小型トラックで国内トップシェアのいすゞ自動車も、新型コロナウイルス感染拡大の影響は避けられない見通しだ。2020年度は前期比21%の販売減を見込む。アフターコロナの生き残りに向け、重要になるのはボルボおよびUDトラックスとの協業をどう活用するかだ。

  • いすゞの大型トラック「ギカ トラクタ」

    商用車メーカーのいすゞもコロナの影響は避けられない情勢だ(画像は2020年4月28日に改良して発売した大型トラック「ギカ トラクタ」)

大幅減益も黒字確保の見通し

いすゞ自動車が5月26日に発表した2020年3月期(2019年度)連結決算は、売上高2兆799億円(前期比3%減)、営業利益1,406億円(同20%減)、当期純利益812億円(同28%減)で減収減益となった。

決算発表の電話会見に臨んだ片山正則社長は、「後半期から商用車市場がスローダウンしたが、国内トラック販売のシェアは回復した。主力のタイは昨夏から市場が減速しているが、新型ピックアップトラックの投入は順調。新興国市場は一時の勢いを失うものの、ほぼ中期経営計画の通りとなった。コロナの影響は3月に出たが、軽微にとどまった」と総括した。

新型コロナウイルスの影響については、「事業活動の制約は長期化すると考えられるが、『運ぶ』を支える企業としてお客様に必要とされる車両をお届けし、アフターサービスによって稼働を支えていくことで、関係者と従業員の安全および社会的責任の両立を果たしていく。世界各国の需要は今後、落ち込みが本格化して厳しい時期が続くものの、物流は動いており、今年度中のどこかで需要回復は始まると想定している」との見方を示した。

今期(2020年度)の見通しは、世界販売47万6,000台(前期比21%減)、売上高1兆7,000億円(同18%減)、営業利益500億円(64%)とする。片山社長は「先行きは不透明だが、現時点でのコロナの影響を踏まえて見通しを策定した。今期は販売の減少が甚大であるため緊急事態体制で臨み、費用圧縮の徹底により利益を確保したい」とし、営業利益が大幅減益となる中での黒字確保に意欲を見せた。

いすゞは今期が3カ年中期経営計画の最終年度となるが、「コロナの影響で想定していたものと状況が大きく乖離したため、次期中計については、生活様式を含む社会構造の変化、物流インフラの大切さなど、社会ニーズに応える方向でアフターコロナの事業を考え、今期中にもスタートさせる」(片山社長)とする。

アフターコロナの商用車事業は

いすゞはかつて、トヨタ自動車、日産自動車と並んで“自動車御三家”に数えられた日本自動車メーカーの名門だ。自動車資本自由化時代の1971年に米GMと資本提携し、長らくGMグループにあった。この間に乗用車事業からは撤退したが、GMグループにおいては商用車とディーゼルエンジンで存在感を示した。

GMの経営悪化により、いすゞは2006年に同社との資本提携を解消。同年にトヨタと資本提携を結んだことで、GMからトヨタに乗り換えたかに見えたいすゞだったが、2018年にはトヨタとの資本提携も解消している。トヨタとの提携の大きなきっかけとなったのは、いすゞが得意とするディーゼルエンジンの技術供与だった。しかし、ディーゼルエンジンを取り巻く環境の変化により、トヨタとの協業は進まなかった。

いすゞは2019年12月、スウェーデンのボルボと戦略的包括提携の覚書を結び、いすゞ・ボルボ連合を組むことで基本合意した。ボルボとは現在、商用車分野での協業を検討中。具体的には先進技術、日本・アジアにおける大型トラック、中・小型トラックなどの分野で協業が進みそうだ。

ボルボはUDトラックス(旧・日産ディーゼル)を100%子会社としているが、いすゞはボルボとの提携を受けて、2020年12月をめどにUDトラックスを買収し、連結子会社とすることとしている。

いすゞは中・大型トラック事業やディーゼルエンジン事業を展開しているが、「エルフ」に代表される小型トラック事業に強く、国内のシェアはトップだ。タイでは乗用車的感覚のピックアップトラックを展開しており、同国での収益力も強い。一方のUDトラックスは、日産ディーゼル時代から独自の技術力で商用車を作っていて、現在は大型トラックに特化している。

  • いすゞの小型トラック「エルフ」

    いすゞの小型トラック「エルフ」

いすゞ・ボルボ連合の目指す方向は、来たるべき物流革命に対し、両社の協業により最大の価値を提供することだという。いすゞとUDトラックスは、日本・アジア地域で突出したNo.1を目指すそうだ。

「2020年の中頃にはボルボとの契約締結を予定していたが、コロナの影響で手続きが遅れるかも。いすゞとしては、先行開発、先端技術への開発投資には今期も引き続き、費用をかけていく」(片山社長)とするいすゞは、ボルボとの連合をいかし、アフターコロナにおける商用車メーカーとしての生き残りに賭けることになる。