こんにちは。ファイナンシャルプランナーの中山浩明です。近年、結婚や出産時の年齢が高くなる傾向にあります。連載『晩婚者のためのマネー術』では、そうした"晩婚化時代"に応じる形で、晩婚の方々を対象にした"マネー術"について解説したいと思います。


確定申告の時期になると、医療費控除のことを思い浮かべる方もいらっしゃると思います。そこで今回は医療費控除の概要と申告時のポイントを学びましょう。

医療費控除とは

1月1日から12月31日までの1年間に、病院や薬局の窓口で支払った本人や家族の医療費について、医療費控除が受けられます。医療費控除とは14種類ある所得控除のひとつで、確定申告により税の還付が受けられます。

医療費控除の対象となるのは、(1)1月1日から12月31日までの1年間に支払った医療費から、(2)生命保険などで医療費が補てんされた額と(3)10万円などを差引いた額で、最高200万円が限度です。

生命保険などで医療費が補てんされた額は、給付金の支払い理由となった病気やケガにかかわる医療費から差引きます。したがって、もし支払った医療費よりも医療保険などからの給付金の方が多く全額を引き切れなくても、他の病気やケガにかかった医療費から差引く必要はありません。

表1:医療費控除額の計算式

医療費控除の対象となるもの、ならないもの

医療費控除の対象となるのは原則、治療や療養のための費用です。医療機関や薬局で支払ったものであっても、美容や予防のための費用は対象になりません。

例えば、歯医者の場合「虫歯の治療費」や「インプラント費用」は医療費控除の対象になりますが、歯を白くするための「ホワイトニング費用」は対象になりません。視力回復のためのレーシック手術や、不妊治療にかかった費用は人工受精も含めて対象です。健康診断や人間ドック、健康ドリンクやサプリメントは予防にあたるため対象外です。

治療のために医療機関に通院した際の「電車やバスなどの交通費」は医療費控除の対象になりますが、自家用車を運転して通院した場合のガソリン代金や駐車料金は対象になりません。

医療費は本人だけでなく、同一生計の親族が払った医療費も合算できます。別居の親がいる場合でも、恒常的に生活費を仕送りしてれば合算の対象になります。公的介護サービスの自己負担分も控除の対象になる場合もありますので、介護サービスを受ける親などがいる場合は、合算できないかどうかを確認しましょう。

こうした医療費については申告時に領収書を提出する必要があります。電車やバスなど公共交通機関は領収書が出ないものについては、表計算ソフト(エクセルなど)をつかって明細書を作っておくとよいでしょう。なお、不妊治療を受けた方で都道府県の「特定不妊治療助成制度」を申請する場合、領収書が必要になりますので、コピーを提出するようにしてください。

表2:医療費控除の対象となるものならないもの(例)

医療費控除は所得金額の多い人が申告する

医療費控除は自分の医療費だけでなく、同一生計の親族ために支払った医療費も合算できます。世帯主が申告しても、配偶者が申告してもどちらでもかまいません。夫婦共働き世帯の場合、世帯主ではなく配偶者が医療費控除を申告したほうが有利になることがあります。

例えば、高校生と大学生の子どもが2人いて、夫婦の年収がともに500万円という世帯を想定してみましょう。

扶養控除は高校生38万円、大学生63万円で合計101万円で、子どもの扶養控除は世帯主(夫)が使っているケースがほとんどです。

その場合、配偶者(妻)のほうが課税所得も所得税率も高くなりますので、配偶者がまとめて医療費控除を申告した方が、還付される税金は多くなります。

この世帯で夫が扶養控除を使っている場合、課税所得と所得税率はつぎのようになります 。

  • 夫:課税所得117万円 所得税率5%

  • 妻:課税所得223万円 所得税率10%

医療費控除額が50万円だとすると、夫が医療費控除を申請した場合に還付される所得税額は25,000円、妻が医療費控除を申請した場合は5万円の還付額となり、妻が申請したほうが有利となります。

医療費控除を申請する人は、収入が多い少ないで判断するのではなく、所得が多い少ないで判断することがポイントです。所得額を知るには、源泉徴収票の「所得控除後の額の合計」をみればわかります。

(※写真画像は本文とは関係ありません)

執筆者プロフィール : 中山 浩明(なかやま ひろあき)

株式会社アイリックコーポレーション『保険クリニック』ファイナンシャルプランナー(CFP認定者/DCプランナー) マネー関係 セミナー講師。大学卒業後、ゴルフクラブの職人、パン屋経営と異色の経歴を持つ。2000年にファイナンシャルプランナーとして活動開始、マネー関係のセミナー講師として活躍、これまで500回以上のセミナーを開催。現在『保険クリニック』教育部に所属、保険コンサルタント指導とマネーセミナーの講師担当。専門分野は年金、保険、資産運用、ライフプラン。セミナーでは、お客様の立場で「お金の使い方を知ること」の重要性を唱える。

セミナーHP→http://www.hoken-clinic.com/seminar/

『保険クリニック』HP→http://www.hoken-clinic.com/