こんにちは。ファイナンシャルプランナーの中山浩明です。近年、結婚や出産時の年齢が高くなる傾向にあります。連載『晩婚者のためのマネー術』では、そうした"晩婚化時代"に応じる形で、晩婚の方々を対象にした"マネー術"について解説したいと思います。


40歳前後で結婚および出産をされる場合、教育と住宅購入プランは慎重に考えたいポイントです。60歳で退職するまでの20年間で、両方の費用を捻出しなければならず、資金繰りが相当に困難になることが容易に想像できるからです。出産年齢が遅くなるとなおさらで、「夫の退職後に子の大学進学が控えている…」というケースに陥りやすいといえるでしょう。

教育費から見るマネープラン

「子どもの教育費はすごくかかる」というイメージをお持ちの読者も多いと思いますが、「私立か公立か」「最終学歴は高卒か大卒か」によって実際の費用は変わってきます。イメージだけで判断せず、実際の費用がいくらなのか、大まかな金額を見積もっておきましょう。

表1:幼稚園から高等学校にかかる費用(※1)

(※1 文部科学省「平成24年子どもの学習費調査」)

表2:幼稚園から高等学校にかかる費用の総額

表3:大学にかかる費用(※2)

(※2 私立に関するデータは文部科学省「平成25年度私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額調査」)

(※3 文部科学省「平成24年子どもの学習費調査」)

(※4 私立に関するデータは文部科学省「平成25年度私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額調査」)

表4:進学コース別教育費(学校納付金のみ) (※5)

(※5 「全て公立」は国立大の場合。「私立大学」はすべて理系の場合)

表5:進学コース別教育費(学習費総額)

ご覧のとおり、公立に行くなら驚くほど費用がかかるわけではありません。(表1)の(1)学習費総額から数字をざっくりみてみると、年間費用は幼稚園20万円、小学校30万円、中学・高校40万円となります。月に換算すると1.6~ 3.3万円程度なので、目が飛び出るほどの費用ではないことがわかります。ただし、子ども2人なら費用は2倍なので、3.2万円~6.6万円程度となり、家計に占める教育費の割合が大きくなることは容易に想像がつきますね。

次に、(表1)(2)学校納付金(※6)のみをざっくりみてみると、幼稚園15万円、小学校10万円、中学15万円、高校25万円となります。月換算で1.25万円~2万円程度です。学校納付金は削ることができないので、最低限の費用を見積もっておくなら、この数字を参考にしてもよいでしょう。

(※6 塾代や習い事代を除いた費用。学校に支払うお金だと考えればよい)

この程度の額であれば、なんとか収入でやりくりできると感じる方も多いのではないでしょうか。むしろ、幼稚園から高校にかかる費用は貯蓄を切り崩さずに収入から捻出したいところです。この時期に貯蓄を切り崩してしまうと、その後にかかる大学費用が賄えなくなるケースが多くなってきます。

大学に進学するなら費用はグンとかかってきます(表3)。最も費用のかからない国公立大学で学校納入金だけでも4年間で250万円、年平均で60万円程度の費用が予想されますので、大学4年間の授業料と入学金ぐらいは貯めておくなど、しっかり備えておきたいですね。

私立学校を希望するとなると話はまた別です。私立学校にかかる学校納付金は、幼稚園で公立の2倍、小学校10倍、中学6倍、高校2.5倍と跳ね上がり(表 1)、大学でも2倍はかかります(表3)。幼稚園から大学まですべて公立を選択した場合、学校納付金の合計はざっくり500万円ですが、すべて私立を選択した場合は1500万円と3倍に膨らむことが分かるでしょう(表4)。

したがって、特に私立を検討される場合は、慎重なマネープランが必要になります。手順としては、まずキャッシュフロー表を作成し、貯蓄残高が底をつかないかどうかを確認することが重要です。貯蓄残高が底をついてしまう場合は、何らかの改善が必要になりますね。

モデルケースのキャッシュフロー

  • 世帯構成 : 夫40歳、妻36歳、子1歳、0歳

  • 世帯年収(手取り) : 500万円、退職金1,000万円(60歳)

  • 住宅ローン : 借入額1,800万円、固定金利1.80%、20年返済

ケース(1) - 全て国公立を選択

ケース(2) - 私立高校、私立大学(文系)

ケース(1)のように、全て国公立に通わせた場合、貯蓄残高は住宅ローン完済まで一度も底をつきません。ただし、ケース(2)のように、高校と大学を私立に通わせた場合、子の進学が重なる55歳から収支赤字がしばらく続きます。貯蓄はハイペースで減り続け、59歳でついに底をついてしまいますので1,000万円の退職金では赤字をカバーすることもできません。

59歳で貯蓄が底をつくため教育資金は奨学金や教育ローンなどで借入しなければなりませんが、借入をしたくないのであれば、高校と大学を公立に通わせるプランに変更したり、住宅ローンの借入額を抑えたり、世帯収入を増やしたりすることでクリアすることができます。ただし、これらの対策を考えず生活費の見直しだけでケース(2)のプランを組むのは危険なので、到底お薦めできるものではありません。

住宅ローンと教育資金は2者択一になる世帯が一般的で、どちらを優先させるのかをできるだけ早いうちから、世帯でよく話し合っておく必要があります。「何となく」や「何とかなるだろう」という脇の甘いライフプランでは「何ともならない」ことを理解し、実現可能な教育プランを検討していただきたいと思います。

執筆者プロフィール : 中山 浩明(なかやま ひろあき)

株式会社アイリックコーポレーション『保険クリニック』ファイナンシャルプランナー(CFP認定者/DCプランナー) マネー関係 セミナー講師。大学卒業後、ゴルフクラブの職人、パン屋経営と異色の経歴を持つ。2000年にファイナンシャルプランナーとして活動開始、マネー関係のセミナー講師として活躍、これまで500回以上のセミナーを開催。現在『保険クリニック』教育部に所属、保険コンサルタント指導とマネーセミナーの講師担当。専門分野は年金、保険、資産運用、ライフプラン。セミナーでは、お客様の立場で「お金の使い方を知ること」の重要性を唱える。

セミナーHP→http://www.hoken-clinic.com/seminar/

『保険クリニック』HP→http://www.hoken-clinic.com/