「八戸三社大祭」「加賀美流 騎馬打毬」にと、青森・八戸が誇る祭りに触れられて、青森自慢のグルメとともに心もお腹も満たされた。祭りを案内してくれた小笠原修さん(八戸三社大祭山車祭行事保存会会長と八戸山車振興会会長を兼務)に感謝を伝えたら、どうやらまだ見逃してはいけない祭りがあるようだ。

  • 今回の旅の目的は「八戸えんぶり」だ

    今回の旅の目的は「八戸えんぶり」だ

名物のすき焼きまでたどり着けるか!?

その祭りの名は八戸市中心街で開催される「八戸えんぶり」というもので、毎年2月17日~20日まで開催される。欲望も手伝い、冬の八戸に再び訪れることになった。そして目の前には、小笠原会長。雪の降るネオン街がこれほど似合う人もなかなかいない。

  • 「よっ。ダンディ修っ!」と言いたくなるその人、小笠原修さん(八戸三社大祭山車祭行事保存会会長と八戸山車振興会会長を兼務)。今回は、別件で青森入りしていた野菜ジャーナリスト・篠原久仁子さんと一緒に

    「よっ。ダンディ修っ!」と言いたくなるその人、小笠原修さん(八戸三社大祭山車祭行事保存会会長と八戸山車振興会会長を兼務)。今回は、別件で青森入りしていた野菜ジャーナリスト・篠原久仁子さんと一緒に

著者: 「今回もよろしくお願いします。すごい雪! 冬の青森って感じですね~!」

小笠原会長: 「よく来たな~。滑るから気をつけて~! じゃあとりあえず、おいしいもの食べて温まろうか」

  • 「章(あきら)」の味のある看板がまたいい

    「章(あきら)」の味のある看板がまたいい

「ありがとうございます」と向かったのは、第1回で紹介した洋酒喫茶「プリンス」の裏手。「そうそう、うまいんだ~ここ」と小笠原会長が「章(あきら)」の中へ。

著者: 「こんばんは~! うわ。盛況!」

  • 人と人の距離も近く、旅人にも優しい

    人と人の距離も近く、旅人にも優しい

ママのサービス精神がすごすぎる!

ママのサービス精神がすごすぎる!

ママ: 「あら! 会長さんいらっしゃい」

小笠原会長: 「ここはね~安くてこれでもかって量が出て、おいしんだよ! ママ、すき焼き食べさせてやってこの子たちに」

著者: 「え~? すき焼き?? おいしそう!」

お通しに登場した醤油漬けで、すでに酒が進みすぎている。「お待たせ~」と運ばれてきたその量にびっくり! 刺身の盛り合わせ、かな? と思いつつ、そこには刺身ないけれど、白子にホッキ貝、ナマコにアワビにつぶ貝に赤貝までとすごいラインナップ! すき焼きまでたどり着けるかなぁ~と早速うれしい悲鳴だ。

「さ~どんどん食べて~」と小笠原会長の声を受けていただきます! まずびっくりしたのはその甘い! 磯の力、すさまじき!! どれも新鮮そのもので、青森の地酒は水のように入っていく。

  • 刺身……はないものの、海の幸がどっさり

    刺身……はないものの、海の幸がどっさり

貝尽くしに満足していたら、「は~いお刺身の盛り合わせ~」とママ。え? ちょっと待って。さっきのお刺身だよね。これは?? と疑問に思っていたら、「お刺身だよ、のりきらんからさ~」と小笠原会長がフォロー。……そういう問題ではない。ちなみに今回は4人盛りではあるが、本当にこの後、すき焼きまでたどり着けるのだろうか……。

  • ……と思ったら、このお皿で刺身盛りが"完成"だった。iPhone6Sと比べてこの大きさだ

    ……と思ったら、このお皿で刺身盛りが"完成"だった。iPhone6Sと比べてこの大きさだ

著者: 「会長、もうこれぐらいで」

小笠原会長: 「ダメだよ~コースなんだよ。この店は。お任せの。腹一杯になるから覚悟して」

著者: 「ヒーーーーーーー!」

ママ: 「お待たせしました~馬刺しです~」

著者: 「どんだけ刺身出るんじゃ~!?」

ママ: 「あら、焼いたお肉の方が良かった?」

  • 今度は馬刺し。どれも本当に量がすごい!

    今度は馬刺し。どれも本当に量がすごい!

シュッと持ってくるママに筆者もタジタジ。サービス精神が本当にすごいのだ。うれしい嘆きだが、すき焼きを前にしてもうすでにおなかは一杯気味……。たどり着けるのか、すき焼きとやらに。

「はーいお待たせしました~すき焼きね~」の声の先に目を移すと、明らかに量おかしい盛りがそこにあった。さっきの刺身たちなかったことになっている。「会長はお野菜たっぷりが好きなのよね~。会長スペシャルね」とママ。そんなことを言われると、もう食べずにはいられない!

