エンタメライターのスナイパー小林が、テレビドラマでキラッと光る"脇役=バイプレイヤー"にフィーチャーしていく連載『バイプレイヤーの泉』。第10回は女優の森川葵さんのことを書いていきます。現在、どらま『文学処女』(MBS・TBS系)に月白鹿子役で主演中の森川さん。同年代の女優さんたちと並ぶと、ひとりだけすんごい存在感を漂わせている印象があります。あのこぼれ落ちそうなほど大きな瞳から訴求するものとは一体なんなのか?

世間への"におわせ"演出がお見事だと思う

森川葵

現在、森川さんが城田優さんとダブル主演中の『文学処女』。出版社の文芸編集部に勤務、26歳にして男性経験ゼロの月白鹿子。人気小説家・加賀屋朔(城田)の担当になり、新作の制作に意欲を燃やす。一方で同じく恋愛のできない加賀屋と、ふとしたきっかけでキス。鹿子の新しい世界が開拓されていく……というのがあらすじだ。

第2話の放送で、酔った鹿子が自分の妄想に浸り加賀屋から指を舐められるシーンがあった。森川さんはひたすら恍惚さをあらわにするような表情を見せていたのだけれど、この演技がゾクゾクした。城田さんの舌使い……というよりは、森川さんのなまめかしさが脳裏に残った。ダイレクトな性描写をしているわけではないのに、雰囲気だけでこちらをドキドキさせるとはなんという色気の持ち主だろうか……と女のこっちがうっとり……。

森川さんの出演作品と言われて最初に思い出すのは『ごめんね青春!』(TBS系・2014年)の阿部あまり役。外はカトリック系の女子校で清楚に見せているのに、教室では

「セクハラで訴えっぞ! オラ!!」

と、いきなりマイルドヤンキーぶりを発揮する役。ギャップ操作が絶妙だった。

名優排出作品となった『表参道高校合唱部!』(TBS系 2015年)の引田里奈はいわゆる普通の印象だった。でも思えばこの作品で教師役だった城田さんとは今回艶っぽいシーンを見せているわけだから、たった3年で女は成長するのだとしみじみ。

そのほか『明日の君がもっと好き』(テレビ朝日系 2018年)での、女性に恋する丹野香役。数年ごとに少しだけ強烈な役をボトン、ボトンと世間に落としていく。自分の存在をにおわせていくのが上手な女優さんだ。"あざとい"という言葉だけだけでは片付けられない、何かを秘めている。

ウエブ検索した情報で役によっては、スキンヘッドになったこともあるし、むしろ役ごとにヘアスタイルを変えて登場したい願望もあるそう。中途半端ではない女っぷりがまた彼女に興味をそそらせてしまうのだ。

大竹しのぶをほうふつさせる続・魔性の女に期待

真相はいざ知らず……なのだが今年の春に、優しげな笑顔で人気絶頂の俳優と熱愛をスクープされたことのある森川さん。15歳の年齢差に加えて、出会いはアシスタントを務めていた『A-studio』(TBS系 毎週金曜 23:00~)。そして彼女からの猛烈アピールで笑顔王子が落ちたという展開を聞く。

若いけれど自分のことを熟知した女優なら笑顔王子を口説き落としても当たり前だろうと思っていたら、次にこれまた共演経験のある人気アイドルとのプライベート写真が流出。一気に二股疑惑に発展した。これも情報としては怪しいのだけれど、でも森川葵という存在がしでかしたことならば、なんだろう、納得せざるを得ない。これも"におわせ"演出の一環なんだろうか。

自分に、演技にそして恋にも直球勝負。嘘がない。こういう女性は本当に気持ちが良い。個人的な意見だけれど、大竹しのぶさん二代目を継ぐ稀代の演技者なんだと思う。演技も期待するけれどこれから文春砲をドカンドカンと発射させて、世間を騒がせてほしい。なおかつ、その後はあっけらかんとしていてくれたら最高だ。

最近、ものすごくきれいになった森川さん。これからたくさんの役を演じていくと思うけど、できれば狂気的な役を拝ませていただきたい。この願い、秋の訪れとともに枯らせたくないです。

スナイパー小林

ライター。取材モノから脚本まで書くことなら何でも好きで、ついでに編集者。出版社2社(ぶんか社、講談社『TOKYO★1週間』)を経て現在はフリーランス。"ドラマヲタ"が高じてエンタメコラムを各所で更新しながら年間10冊くらい単行本も制作。静岡県浜松市出身。正々堂々の独身。