悩み多きビジネスパーソン。それぞれの悩みに効くビジネス書を、「書評執筆本数日本一」に認定された、作家・書評家の印南敦史さんに選書していただきます。今回は、「もっと若いときから資産運用できていれば」と悔やむ人へのビジネス書です。

■今回のお悩み
「引退前のもう少し若い時から資産運用ができていれば、と思う。当時は今ほど商品や情報がなかった」(66歳男性/建築・土木関連技術職(設計・施工・設備・研究開発他))


たしかに資産運用については、「もう少し早い時期から始めておけばよかった」と思うものですよね。恥ずかしながら僕自身も似たようなものなので、少なからず共感できます。ましてや年齢を重ねていくと、不安はさらに大きくなっていくものです。

だからこそ大切なのは、少しでも多くの知識や手段、アイデアなどを蓄えておくことではないでしょうか? おっしゃるような商品や情報の重要性もさることながら、あらゆるポテンシャル、そしてリスクにも目を向けておくべきだと考えるのです。

資産形成ひとつとってみても、その性格は多種多様。なかにはFXのようにリスクの高い商品も少なくありませんから、失敗しないためには少しでも多くのことを知っておいたほうがいいわけです。

着実なお金の作り方を知る

『人生100年時代の着実なお金の作り方 最も堅い資産形成術と税対策』(石田昇吾 著、総合法令出版)でもさまざまな資産形成術が紹介されていますが、当然ながらそれぞれ特徴も異なります。

  • 『人生100年時代の着実なお金の作り方 最も堅い資産形成術と税対策』(石田昇吾 著、総合法令出版)

したがって、ひとつひとつを念入りにチェックしていかなければなりませんが、個人的には2018年1月からスタートした「つみたてNISA」(積立型の少額投資非課税制度。以下「つみたてニーサ」は比較的リスクが少ないのではないかと思っています。もちろんリスクがまったくないわけではありませんし、考え方も人それぞれですけれど。

つみたてニーサのメリットは、運用中の利益が非課税になり利益が丸々手元に残るという点です。
新規に投資できる期間は、制度の始まった2018年から2037年まで、非課税となる期間は投資した年から最長20年となります。
年間の投資上限額は40万円、累計非課税投資上限額は800万円。さらに、金融庁が高い確率で運用益を上げられそうな投資信託(手数料の安い投資信託)のみを指定して、非課税投資の対象を定めました。(136ページより)

たとえば資産運用をして10万円の利益を得た場合、通常の運用で受け取れるのは約8万円。つまり2万315円(10万円×20.315%)の税金がかかるのです。

一方、つみたてニーサでの運用では、10万円を受け取ることが可能。なにしろ運用中の利益は非課税ですから、利益がまるまる手元に残ることになります。

ちなみに日本には投資信託が6千本以上あるといいますが、つみたてニーサの対象となる投資信託は、現在64本しかないのだとか(本書が刊行された2019年10月時点)。

つまり逆に考えると、つみたてニーサを利用できる投資信託は、金融庁のお墨つきであるともいえるわけです。そういう意味でも、投資の初心者には安心感のある商品だといえそうです。

逆に悪い面としては、手数料目的の「ゴミ投資信託」も多いことだと著者は指摘しています。投資信託に対して悪いイメージを持っている人がいるのは、それが原因だとも。

そういう意味でも、具体的な商品についての説明をしっかり聞いてから始めてみるべきかもしれません。

「副業アフィリエイト」とは?

「資産形成といえば、思い浮かぶのは保険、預貯金、個人向け国債、投資信託、不動産投資、仮想通貨あたりだろうけど、他に違った手段はないの?」

もしかしたら、そう感じている方だっていらっしゃるかもしれませんね。そこで、ひとつの手段として提案したいのが「副業アフィリエイト」。『月5万円を安定的に稼げる 55歳からの副業アフィリエイト』(Teresaさくまかずこ 著、染谷昌利 監修、日本実業出版社)の著者によれば、本気でコツコツ積み重ねていけば、必ず結果はついてくるそうなのです。

  • 『月5万円を安定的に稼げる 55歳からの副業アフィリエイト』(Teresaさくまかずこ 著、染谷昌利 監修、日本実業出版社)

著者自身、2009年に独立し、会社を設立してアフィリエイトビジネスに参入してから、大きなものを得たといいます。

しかし、そもそもアフィリエイトとはなんなのでしょうか?

