理由もなく、気分が落ち込むときがある。仕事もプライベートも順調なのに、朝起きたら何となく体がだるい。そんな経験ありませんか? 自分では無自覚でも、それはストレスの蓄積が原因かもしれません。

本連載では、若手ビジネスパーソンが直面するストレスとの付き合い方を、企業や大学で「若手のメンタル不調を予防し、能力を引き出す」をコンセプトに採用・育成・早期離職防止コンサルティングを手掛ける阿部 淳一郎氏が解説します。

  • 理由もなく気が重い

リストでストレスチェックしよう

傍からみる分には、常に全力投球で、めちゃめちゃ仕事ができるし、真面目だし、SNSでもリア充の理想形に見えていたのに、いきなりガクっとメンタルの調子が悪くなってしまった……なんて人が周りにいませんか?

いやむしろ、あ。コレ。私のことだ……とか、何とかギリギリ持ちこたえているけれど、今、メンタルがしんどい……と思う方。

ぜひ、このリストでご自身に当てはまるところにチェックを入れてみてください。

□何事にも生真面目
□どんなことに対しても完璧主義
□責任感が強く、やると決めた以上は、何がなんでもやりきる
□上昇志向がものすごく強い
□他人も、自分と同じレベルでやれて当然だと思う
□自分の価値観を絶対視する
□自分の周りの人が疲弊してしまうことがよくある
□心から気を許して話ができる人はゼロに近い

いかがでしょう。4つ以上に当てはまっていませんか?

DNA気質といいますが、人間の性格は遺伝子である程度、決まっています。このリストは「執着気質」が高い人の特徴です。

執着気質とは

この気質の高い人は、上昇志向が高く、完璧にやらないと気がすまない。「何があってもやりきる」というタフな心を持った人です。仕事でも勉強でも、素晴らしい成果を出している場合が多いのが特徴で、常に全力投球。会社の上司や学校の先生、親などからは「彼・彼女を見習いなさい」といわれるようなタイプです。

反面、「生真面目すぎ」「完璧主義すぎ」という傾向が強く、常にガチガチに力が入っていて、知らぬ間に肉体的にも精神的にも疲労を溜めている傾向が見られます。

更に問題なのは、「自分に厳しく、他人にも厳しい」という点。自分の「こうあるのが当然」を他人にも強要してしまい、周囲にいる人間も疲弊させてしまうことが、よくあるのです。

結果として、周りの人間に、距離を置かれるようになり、(気が強いので表には出しませんが)孤独感や寂しさを慢性的にため込んでいる場合もよく見られます。

これらのストレスが積み重なり、キャパオーバーした瞬間に、ガクっとメンタルが落ちてしまうのです。 この気質は本質的には変えられません。だから、変えようとするよりも、上手くセルフマネジメントするほうが効果的・効率的です。

もしあなたが、ここまで読んでみて、自分は執着気質が高く、「ストレスが溜まってしんどい」という状況にあるとしたら、以下3点を変えてみてはいかがでしょうか。

ストレスを解消する3つの方法

「7割くらいできればOK」と合格ラインを下げる

執着気質の高い人は、「満足感」を得にくい傾向があります。例えば月100万円の売上目標に対して150万円を売り上げたとしましょう。それでも「あとプラス20万円はいけたはずだ。悔しい」と思ってしまうようなタイプです。

これでは疲れてしまいます。あなたの基準の7割くらいを達成するイメージでやれば大丈夫です。だって、それが、この傾向が強くない人の10割の力と同等レベルなのですからーー。

「人それぞれ、みんな違ってOK」と考え、相手の長所に焦点を無理やり当ててみる

誰もがあなたと同じような能力や意欲や価値観をもっているわけではありませんし、それで良いものです。

「こうあるべき」「こうあって当然」という自分の価値観を他人に押し付ける傾向が強いと自分自身が感じるとしたら、「人それぞれ、みんな違ってOK」という認識をもつことをお勧めします。多様性を受け止め、その人その人の長所に焦点を当てるように強制的に意識を変えてみましょう。

息抜きになる趣味をもつ

執着気質の人は、存在しない完璧さを求めるので「これをやらなければならない」「あれをやらなければならない」と常に何かに追われ、延々と何かを求めて努力をする傾向があります。しかし、これはよくありません。

車のエンジンをずっとかけっぱなしにしたらオーバーヒートしてしまうでしょう。同じように、人間もときにオフの時間をつくらないと、心も身体も壊れてしまいます。だからこそ、息抜きをできる趣味を、強制的にもつことをお勧めします。

執着気質が高いということは、何事にも全力で取り組むことができるという素晴らしい才能を持っているということです。しかしこの気質は、上手く扱えば素晴らしいエンジンになるものの、扱い方を間違えるとメンタル不調を引き起こしやすい特徴を併せ持っているものであることを忘れてはいけません。

折角の才能をプラスに活かすためにも、手は抜かずに「力を抜く」ことを意識して工夫してみましょう。

執筆者プロフィール : 阿部淳一郎氏

株式会社ラーニングエンタテイメント 
代表取締役

若手の採用・育成・定着に強い人材開発コンサルタント。早稲田大学教育学部卒。筑波大学大学院(ストレスマネジメント領域)修了。保健学修士。社会人教育を行う東証一部上場企業等を経て2004年に起業。「メンタル不調者を減らし、若者の能力を引き出す」をコンセプトに人材開発業務に従事。大企業から中小・ベンチャー企業、学校、行政まで研修登壇実績は約1500本、コンサルティング実績30社。サンフランシスコ・シリコンバレーへも事業展開中。大学での就職活動領域における講師歴も長い。『これからの教え方の教科書(明日香出版社)』など著書3冊。『NHK』『日経新聞』『読売新聞』『日経アソシエ』『週刊SPA !』など取材実績も多数。
◆株式会社ラーニングエンタテイメント:http://learning-et.jp/