のエースに心奪われる。でも数年して、自分も大人になって同窓会で会った時は、そのヘタレっぷりが可愛く思えてしまう。いや、それは片思い成就の四十八手にある“ギャップの見せどころ”ではないだろうか。

私の中で、山田さんはそんな同級生の存在とリンクする。

少し興奮して書いてしまったけれど、山田さんにはぜひその同窓会に参加していてほしい。そういう安堵感というか、実家感のある雰囲気を持っている人で、だからこそ雪次郎の涙が、こちらの涙腺もゆるませるほどハマっていたのだと納得した。そして真っ直ぐな純粋さが28歳になっても、なんの違和感もなく高校生役を演じさせてしまうんだろうと、妄想をかき立てながら、本日終了。

スナイパー小林

ライター。取材モノから脚本まで書くことなら何でも好きで、ついでに編集者。出版社2社(ぶんか社、講談社『TOKYO★1週間』)を経て現在はフリーランス。"ドラマヲタ"が高じてエンタメコラムを各所で更新しながら年間10冊くらい単行本も制作。静岡県浜松市出身。正々堂々の独身。