  • 「会長スペシャル」で野菜は多めのようだが、倉石牛を使っているところにも注目したい

    「会長スペシャル」で野菜は多めのようだが、倉石牛を使っているところにも注目したい

このすき焼きのすごいところは、その量だけではない。トマトの酸味が絶妙で、一杯だったはずの胃が開いた。不思議なことにまた入ってしまうのだ。小笠原会長いわく、ここの店はトマトすき焼き鍋で有名とのこと。しかも、倉石牛を使うというこだわりの一品なのだ。

「締めの雑炊最高だぞ」という小笠原会長の言葉にまた反応。え? すき焼きの雑炊? 聞いたことない。「食べたい! 」と言ったところ、目の前にドーーーーーーーーーーン。量を見て後悔したものの、牛の油と濃厚の卵と、遠くで感じるトマトというやばい組み合わせ。気づけば3杯食べていた。本当にもう、思い残すことはない。

  • 絶妙なうまみが生きた雑炊。おなかペコペコな時に改めて食べに行きたい

    絶妙なうまみが生きた雑炊。おなかペコペコな時に改めて食べに行きたい

今回、"会長スペシャル"版すき焼きという特別コースでひとり5,000円(お通し・季節の魚貝盛り・お刺身盛り・馬刺し・すき焼き(雑炊付き)・デザート)だった。通常、コースは3,000円から展開し、ひとりからOK。飲み物は持ち込み自由で、持ち込み料も無料となっている。基本的にお任せコースなので、要望があれば「これが食べたい」と先に伝えておくといいだろう。聞けば、予約で満席の日が多いという。「絶対、章に行きたい」という人は、事前に予約した方が無難だ。

●information
章(あきら)
住所: 青森県八戸市大字長横町18-14れんさ街
アクセス: JR八戸線「本八戸駅」から徒歩12分

1番手のためなら1週間前からでも

身も心もはちきれんばかり。しかし、今回の青森・八戸の旅はこっからが本番だ。八戸えんぶりに備えて一眠り……と思っていたら、「じゃ、そろそろ長者山新羅神社に行こう」と小笠原会長。へ? どういうこと??

  • 三八五タクシーに乗って夜の長者山新羅神社へ

    三八五タクシーに乗って夜の長者山新羅神社へ

小笠原会長: 「順番待ちしてるんだよ、えんぶりの」

著者: 「何をですか?」

小笠原会長: 「えんぶりを神さまの前で踊る順番を1番で取るために、えんぶりの格好をして24時間態勢で神社で順番を待つんだよ」

  • 24時間体制で順番を待つ

    24時間体制で順番を待つ

著者: 「いつから?」

小笠原会長: 「一週間前から」

著者: 「!? 嘘でしょ?」

  • 旗で先着順を表現

    旗で先着順を表現

到着したら、本当にみんな待っていた。旗の並びが順番を表しているようだ。いなくなったり、ちゃんとえんぶりの格好をしてなかったりすると、順番を入れ替えられてしまう。

  • 時間になると一斉に並び出し、お囃子がより一層大きくなった

    時間になると一斉に並び出し、お囃子がより一層大きくなった

  • 無事一番が取れると翌朝神社でこの札をもらうことができる

    無事一番が取れると翌朝神社でこの札をもらうことができる

0時になると取り締まりが出てきて、順番を言い渡しつつ服装のチェックをする儀式が始まる。1番札をもらえると、翌日の7時から奉納舞を一番で舞うことができるという。

  • あくまでも開始は朝7時。しかし、八戸えんぶりはそれまでの時間も十分楽しめる

    あくまでも開始は朝7時。しかし、八戸えんぶりはそれまでの時間も十分楽しめる

時間になると一斉に並び出し、お囃子がより一層大きくなった。無事一番が取れると、翌朝神社で一番と書かれた札をもらうことができるのだ。

  • 八戸えんぶり奉納は長者山新羅神社だが、期間中は公演や行列など、街一帯で様々な催しが行われる

    八戸えんぶり奉納は長者山新羅神社だが、期間中は公演や行列など、街一帯で様々な催しが行われる

再びのプリンスであのカクテルを

夜は更け、再び洋酒喫茶「プリンス」に舞い戻った。撮り切った。もちろん、頼んだのは「神社エール」(500円)。八戸の祭りを全部網羅した筆者はもう清々しい気分だった。

  • 旅の始まりも終わりも洋酒喫茶「プリンス」で

    旅の始まりも終わりも洋酒喫茶「プリンス」で

著者: 「会長、3回も本当にお世話になりました」

小笠原会長: 「楽しかったでしょ?」

著者: 「いや、もう内丸山車組の方々なんて、結構顔見知りになっちゃって『また来たの?』なんて言われちゃったぐらいですよ」

小笠原会長: 「来年も来てよ、みんな待ってるから」

著者: 「そろそろ法被注文しようかなぁ……」

  • やっぱり「神社エール」(500円)をいただきたい

    やっぱり「神社エール」(500円)をいただきたい

●information
洋酒喫茶「プリンス」
住所: 青森県八戸市長横町18れんさ街
アクセス: JR八戸線「本八戸駅」から徒歩12分
営業時間: 17:00~24:00
定休日: 不定休

八戸にはおいしい食と、人情と、伝統と、そして文化があった。八戸に限らずどこの町にもあるものかもしれないけれど、みんなが忘れがちな大事なものを、筆者は今回の旅で再認識した。都会に疲れたみなさん、八戸の食に、文化に、人に触れてみると、きっとどこか懐かしくてかけがえのないものが見つかるかもしれないよ。

※記事中の情報は2018年2月取材時のもの
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