リーマンショック直後の2009年3月期以来となる11年ぶりの最終赤字を計上した日産自動車。最終損益で6,712億円という巨額の赤字は、1999年代末の規模に迫る。業績悪化の主因はコロナではなく、同社の構造そのものにありそうだ。内田誠新体制にとってはこの1~2年が正念場となる。

  • 日産「リーフe+」をベースとするテストカー

    アフターコロナに向け構造改革を進められるか。日産が正念場を迎えている

拡大路線と決別

日産自動車は上場自動車メーカーのしんがりとして、5月28日に2020年3月期(2019年度)連結決算を発表した。昨年12月に就任した内田誠社長兼CEOのほか、アシュワニ・クプタCOO、スティーブン・マーCFOが新たな日産経営首脳としてオンライン会見に臨んだ。

長く日産のトップとして君臨したカルロス・ゴーン元会長が逮捕されたのが2018年11月。その後の日産は迷走を続け、2019年度の最終損益は6,712億円の大幅赤字となった。最終赤字はリーマンショック直後の2009年3月期以来の11年ぶりとなるが、その金額は1999年度の6,843億円に迫るもので、損益は20年ぶりの低水準となった。

日産の世界販売は493万台(前期比10.6%減)と500万台を割った。米国での販売低迷に新型コロナウイルス感染拡大の影響が追い打ちをかけた格好で、世界の各市場で台数を減らした。これにより、売上高は9兆789億円(前期比14.6%減)、営業利益は405億円の赤字、最終純損益の赤字は6,712億円にふくらんだ。最終損益で赤字幅が大きくなったのは「今期からの構造改革費用および減損も計上した」(内田社長)ことによる。期末配当もゼロとなる。

オンライン決算会見に臨んだ内田社長は、「新型コロナの影響が深刻なものとなっているのに加え、自社固有の業績悪化に直面している。明らかにグローバル生産が余剰になっているので、従来の拡大路線から転換し、選択と集中で収益確保の着実な成長に切り替える。コロナの影響もあり、元の水準とするのには時間がかかるが、日産を必ず成長軌道に戻す」と総括し、日産立て直しへの決意を示した。

  • 日産「GT-R」

    選択と集中を進めるという日産だが、スポーツカーは集中投資の対象となっている(写真は「GT-R」)

海外2工場閉鎖などさらなるリストラへ

日産の決算発表は、例年の5月連休明けのスケジュールから見ると大幅にずれ込んだ。業績悪化にコロナが追い打ちをかけたことで、中期経営計画を見直し、構造改革に踏み込む内容を精査してことが遅れの理由だ。今回の最終損益で1990年代末以来となる巨額の赤字を計上した日産にとって、今はまさに生きるか死ぬかの瀬戸際ともいえよう。

1990年代末、多額の有利子負債を抱えていた日産は、仏ルノーとの資本提携により再生への道を歩みだした。ルノーから派遣されたゴーン氏の経営によるV字回復は語りぐさとなっている。今はルノーも赤字で日産を救済しているどころではなく、自力再生が求められる。

皮肉にも、ゴーン時代のグローバル拡大路線の歪みが大きく出て、日産は20年ぶりの経営危機に見舞われているのだ。内田社長は「新興国開拓などの成長戦略は、種をまいてきたものの刈り取りができず、日本のホームマーケットには新商品の空白が生じた。米国ではフリート需要の拡大に走り、日産ブランドが毀損された。失敗を認め、正しい軌道に修正する。一切の妥協なく断行する」とし、生産能力の最適化、商品ラインアップの効率化、固定費の削減という重点方針を示した。当面は、足元の業績回復が大前提となる。

日産のグローバル生産能力は700万台規模だが、2019年度の世界販売は500万台を下回った。海外工場のうち、アジアのインドネシア工場と欧州のスペイン・バルセロナ工場は閉鎖を決め、米国工場もプラットフォームごとに生産を集約する。ゴーン時代には100万台を維持するとしていた日本の国内生産も、国内販売の現状を見ると難しい状況だ。

日産、ルノー、三菱自動車工業の国際3社連合は5月27日、アライアンスによる新たなビジネスモデルを発表している。3社は分業の徹底で効率化を追求していく方針で一致したとされる。日産は、地域では中国、北米、日本を主導することになるが、コロナ禍からの回復が早そうな中国以外では課題を抱えている。

西川廣人氏の前体制が策定した中期経営計画ですでに、世界1万2,500人の削減を発表していた日産だが、ここへきて年間3,000億円の固定費削減を打ち出したことから考えると、さらなる余剰資産・余剰人員の整理に踏み込まざるを得なくなりそうだ。

内田新体制による日産再生の道は、コロナ禍もあって厳しい船出となる。ウィズコロナ、アフターコロナの時代はモビリティの在り方も変化していきそうな情勢であり、そちらへの対応も必須だ。今期から来季へかけて、日産は収益確保の方向に進むことができるのか。まさに背水の陣となる。

著者情報:佃義夫(ツクダ・ヨシオ)

1970年に日刊自動車新聞社入社、編集局に配属となる。編集局長、取締役、常務、専務、主筆(編集・出版総括)を歴任し、同社代表取締役社長に就任。2014年6月の退任後は佃モビリティ総研代表として執筆や講演活動などを行う。『NEXT MOBILITY』主筆、東京オートサロン実行委員なども務める。主な著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)、「この激動期、トヨタだけがなぜ大増益なのか」(すばる舎)など。