35歳以上の結婚・出産が増えています。人生の持ち時間は長くなったけれど、生涯収入の手取りは減少傾向、社会の変化も激しい時代です。常識にとらわれ過ぎないお金との向き合い方を考えます。

手をかけるか? お金をかけるか?

40歳前後で子どもに恵まれたら、それはもう可愛くてしょうがないですね。とはいえ無尽蔵に子どもにお金をかけることができないのも現実です。アラフォー結婚では、残り時間が限られているので、子育て費用の支払いと並行して、自分たち夫婦の老後資金の準備もしなくてはなりません。現在の資産状況から考えて、今後の収入から貯蓄に回す分と、使える分をシビアに線引きする必要があります。必要なことにはお金をかけるとしても、不要なもの、中途半端なものはバッサリ切るくらいの覚悟が必要です。子育て費用も聖域ではありません。

子ども2人を、有名な国立大学付属小学校に入学させた女性に話を聞いたことがありました。通常は、お受験のための塾に通うところ、彼女は自分で教育して見事に合格させたのです。その方法は、いわゆるお勉強のみならず、なんでも本物を見せること、その季節ならではの体験をさせることでした。

虫、植物、食べ物…。面倒だったり、意識しないと遠のきがちだったりすることも、こまめに取り組んでいました。「自分が楽しいから」と語っていましたが、子どものためとか教育のためというよりも、例えば子どもに虫を見せて、その反応を楽しんでいる、ついでに子どもの様子を見ながら説明することが当たり前の行為としてできるのです。生まれながらの教育者なんだなあと感心したものです。自宅には子どもが興味を持ちそうなものがたくさん揃っていました。こんな有能な人がほうっておかれるはずがありませんね。ウチの子にも教えてという近所のお母さんたちの要望で、知る人ぞ知る私塾みたいになっていました。

凡人の私にはとても真似をすることはできませんし、親自身が教育する場合、親の性格と能力が大きく影響してきます。しかし、何かをしようとしたとき、ついお金を払ってその商品やサービスを買うことを考えがちだけれど、自分がすればタダか、相当に安く済むという単純な原理は、子どもの教育についても当てはまることに改めて気付かされました。

家事で言えば、クリーニング代を払うか、自分でアイロンをかけるか。料理を手作りするか、お惣菜を買うか、外食するか。

教育を家事に例えるのは不謹慎かもしれないけれど、子どもを塾に通わせるのは、外食に近い感覚ではないでしょうか。問題集を買ってきて自分で教えれば、もっと安上がり。費用の安い通信講座の教材を利用して、子どもが自分で解けなかった問題だけを見てやるという方法もあります。

子育てのアウトソーシング費用の効果を考える

つまり、「自分でできないのか?」ということは一考の余地ありです。共働きの人からは、そんな時間はないという声が聞こえてきそうですね。私自身もずっとそう思ってきました。けれど、塾に通わせてもいっこうに成績が上がらない次男の勉強を、覚悟を決めて自分で見てみると、どこでつまづいているのか、はたまた子どもの能力の程度、小学生でここまで難易度の高いことを学ぶのか、などなど、情報収集にもなり、自分が塾に何を求めるかの考えもはっきりしました。

ここ数年、個別指導塾が人気を集めて業績を伸ばしていますが、その理由もよくわかりました(次男の場合も集団授業ではついていけず、不得意分野がわからないままになっていたということです)。

お金も有限なら時間も有限。1日は24時間きり。手をかけると言っても、子どもの教育のすべてを自給自足することはできません。

母親が働いているかいないかに関わらず、多くの家庭では、学校教育に加えて、民間の教育産業が提供するサービスを選択して利用するわけですが、どんなサービスをいくらで買い、得られる効果はどれくらいかをシビアに検討するべきです。少子化の流れの中で、またIT化の進展で、例えば塾なら、集団指導のみならず、個別指導、映像による授業、通信講座などまで、サービスの種類と価格帯は広がっています。

アラフォー結婚の共働き夫婦の場合、子どもにかかる主な費用は、食費や衣類などの生活費に加えて、小学校入学前の保育料、入学後の学童保育料、塾やスポーツクラブの費用、家族で楽しむ外食やレジャー費用、そして義務教育終了後(家庭によっては中学から)の学校教育費です。これらの費用を今後の収入の範囲内でまかなうには、おのずと予算が決まってきます。安くできるものは安い方を選択すべきです。保育料や学校教育費については、私が言うまでもないことですが、私立よりも公立の方が安くコストパフォーマンスが高いことになります。

仕事をしていると子どもと接する時間は限られていますから、その時間をどう使うか、何を優先するか、アウトソーシング出来るものと費用、自分が手をかけることをしっかり考えたいものです。その際、教育費の節約とか義務感が先に立つと気が重くなりますから、自分が得意な分野で子どもと一緒に楽しむくらいの感覚で取り組みましょう。

子どもはなかなか親の思い通りにはならず、親子の関係は案外難しいもので、たびたび喧嘩も発生しますが(うちだけではないと思います)、勉強を上達させることよりも、子どもの状況を把握することを目的にすると気が楽になります。

この子どもの状況を把握しておくことは、実はコストパフォーマンスの高い教育と表裏一体である、合わない進路に進ませて無駄なお金や時間を使わないために有効です。受験対策には、塾の持つプロフェッショナルなノウハウを活用しつつ、子どもの性格や能力の把握は、学校任せ、塾任せにはせず、親が冷静に判断すべきです。

大学は、推薦やAO入試で入る学生が増えています。国立大学では入試制度の改革が検討されていて、今後、より丁寧に受験生を見る方向になるそうです。基礎的な学力検査に加えて面接や小論文、高校での状況、得意分野等が考慮されるようです。私の解釈ですが、学校の成績は悪かったけれど受験勉強に励んで筆記試験で一発逆転の合格は難しくなるのではと思います。基礎学力をしっかりつけた上で、どのようなことに興味を持ち、どのように子ども時代を過ごしたかが重要で、そこには親子のコミュニケーションも含まれます。

お金をかけないためだけではなく、親としてのかかわり方が大事になってきます。自分に合う進路で社会人になることができたら、子どもにとっても幸せですね。

40歳前後まで社会人として仕事をしてきたアラフォーは、このようなことを総合的に判断する際、若い親よりも有利といえるのではないでしょうか? 教育産業、大学受験、専門学校の状況などをしっかり情報収集して、ちゃんと家計の収支が取れると同時に、親子で納得できる教育費のかけ方を考えてみてください。

(※写真画像は本文とは関係ありません)

<著者プロフィール>

ファイナンシャルプランナー 坂本綾子

20年を超える取材記者としての経験を生かして、生活者向けの金融・経済記事の執筆、家計相談、セミナー講師を行っている。著書『お金の教科書』全7巻(学研教育出版)、セミナー『子育て力のあるお金の貯め方、使い方』『小さな消費者へのお金の教育』など。