こんにちは。ファイナンシャルプランナーの中山浩明です。近年、結婚や出産時の年齢が高くなる傾向にあります。連載『晩婚者のためのマネー術』では、そうした"晩婚化時代"に応じる形で、晩婚の方々を対象にした"マネー術"について解説したいと思います。
最近、確定拠出年金に関する記事が新聞紙上を賑わせています。確定拠出年金は会社員や自営業者が加入できる制度ですが、2016年度からは専業主婦や公務員まで対象者が拡張されそうです。2014年はNISA口座が話題になりましたが、税制メリットなどを考えると、退職後の資産形成の手段としては確定拠出年金のほうがメリット大。にもかかわらず、会社で確定拠出年金が導入されているけれど、よく分からずに放置している方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、確定拠出年金の運用について改めて考察してみましょう。
(1)投資信託の手数料
制度面の説明は省略するとして、今回は確定拠出年金の運用について触れてみます。投資信託には3種類の手数料がかかります。買付時にかかる(1)買付手数料、保有時にかかる(2)信託報酬手数料、解約時にかかる(3)信託財産留保額、ですが、確定拠出年金(企業型)の場合、(1)買付手数料については企業が負担するのが一般的ですので、加入者は気になさらなくて大丈夫です。(3)の信託財産留保額はかからないファンドが大半ですし、かかったとしても0.3%程度ですから、こちらも気になさる必要はありません。留意すべきは(2)信託報酬手数料のみ。こちらは投資信託を保有している期間中ずっとかかりますので資産額への影響度は高くなります。確定拠出年金のような長期運用では、信託報酬手数料(ランニングコスト)が高いものは致命的になるので注意してください。
(2)インデックスファンドとアクティブファンド
投資信託には運用スタイルの違いでインデックスファンドとアクティブファンドに分けられますが、インデックスファンドはアクティブファンドに比べて信託報酬手数料は低くなります。日本株式を投資対象としたファンドの場合、インデックスファンドの信託報酬手数料の平均は0.6%程度なのに対し、アクティブファンドの平均は1.5%程度で、約3倍もの開きがあります。
インデックスファンドとは、指数と同程度の収益さえあげればよい投資信託で、例えば日本株式を投資対象としたファンドの場合、日経平均株価や東証株価指数などが指数として採用されています。企業調査に特別な費用がかからないため、信託報酬手数料は低くなります。
一方、アクティブファンドとは、指数を上回る収益獲得を目指す投資信託で、企業調査や株式の売買に費用がかかるため、信託報酬手数料は高くなります。また、アクティブファンドの運用成績は、運用会社によって差が出やすいため、個別に評価を行う必要があります。
一般的にはインデックスファンドよりアクティブファンドのほうが成績がよいと思われやすく、個人投資家はアクティブファンドを好む傾向があります。また、販売会社としても信託報酬手数料の高いアクティブファンドの積極販売に傾斜しがちです。しかし、実際にインデックスファンドとアクティブファンドの比較については、過去のデータ等で検証する必要があるでしょう。よくわからないのであれば、信託報酬手数料の低いインデックスファンドを選択するのが無難といえるでしょう。
インデックスファンドにするかアクティブファンドにするかは、目論見書などを見なくても名前から簡単に推測できます。投資信託の名称に「インデックス」と入っていればインデックスファンドですし、入ってなければアクティブファンドの可能性が高いです。また、日本株式を投資対象とする投資信託の場合、名称に「日経225」「日経平均」「TOPIX」など、市場の全体指標を表す文言が入っていればインデックスファンドと推測できます。名称から判断できなければ、信託報酬手数料から推測することも可能です。信託報酬手数料が0.5%程度であればインデックスファンド、1%を超える場合はアクティブファンドと判断してよいでしょう。
(3)投資信託の個別評価
投資信託を個別評価する場合、リターンだけでなくリスクもみるようにします。マネー誌などで投資信託ランキングなどの特集が組まれるときは、前年に比べて上昇率の高かった投資信託が上位にランキングされますが、上位にランキングされる投資信託は、リスクも大きいものがほとんどです。リスクとは収益率のブレのことで、標準偏差で表現されます。
同じような収益率の投資信託が複数あれば、ブレ(標準偏差)の小さい投資信託を選択するようにします。仮に基準価格が(A)1年目に50%下落し、2年目に50%上昇するファンドと、(B)1年目に10%下落し、2年目に10%上昇するファンドがあったとしましょう。(A)に100万円投資した場合、2年後は75万円となり元本を大きく棄損しています。一方、(B)に100万円投資した場合、2年後は99万円となり、元本近くまで回復していることがわかります。どちらも収益率は0%と表現されますが、収益率が同じであればブレの小さかった(A)に軍配があがることがわかります。
投資信託を個別評価する場合、収益率だけが注目されやすいので、収益率のブレ(標準偏差)もあわせて検討するようにしましょう。投資信託の成績は自分で調べることも可能です。なお、Yahoo!ファイナンスやモーニングスターなど、インターネットサイトを利用して投資信託の名称を検索すると、投資信託の基準価格を調べることができます。Excelの関数を使えば収益率やブレ(標準偏差)は簡単に計算することも可能です。
(4)まとめ
以上をまとめると次のようになります。
長期投資においてランニングコストの高さは致命的。コストの低いインデックスファンドを中心にファンドを選ぶか、アクティブファンドならコストに見合うリターンがあるかどうかを評価する。
ファンドを個別評価する場合は、収益率だけでなくブレも意識する。同じような収益率なら、ブレの小さいファンドを選んだ方が評価額は大きくなる。
さらに、たった1つの投資信託だけで運用するより、値動きの異なる複数の投資信託を組み合わせると、分散投資効果でブレを抑えることも可能です。次回は投資信託の分散投資効果についても触れてみたいと思います。
(※写真画像は本文とは関係ありません)
執筆者プロフィール : 中山 浩明(なかやま ひろあき)
株式会社アイリックコーポレーション『保険クリニック』ファイナンシャルプランナー(CFP認定者/DCプランナー) マネー関係 セミナー講師。大学卒業後、ゴルフクラブの職人、パン屋経営と異色の経歴を持つ。2000年にファイナンシャルプランナーとして活動開始、マネー関係のセミナー講師として活躍、これまで500回以上のセミナーを開催。現在『保険クリニック』教育部に所属、保険コンサルタント指導とマネーセミナーの講師担当。専門分野は年金、保険、資産運用、ライフプラン。セミナーでは、お客様の立場で「お金の使い方を知ること」の重要性を唱える。
セミナーHP→http://www.hoken-clinic.com/seminar/
『保険クリニック』HP→http://www.hoken-clinic.com/