たとえばインターネットでサイトやブログをチェックしているとき、いろいろな企業や商品紹介の広告を目にすることがありますよね。それをユーザーがクリックしたり、その広告経由で商品を買うことにより、広告主には商品が売れた収益、そしてアフィリエイトサイトの運営者には紹介料の報酬が発生します。

企業は商品やサービスを販売する際、さまざまなマーケティングを行って商品やサービスを拡販するわけですが、つまりはインターネット上での拡販の手法のひとつが、インターネット広告であるアフィリエイトだということ。

アフィリエイト広告を利用して、商品やサービスを拡販したい企業は、アフィリエイト・サービス・プロバイダ(以下、ASP)という会社にアフィリエイト用の広告を登録します。
そして、サイトやブログなどのメディア運営者(アフィリエイター)は、ASPに登録されている広告を自分のサイトやブログに掲載します。その掲載した広告経由でユーザーが商品やサービスを購入・申し込みをした場合に、売上の一部が報酬として、サイトやブログのメディア運営者に還元されるという仕組みになっています。(15ページより)

アフィリエイトに必要なものは、自分で運営するサイトやブログ。インターネットに接続できる環境があれば、場所や時間を選ばず作業できるわけです。

会社員や主婦の副業としてアフィリエイトの人気が高まっているのは、「趣味のことをブログに書いて報酬を得られる」「本業の経験を活かせる」「好きな時間に作業ができる」といったメリットがあるから。

いわば、自分の趣味や得意分野を活用できるということ。そして、なにについて書いていくのかが決まったら、あれこれ考えすぎず、まずは書いてみるべきだと著者は主張しています。

記事を書いてもすぐには稼げるようになりませんが、継続的な投稿、試行錯誤で必ず結果はついてきます。(「はじめに」より)

「ブログなんてやったことがない」という方には未知の世界かもしれませんが、もし得意分野をお持ちなら、楽しみながらやってみる価値はあるのではないかと思います。

やっぱり「健康第一」

最後に、上記2冊とはタイプの異なる一冊をご紹介したいと思います。『財産消滅: 老後の過酷な現実と財産を守る10の対策』(岡 信太郎 著、ポプラ新書)がそれ。司法書士である著者によれば、いま金融資産をめぐってのトラブルが続出しているというのです。

  • 『財産消滅: 老後の過酷な現実と財産を守る10の対策』(岡 信太郎 著、ポプラ新書)

認知症高齢者の増加により、いざというときに親や配偶者のお金が動かせない"資金難民"となってしまう方が増えているのだそうです。口座凍結や契約不能により、本人はもとより家族の財産を動かせなくなる事態が多発しているということ。

そこで本書では、財産が漂流している足元の状況について、さらには認知症対策の最後の砦となるはずだった成年後見人制度の光と闇などについても実務の立場から解説されているのです。

たとえば興味深いのは、誰にでも起こりうる財産消滅への対応策として提案されている10の対策のなかに「健康寿命」の重要性が盛り込まれている点。これまで築いた大切な財産を漂流させないようにするため、自分や家族の健康を見なおすべきだということです。

これまで元気だった方の判断能力が低下したら、体調悪化に伴って、資産を管理したり処分したりすることができなくなり、財産が宙に浮いてしまうのですから。

しかし年齢を重ねても健康であれば、自分の判断ですべてのことを決めることが可能。契約に限らず、遺言を作成して資産が分散しないように対策を打つこともできます。もちろん、任意後見契約や信託契約といった財産を守る術を使うこともできます。

財産の消滅を心配する前に、大前提として身体の健康のために何ができるかを考えましょう。食事、運動などの生活習慣をいろいろな角度から見直し改善できるはずです。
健康の源は何なのか、財産問題の一環として今一度考えてみましょう。(中略)身体と心は表裏一体です。体力と気力は連動しています。どちらかが低下して仕舞えば、財産への関心が薄くなってしまう恐れがあります。このことは、出来得る限り避けなければなりません。
財産を消滅させないためには、やはり健康第一なのです。(152ページより)

たしかにこれは、なかなか気づきにくいことではないでしょうか? しかし間違いなく、意識しておく必要があるでしょう。