※この記事は、3月17日掲載予定だったものです。

本を読もう、と思い立ったその日が記念日。『今日はナニヨム?』は、あるキーワードをもとに関連本を紹介していくコーナーです。知っている人も、見慣れた風景も、本で読んでみるといつもと違って見えるかも。──そんな本との出会いを作れたらと思います。

21世紀になってもう10年。20~30年前の日本において完成された将来の代名詞であった"21世紀"とは、だいぶ違う世の中になっています。それに対して静かな落胆を抱いている人がいるとすれば、けっこう上の年齢層の方々かもしれません。逆に、80年代にサイバーパンクの洗礼を受けた人たちにとっては、明るくクリーンな未来などハナから絵空事。薄汚れた今のほうが、描かれた未来に近いのでは。

3月17日は、サイバーパンクSFを代表する作品『ニューロマンサー』の著者ウィリアム・ギブスンの誕生日。筑波万博で"明るい未来"が仮設されていた頃、彼の作品では電脳空間にダイブし光学迷彩服をまとい、データを介して他人の感覚を共有していたのであります。

サイバーパンクの世界に深い影響を受けた作品は現在も創られ続け、SFというより"ちょっと先の未来"として、よりリアリティを増しています。現実がそれに追いつくまで、あと少しかも? ただし、ブレインマシンインタフェースなどの技術的なことより、発酵しきった社会問題とか、その解決を期待せず生きる人々とか、ごく一部の勝ち組が支配する経済とか、願わくはそちらが先に実現しないことをば。

『ニューロマンサー』(ハヤカワ文庫)

出版:早川書房
価格:1,008円

ハイテクと汚濁の都、千葉シティの空の下、コンピュータ・ネットワークの織りなす電脳空間を飛翔できた頃に思いを馳せ、ケイスは空虚な日々を送っていた。今のケイスはコンピュータ・カウボーイ能力を奪われた飢えた狼。だがその能力再生を代償に、ヤバい仕事の話が舞いこんできた。依頼を受けたケイスは、電脳未来の暗黒面へと引きこまれていくが……新鋭が華麗かつ電撃的文体を駆使して放つ衝撃のサイバーパンクSF! (「hayakawa online」より引用)

『ニューロマンサー』
ウィリアム・ギブスン 著/ 黒丸尚 訳

『ぼくらが夢見た未来都市』(PHP新書)

出版:PHP研究所
価格:945円

建築家やSF作家たちが描く未来都市は、どのような変遷を遂げてきたのか。それぞれの時代が持った問題意識・空気・想像力を読み解く。(PHP研究所HPより引用)

『ぼくらが夢見た未来都市』
五十嵐太郎・磯達雄 著

『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』(ハヤカワ文庫)

出版:早川書房
価格:777円

第三次大戦後、放射能灰に汚された地球では生きた動物を持っているかどうかが地位の象徴になっていた。人工の電気羊しか飼えないリックは、かくて火星から逃亡した〈奴隷〉アンドロイド八人の首にかかった賞金を狙って、決死の狩りを始めた! 現代SFの旗手が斬新な着想と華麗な筆致で描く悪夢の未来世界! (「hayakawa online」より引用)

『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』
フィリップ・K・ディック 著/ 浅倉久志 訳

『攻殻機動隊S.A.C. SOLID STATE SOCIETY』

出版:講談社
価格:1,300円

TVアニメ「攻殻機動隊S.A.C.」の長編シリーズ第3弾「SOLID STATE SOCIETY」が3Dで映画化。その公開に先駆けて、監督の神山健治氏みずからが完全ノベライズ。一度見ただけではわからなかった、登場人物の心理や、背景がより深く楽しめる。見て読んで、また見よう。(「講談社BOOK倶楽部」より引用)

『攻殻機動隊S.A.C. SOLID STATE SOCIETY』
神山健治・春日康徳 著